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memory

好きとか嫌いとか。
夢を見ていたいとか、目を覚まさなきゃとか。
考えすぎて頭が痛いくらい。

それなのに
いろんな思考の狭間で揺らいでいた感情も、
それが一体何を探すためだったのかも
もう見つからない。



逆算で鳴らした目覚まし時計を止めて
何もない天井を見つめる。
いつもどこか気怠いのは変わらないけど、
今日はいつにも増して感じる。
何か行動する気になれないけど
生憎今日も仕事だから
仕方なく重たい体を起こす。

昼も夜もフリーになって、
フットワークが身軽になったっていうのに
毎日時間に追われ、やる事は山積み。
あの頃を思い出してる暇なんて何処にも無い。

朝食を食べないまま、顔を洗って着替える。
髪を軽くセットして家を出る。
イレギュラーのない朝のルーティン。

この暮らしが幸せかと言えば、
言い切れない部分がある。
それなりに充実していて楽しい。
だけど大切な何かが足りない。

その何かは君なのか、君との時間なのか。
それとも全く違う何かなのかは
まだわからない。
本来の生活に戻ったはずなのに
君との時間で上書きされていたようで、
独りになった違和感が消えてくれない。

独りになって寄り道が減って
その分道草が増えた。
結局費やす時間は変わらないまま
いたずらに日々は過ぎ去っていく。
無意識のうちに歩いているこの道だって
いつも隣には君がいた。

あぁ…前言撤回。
暇なんてなくても、外を歩けば
今でも面白いくらい鮮明に二人の記憶は
巻き戻されるよ。
僕にとって、君という存在が
どれだけ大きかったのかを顕著に示している。
所詮はこんなもんなんだな。

見ないフリして、
適当に理由を見繕ってしまえばいいのに
君のことは "忘れられない" じゃなくて
ただ、"忘れたくない" だけなんだ。

あれが見え透いた嘘だろうが
聞き飽きた僕の強がりだろうが
どっちでもいいや。
ずっと君に乱されっぱなしなのは
事実なんだから、潔く認めよう。

止まってるのは僕の時間だけで、
きっと君は違うんだから
会えないのに影を探しても、
似ている人を目で追いかけても空しいだけ。

解ってるのに解ってないフリして
過ごしてる自分に苛立ってしまう。
だから、知らないうちにまた針が進むように
記憶のファイルを整理しないと。


恋とか愛とかいう不安定な感情を
確かなものにしようと探していた日々は
過去に埋もれて、もう何処にも見当たらない。
あの日から壊れたままの僕の心の奥にあるのは
拭いきれない後悔と色褪せた景色。

だけど、あの時信じていた不確かな想いも
君を独りにはしないって言葉も
嘘じゃなかった。

わかることは、それだけ。


早く終わりを始めよう。
過去に溶かして壊れた心の奥を治して
止まった時間を動かそう。



いつか笑って話せるように。







inspired by 「finder」/ claquepot

      「home sweet home」/ claquepot

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