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刹那的ロマンチスト

例えば、夕焼けに染まる空。
ピンク色が混ざったオレンジと紫。
あんな色の食べ物あったら映えそうだな。
…なんて柄にもなく、JKらしいことを思った。

例えば、水溜まりに映る世界。
風もなく綺麗に逆さまの世界が見える。
踏み込んでみたら吸い込まれて異世界へ…
なんてことが起きるはずはないけれど
淡い期待と共に水溜まりに足を踏み入れる。
わかっていたが、吸い込まれることなんてなくて
ただ映る世界が揺らいだだけだった。

例えば、君と歩く帰り道。
毎日会っているのに話すことは尽きなくて
ずっと楽しい。
時々訪れる沈黙すら心地良いと感じる関係。

「…寒くなったね。」

「…そうだな。」

そう言って私の手を握る君はいつもと変わらず、
優しい笑顔で私を見つめていた。

「何か考え事?」

「え?べつに何もないよ。」

考え事をしていたといえばしていたけど、
それは全部どうでもいいことで。
空がどうとか、水溜まりがどうとか。

「そっか。」

「…気にならないの?」

何もない、と言ったのは私だしそこに嘘はない。
聞いてほしいということではないが
ふと、思ってしまった。

「何もないって本人が言ってるんだから
 仮に嘘ついてたとして、それ以上聞いても
 無駄じゃない?」

君はあっさりと答えた。

「あと、こんだけ長く近くにいたらなんとなく
 わかるしね。今日はダメな日なんだなとか。」

予想外の言葉が返ってきて驚いた。
愚問、だったかな。

「…ありがとね。」

「急だな。…こちらこそ、だけど。」

こうして君が隣を歩いてくれること。
他愛のない会話で笑い合えること。
当たり前だけど、当たり前じゃなくて
感謝したくなった。
ただ、それだけ。

この空も水溜まりの世界も今しか見れない。
今だけの世界を見て、何かを感じて、考える。
刹那的な想いも、ずっと繋がる温かい想いも
残しておくにはどうしたらいいんだろう。

なんて、柄にもなくロマンチックな思考に
辿り着いてしまった。

この先もくだらない刹那的思考を繰り返して
君の隣を歩けたらいいな。

「あ、そうだ。明日さ……」

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