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そだてる

ずっとMacを使っている。3年前まで、PCというかWindowsは使ったことがなかったし、使い方が全くわからなかった。しかし、職場で使うことになって、一番お世話になっているのが「Office」のエクセルとワードである。

エクセルは全く使い方を知らないまま、一個一個のセルに数字を打ち込んだり、めちゃくちゃ面倒くさい作業をして使っていたのだが、ここにきてやっと、使い方を知った。数式を入れることで、ものすごく便利なのに、そんなことも知らずに手打ちをしていたのだった。お恥ずかしい。

今日は、数式の配置された表を勝手にコピペしてはダメだということを上司に丁寧に教えてもらった。
「この表のこの行に、こっちの行を移動させたいのですが」
みたいな超初心者の質問をしてもちゃんと教えてくれる。その辛抱強さに頭が下がる。
「右クリックしたときに、貼り付けのオプションというのが出ますから、左から2番目を選んでください」
知らんかったー。MacではコマンドCとコマンドVでなんでもやっていたので、少しも把握していなかった。

これまで「もっと時短ができるはずです」とわたしの作業の遅さを常に指摘する上司が怖かった。今日も事務作業で失敗をしたわたしに「数式の使い方を理解していれば、なんてことない作業です」と言う。自己肯定感の低いわたしは「すみません、勉強して出直してきます」としょんぼりした。すると「いや、日常業務にその時間はないでしょう?今ここで勉強ですよ。やってみてください」と、向き合ってくれた。
「まず、この数字を入れるときに」と例を示してくれて、「はい、やってみてください」と促される。失敗したら「なぜだかわかりますか?」と聞いてくる。わかりません、とは答えられない圧がある。自分なりの答えを言うと、大きく頷いて、「そうです。だから、ここのところをこうしないと数式が壊れるんですよ」と教えてくれる。

人にものを教えるというのは、こんなふうにすればいいのだな、と思う。こういう教え方をする人にこれまであまり出会ったことがない。「わからなかったら、なんでも聞いてください」という言葉の中には、「勝手に自分でやらないでください。かえって面倒くさいことになるから」という意味が含まれているのは重々承知である。でも、最初から「どうせわからないんでしょ」とか「そんなこともわからないのか」とは言わない。そこが「人を育てる仕事をしている」というプロ精神を感じさせる。

わたしはどうだろうか、と思う。ムスメに対して、そんなふうに教えてやれることがあるだろうか。あったとしても、教え方はどうだろうか。
「やってみせることも大事ですが、やらせてみせて失敗させることも大事です」と上司は言う。すごいなあ、器が大きいなあと感心していたら、「何度もうるさく言うようですが、机の上の整理をしてください。ものを探すのに時間がかかりすぎます」と言われてしまった。おっしゃる通りです。すみませんでしたー。

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