いいやつ

いつまでも同じ話題で恐縮だが、後日談。家出少女あーちゃんを連れて帰り、一泊させたムスメは、翌朝二人で学校に向かった。あーちゃんとは別の学校だけど、途中まで一緒に歩いたらしい。

夕方、わたしが洗濯物を畳んでいたら、帰ってきたムスメは隣にペタンと座り、タオルを一緒にたたみながら「お母さん、昨日はありがとうね」と言った。

おお。なんだお前、いいやつじゃん。友だちを連れてきて、親に協力してもらったことを当たり前にせず、ちゃんと「わたしの友だちによくしてくれてありがとう」と言えるなんて。

と、感心したのも束の間、わたしはふと思い至った。これって、やっぱり捨て猫を拾ってくるタイプ。きっとまた、誰かを連れてくる。

わたしが「あーちゃんのママを知ってたから、ちゃんと連絡が取れてうまくいったけど、誰でもこうはいかないんだよ」と言ったら、「わかってる」と答えた。

「困ったときにはあの子の家に行けばいい、ってことになるのは困るなあ」と言ったら、また「わかってる」と言った。「でもさ、泣きつかれてさ、お願い、どうしても家に帰りたくないの、家に帰ったらめちゃくちゃ怒られて殺されるかもしれないとか言われたらさ〜」と言ったら、「その時は警察にどうぞって言うから」。

本当かな。「なんとかしてあげる」って言うんじゃないかな。それが「いいやつ」だ、友だち思いなんだと勘違いしてないのかな。と、穿った見方をしてしまう母であった。

わたしは社会性やコミュニケーション能力を、人との関係性の中で失敗したり挫折したりしながら構築していくしかなかった。今だって、そんなに世渡りはうまくない。この歳になっても、人を怒らせたり、がっかりさせることも多々あるし。ムスメもまた、痛い目に遭いながら成長していくしかないのかもしれない。道のりは長い。がんばれ。いいやつ。

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