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【読書おすすめ】ボーダー(佐々涼子)

2021年に、名古屋の入管施設でスリランカ人のウィシュマさん(当時33)が死亡した。体調不良を訴え続けていたにもかかわらず、適切な治療を施されないまま亡くなったため、出入国在留管理庁の体制の問題が大きく取り上げられることになった。

とはいえこういった問題は日常生活の中で見えにくく、直接的な利害が私たちには及ばないので、忘れ去られやすい。
私も佐々涼子氏の最新エッセイ集「夜明けを待つ」を読んでこの問題をやっと思い出した。

外国人の不法滞在者たちは、バブルの頃には大目に見られて、実質的には長く日本の経済を支えていた。そのあとコロナや、オリンピック開催などにも翻弄されながら、不安定な立場で生活している。日本を信じてやってきたのに、不当な差別を受けている現状。とても「法治国家日本」だとは思えないような環境で暮らしている方も多いらしい。
また、私は静岡県西部の出身なんだけど、地元産業を支える外国人労働者の家族たちの中には、セミリンガルで学校になじめない子供も多いと聞く。私の姉も就学ボランティアをしている。
最近読んだ「誰が国語を殺したか」でも、感情を表現する語彙が豊かでなくて苦しむ子や、共通言語があまりに減っていることの実情に触れて驚いた。
自分ができる一手は何だろうと考える。
いずれにしても日本の労働力世代は右肩下がりで減っていく。経済の低迷を考えれば、日本をめざす外国人そのものも減っていくだろう。一番身近に危機だなと感じるのは介護現場。


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