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あむあむ

「ゆうべ、夢の中にお母さんといてさ」とムスメが話し始めた。

駅のホームでお母さんと電車を待っていたら、パンで出来た列車が来たの。車体はきつね色にこんがり焼けた食パンみたいで、座席も全部パンでできてる。そして、いちごとクリームを挟んでいい感じになったので、さあ食べよう、と思ったら、『パーン』て発車の合図が鳴って、走り始めた。せっかくいい感じのいちごとクリームを挟んだところだったのに。お母さんと「わ〜!待って待って!」と言いながら追いかけて、車体をモリッモリッともぎ取って、あむあむっと食べた。

ふーん。おいしかった?と聞いたら「うん」と答えた。わたしは夢の中で味覚が働いたことがないので、ちょっとうらやましかった。

子どもの頃、自分の身長ほどの大きなドーナツの夢を見たことがある。こんがりと揚げられてお砂糖もたっぷりかかった、本当に美味しそうなドーナツで、おばあちゃんから「はいどうぞ」と渡された。「これ、食べていいの?」と聞いたら「いいよ」と笑顔で言われ、やったー!あむっ!とかぶりついて、あれ?甘くないな、と思ったところで目が覚めた。わたしは掛け布団の端っこを噛んでいた。

多分、ムスメも、布団の中でその感触がパンみたいに感じたんだろうな、と思う。平和な夢が見られてよかったね。

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