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カラオケ4時間半

ムスメが「友だちとカラオケに行きたいから、ついて来てほしい」と言う。わたしが行ったら他の子は歌いにくいんじゃないのかい?と聞いたら、カラオケに子ども同士で行くのは校則違反だから、保護者の同伴が必要なんだよね、ダメかな?と遠慮がちに頼まれた。

バレないかもしれないけど、バレたらあとが大変なのが校則。なにしろ「連帯責任」とかで、体育館に集められて学年集会が行われ、お説教タイムの上に、学級ごとで反省会。部活に所属している子がいると、部活自体が休部になる。休部になると、他学年にまで影響する。ああ怖い怖い。ヤダヤダ。

そうまでしてカラオケに行きたいのか、と聞いたら、部活と塾のスケジュールで、仲良しの子たちと遊べる機会が全然なくて、たまたま奇跡的に1日だけ、タイミングが合った。そしてみんなが歌いたいと言うから、だそうだ。最初は6人で行く予定だったが、体調不良で2人来れなくなって、4人。
よっしゃ、そんならおばちゃんがついて行ったる。

祝日のカラオケ店は少々混み合っていたが、なんとか部屋が確保できた。さあ、中学生のカラオケとはどんな感じだろうかと興味がわく。わたしは、カラオケといえば手拍子やタンバリンなどで盛り上げ、掛け声をかけたり、サビの部分を一緒に歌ったりして、ワイワイやるタイプの宴会しか知らないし、それが苦手で全然カラオケに行こうと思わない。「次はあなたよ」とマイクを渡されても、わたしの好きな歌は場を盛り上げるタイプではない、と苦悩する。マイクを離さない人がいると、自分が歌わなくていいから楽だが、その人の歌う曲が苦手なジャンルだったりすると、これまた苦痛だ。

さて、中学生。「最初に●●ちゃん、歌いなよ」「いやいや、あなたが先に歌いなよ」と、譲りあって、1曲めが始まらない。カラオケは時間勝負だ。時間にお金を払っているんだ!と言いそうになるのを我慢して観察する。

ひとたび歌い始めたら、次々に予約を入れていく。ところが、ここからが「今どきは、そうなのか」と思うのだが、歌いたい人は一度に3〜4曲入れる。ポツポツと歌う人は一曲入れてから次までしばらく休んでいる。誰も手拍子などしない。とはいえ聞いてないわけでもない。歌い終わると点数が出る。それをみんなで見て、わははと笑う。始終おだやかに、フリードリンクを飲みながら、持ち込みのお菓子をポリポリと食べながら、笑顔が絶えない。平和だ。

決まりごともなく、押し付けも抑えつけもない。そんな感じで、4時間半。全59曲を歌い上げた。

4人のうち、一人は男子だった。彼は13曲を歌ったのだが、その全てが歴代仮面ライダーの主題歌、エンディングテーマだった。二人で歌った曲をのぞくと、一番多くマイクを握った子は17曲。一番少なかった子のは3曲。

彼女たちの歌は、「ボカロ」ばかりで、初めて聴くものばかりだった。59曲中、わたしが知っている曲は「小さな恋の歌(モンゴル800)」、「生まれてはじめて(アナと雪の女王)」の2曲しかなかった。

そろそろ帰りましょう、とお会計をすれば、4時間半で一人税込880円。中学生たちは自分のお小遣いでそれを払った。

こんな感じのカラオケだったら、わたしもやってみたいなーと思ったけれども、このテンションが保てる仲間を探さないといけないし、アルコール抜きでやりたいし、そう考えると、メンバーを集めることがいちばん大変かもしれない。

ところで、4時間半も部屋の片隅で一言も発せずにじっと座っているのはかなりの修行に感じたが、おばちゃんがこうしてネタになるように、データをメモっていることなど、彼女たちは知らない。ふふふ。



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