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異業種からデータのプロになって思うことをおとぎ話風に語ってみる

いまはむかし、フードバイヤーからデータアナリストになった女がおりました。
商人から分析官になった彼女は、今日から新しい職場で働くことになっています。
新入りは、自己紹介と入社動機を紹介するのが習わしです。
並んだ同期たちが順々に口にする入社動機を聞きながら、
彼女の胸の内に、違和感がたまっていきます。

「もっと大きなデータを扱いたくなって」
「データ活用に強い関心があって」
「データを扱う仕事がしたくて」

データを、扱う、仕事が、したい。かぁ…

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ごあいさつ

おとぎ話風というか、昔話風の導入になりました。
そして、すごい業界批判になりそうでこの話題に触れるか悩んだものの、
やっぱりデータの仕事が人気の今こそ!という思いで思い切って今日はお話します!
こんにちは、Rikaです。

私は今、Tableauを用いたデータビジュアライゼーションを中心に、データアナリストとして働いています。
今流行りの仕事ですし、たった数年で「データのプロ」を目指す人は本当に増えました。
私自身も、本当にたくさんの、「データを扱う仕事がしたい」という方に出会うようになりました。
しかし一方で、妙な違和感を感じるようにもなったのです。

「データを扱う仕事がしたいから」

それ自体は決して悪いことではないではないはずです。
私も「データを扱う仕事」を求めて、今の職場に落ち着きました。
ただ、この台詞を聞くたびに、何かが私の胃の腑にずっしり居座って心を重くするのです。

本日は、この違和感の正体を、できるだけまろやかに、ファンシーに皆さんと考えられるよう、おとぎ話風にお伝えしたいと思います。

「データを扱う仕事がしたい」は、目的じゃない

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かつて商人だった彼女は、本当に商いが好きでした。
そして、意思決定の根拠にデータを用いることで、
どれだけ商いに必要な決断が、楽に、建設的にできるかを体感していました。
だから、データという武器を手に取り、商人を支える道を選んだのです。

しかし、どうやら世の中では、「データ」という武器の切れ味の噂が先行して、
「素晴らしい武器を手にしたい」
という強い動機が人々の間に広まっているようでした。

ですが、素晴らしい武器を手にした勇者は、
果たして誰を救いたいのでしょうか?
何を成し遂げたいのでしょうか?

※これはフィクションです

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ちょっと悪口っぽくなると急にフィクションと言い出すのがこのシリーズの特徴です笑

ですが、まさに、これが私の違和感の正体です。

「データを扱う仕事がしたい」は、目的であるように見えて、目的ではないんです。

先ほどの「勇者」の話にすると分かりやすいと思うのですが、
勇者を目指す若者を、王様が城に集めて
「お主が勇者を目指す理由はなんじゃ」
と問うたとします。

「武器、使ってみたいんで!」
って言われても、王様ポカーンってなりません?

「え?ワシ、魔王に姫さらわれて困ってんだけど、そこは無視なの?」って。

これとよく似たシチュエーションが、データの仕事の現場では、残念ながら頻発します。

事業会社:「最近売上が伸び悩んでいる。データを使って売上改善の手がかりを得られないだろうか?」
データコンサル:「そうですね、データを使って売上予測や在庫管理、品揃えの最適化などもできます。気象データと組み合わせて導入している企業の例もありますよ!」
事業会社:「は、はぁ…(…いろんなことができることは分かったけど、それで、どうやって売上改善するんだろう…よくわからないな)」

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こういう、まるで何に使うかよくわからない商品のカタログを見せられているような感覚、
事業会社のデータ推進担当者さんとかよく経験されたことがあるのではないかと思います。

なんでこういうことになってしまうかというと、

クライアントは、
目的(=売上を伸ばしたい)に対する、手段(=売上を伸ばせるデータを使った方法)を求めているのに対し、

データコンサルの側が、
目的にマッチしているかどうかは置いておいて、とりあえずデータでできることを並べて見せているだけで、有効な方法を選んで手段として提示していないからです。

「データを使って仕事をしたい」というタイプのデータのプロはこういうことをやってしまいがちです。

「データを扱うこと」そのものが理由になっている彼らには、
売り上げを伸ばす。という目的に対する意識やノウハウがありません。

なので、「売上を上げたい」という目的に対して、適切な手段を「選ぶ」ことができず、とりあえず自分が知っている、やっている、会社が得意なことを羅列してしまうのです。

本来であれば、データコンサルは、

「売上を伸ばしたい」という事業会社さんの

状況(今会社の方が触れているデータはどんなものか、どう使われているか)

事業内容(B to Bなのか、B to Cなのか、商品を売るのか、サービスを提供するのか)

具体的にどうやって売上を伸ばしたいのか(販促なのか、商品開発なのか、人材教育なのか)

などから総合的に判断して、必要な手段を提示します。(ダッシュボードなのか、在庫管理ツールなのか、売上予測なのか)

例えば、

ある小売店が売上不振に悩んでいて、データコンサルに相談したとしましょう。
もともとその会社は商品開発が得意で、新商品をたくさん出していましたが、最近は鳴かず飛ばずの商品も多いものの、とにかく「新しいものは売れる」の精神で、多少売れなくても売場にどんどん商品を追加していることが分かりました。
結果、売場には売れ筋商品と死に筋商品が入りまじり、お客さんは何を買ったらいいのかわからない状態になっていました。
また、社員が扱えるデータは月に1回の更新で、それより短い周期のデータは、自分でITに依頼して抽出してもらわないとわからないため、面倒で誰も週次でデータを確認しておらず、気づかないうちに死筋商品を追加発注していた、などの非効率も起こっていました。
そこで、データコンサルは、日別で新商品の売上推移が商品単位で追える「ダッシュボード」を提案し、死に筋商品をスピーディに判断できるようにしました。結果、売場はすっきりと分かりやすく、死筋が占拠していたスペースを売れ筋商品に割り振ったことで、よりお客さんが売れ筋を判断しやすくなり、売り上げも伸びました。

めでたし、めでたし。

・・・のような、「目的」に寄り添った「手段」が本来求められているはずです。

もし、今これを読んでいるあなたが、データアナリスト・データサイエンティスト・BIエンジニアなど、データの仕事をされているとしたら、一度、↑の背景がグレーになっている部分、「シナリオ」を、今自分がやっている案件に置き換えて、書いてみませんか?

意外と、「うっ」ってなりません?

だとしたら、もう少し、仕事を依頼してきた方の「目的」について話を聞いてみる機会を持ってみるのはどうでしょうか?

「…それは営業が」「…コンサルが」
という方もたくさんいらっしゃると思います。クライアントの要望を吸い上げる担当と、実際に手を動かす担当は多くの会社で分かれています。

でも、だとしても、もうちょっとだけ、クライアントの「目的」に歩み寄ってほしいのです。
実際に手を動かして、ダッシュボードやツール、帳票などを作成する側が、このクライアントの目的を理解している場合と、理解していない場合では、出来上がりが、本当に違います。

クライアントの喜ぶ顔が見れます!

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私たちデータを扱う人間は、素晴らしい武器を手にした勇者ですが、
必ず、それで「守りたい人・笑顔が見たい人」を持ってください。
ただ、武器を使ってモンスターを退治したいだけの人にはならないでほしいんです。

そして、そこの営業さん、人事担当者さん、店長さん、私は「目的」を明確に持ち、会社から「使命」を与えられている皆さんこそ、本当はデータという武器を手に取り戦うのに最も適した人だと思っています。

これを、最後にお話しさせてください。

データは手段!誰もが手に取れる武器!!

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私はもともと、理系でもないですし、エンジニアでもない、食品バイヤーでした。
(詳しくはこちら!↓)

当時、バイイングの意思決定にデータがどれだけ役に立つかを実感した私は、
データを手に取り、バイヤーとして日々格闘していました。
しかし、当時はTableauのようなBIツールもなく、大量のデータをAccessやExcelで毎回手間暇をかけて集計する時間の不足、そして私のスキル不足から、
バイヤーとしての本業とデータという武器をうまく両立させることができず、大好きな商いの世界ではなく、商いを支えるデータコンサルの世界に舵を切りました。

しかし、今はTableauやPowerBIなどのBIツールや、Salesforceなどのパッケージ化されたサービスもかなり増えました。今後も進化は止まらないでしょう。
昔ほど、「データを扱うこと」の敷居は高くありません。

当時の私に、Tableauがあったら!
きっと最強のバイヤーになっていたはずです!!!(言い過ぎ)

しかし、それほど、「目的」・「役割」・「動機」が明確な方がデータを扱うことにはメリットがあります。
「データ分析ねぇ、結局うまくいかなかったんだよね」というケースの多くは、この記事の前半でお話したような、「目的」と「手段」のアンマッチから来ています。

「目的」が明確な方は、「手段」の選び方だけ勉強すれば、選択を間違えることはまずありません。

だからこそ、データのプロが剣を携えて戦うのも結構ですが、
農民がデータという鍬をとり、商人がデータというそろばんを携え、大工がデータというのこぎりを掲げる世の中が、最も効率が良く、Happyなあり方だと、私は信じています。

データは誰にでも平等です。
使うか、使わないか、の世界です。

ぜひ、ちょっとしたことでもいいです。
「えいやー!」で決める前に、「なんでだー…」と頭を抱える前に。
自分の身の回りをデータで可視化してみてください。

感情論から解き放たれる気持ちよさを体感してほしいです。

さて、今日はここまで!
データの世界に触れたすべての人に幸あれ!

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