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カッパあれこれ

普段行かない場所を歩いていたら、マスクをした河童がいた。この形状の感じだと、皿には水がたまらないのではないか、とやや心配になった。

こどもの頃、河童の話をよく聞いた。いや、河童が「あのさ〜」とわたしに話しかけてくるわけではなくて、河童についての話、という意味だ。

なぜかはわからないが、同い年のゆうちゃんがある日突然、真顔で言い始めたのだ。「ねえねえ、河童っておるやん?」から始まり、「川遊びに誘われてもついて行ったらいけんのよ」とか「尻子玉を抜かれるっち」とか「もし河童に出くわして相撲とろうっち言われたら、キュウリが大好物やけ、キュウリを渡して食べよう隙に逃げるんよ」とか、そういう話だったと思う。

そもそも尻子玉とはなんぞや。小学生のわたしにはイメージできなかった。シリと言うからには、お尻の辺りにあるものだろう。ゆうちゃんは「お尻から手を突っ込まれる」と追加情報をくれた。手を突っ込んで、尻子玉を抜く。つまり、内臓を引き抜かれるということか?でも「タマ」という名前だから、球状のものだろう。そんなものが体内にあるのか。謎すぎる。

おばあちゃんに「尻子玉ってなに」と聞いてみた。「大事なもんたい」と返された。いや、具体的にどういう代物なのか教えて欲しい。「それを抜かれると死ぬんよ」そして「昔は馬に水を飲ませようと川に連れて行ったら、よく河童に尻子玉を抜かれて、馬が死んでしまっていたらしい」と、まことしやかに語るのだった。

わたしの地元には河童伝説があり、山には「河童地蔵」が祀られている。その地蔵の背中には大きな金属製の釘が打ち込まれていて、河童が封じ込められているそうだ。小学校の遠足でその山に行くと、必ずその釘を抜こうとする男子がいた。すべからくそのような輩が多いのだろう、直径10センチはあろうかという釘の頭はツルツルと滑らかになり、黒く光っていた。

なぜ封じ込められたのか。昔々、西の村の河童と東の村の河童が空中戦をやって、田畑に落ちた河童の死骸が腐って、農作物がダメになってしまっていた。田畑が荒れるし、物騒だし、と村人が困り果てていたところ、旅の僧が三日三晩(いや、一週間だったか)祈りに祈ったところ、神通力で地蔵の背中が柔らかくなり、そこに封じ込めの釘を打ち込んだ、という話だ。めでたしめでたし。

そんなわけで、河童に詳しいわけではないが、こどもの頃からなんとなく、河童には親しみを感じるのだ。

と、ここまで書いて、あれ?前にもこんな話をnoteに書いたような気がする、と思ったのだが、どうだったか。年寄りが何度も同じ話を繰り返す現象が自分にも起こっているということか。どうよ、河童。覚えてないかい?

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