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「意思」不在の0×1=LOVESONG(I know I Love You)

みなさま、わたしを始め多くのMOAがMOAになるきっかけになったと言われる(そうなのか?)0X1=LOVESONG(I Know I Love You)が発表されて、およそ1年と2か月(半端!)が経過しましたが、いかがお過ごしでしょうか

私はと言いますと、Twitterをフォローしていただいている方はご存じの通り、0X1第一人者のふぉろわ~さんとすぺ~す等させていただいたことも相まって、いまさら夜な夜な0X1のことを考え続ける日々を送っています。
※すぺ~すに際して作った論点出し資料としゃべった内容のまとめを参考までにおいておきます。



で、延々と0X1について考えるうちに、気が付いたことがあります。
この歌の主人公=僕(以下、ゼロくん)、あまりにも意思がないのです。
そこで、今回はこの「意思のなさ」に着目して、0X1の何がこんなにも私を狂わせるのか、について考えてみたいと思います。書き始めたはいいけどあんまり結論が出る気がしていません。乱文ご容赦ください(予防線)

1.TXTと「受動態」

いきなりですが、TXTの歌、めちゃくちゃ歌詞に受動態が多いな~と以前から思っていました。特に「줘(ください)」というワードがめっちゃくちゃ多い。(この줘の多さについては、943を例に、昨年度のNHKのハングルテレビ講座でも突っ込まれていましたのでガチだと思います)
書いてて必ずしも受動態ではないかもしれないと思ったけど(オイ)笑、主体が「僕」に置かれるフレーズがとにかく少ないように思うんですよ
例えば、デビュー曲のCROWN
내 몸이 미쳤나 봐(僕の体がおかしくなったみたいだ)」→みたいって何?自分の体のことでしょうよしっかりしいや、と思うし
세상은 대체 왜 이래 나한테(世界はどうして僕にこんな仕打ちを?)」→イヤイヤ他責!!!と思うワケ

943なんかひどくて(オイ)、前述の「줘(ください)」連発以外にも、
나만 빼고 다 행복한 것만 같아(僕以外はみんな幸せそうだ)」→被害妄想!!!お前は幸せになる努力したのか!!!
그게 잘 안돼 지금 내겐 네 손이 필요해(上手くいかないんだ 今の僕には君の手が必要なんだ)」→イヤ人に頼ることを前提にしないで一回一人で頑張ってみ???
という感じでとにかく他責他責他責!!!なんですよ。(キリがないし誰かに怒られそうなのでこの辺でやめておきます)

とは言え、CROWNだったら、「But I love it」、943だったら、「도망갈까(逃げようか?)」とキラーフレーズにはきちんと「僕の意思」が感じられるように思えます。言い換えると、「基本は受け身の僕の渾身の意思」がキラーフレーズになっているというか、キラーフレーズを際立たせるための他責フレーズたちにも見える。

さて、ここで問題の0X1=LOVESONGを見て見ましょう。
뭐든 내 두 손끝에선 부리나케 도망가 멀리(何もかも僕の指先から 瞬く間に逃げていくんだ 遠くへ)」→一回でも掴もうとしましたか?
데려가줘 너의 hometown(連れて行って君のhometown)」→自力で行こうとしてみたらどうかな?
나를 구해줘 내 손을 잡아줘(僕を助けて 僕の手を取って)」→助けてもらう側、手を握ってもらう側前提なの、何?
아마 난 안될 거야 천국엔 못 갈 거야(たぶん僕はダメだ 天国には行けないや)」→行こうとする前から諦めるのやめれる?
난 어울리지 않아 내 자리 따위 천국엔 없어(僕には似合わない 僕の居場所なんか天国にはない)」→諦める理由も「似合わない」なのマジで他責
と、相変わらずの他責祭りである。

特に注目したいのは、0X1=LOVESONGのサビのフレーズたち。
①「길이 없었어 죽어도 좋았어(道がなかった 死んでもよかった)」
②「Please use me like a drug」③「Say you love me」
そして、副題に採用されている④「I Know I Love You」

まず①の「死んでも良かった」について。ちなみに私が0X1で一番好きなフレーズでもあります。
これ、「死にたい」でも「死にたくない」でもなくて、「死んでも良かった」なんですよ。たぶん、「生きていてもいい」が裏にはある(生きていたい、ではない)と思って。マジで「意思がない!!!!!」とウッカリ絶叫しそうになる名フレーズなんですよね。
しかし、この「死んでも良い」は過去形なわけで。続くのが、前述した「助けてよ」のフレーズ。
で、どう助けてほしいのか、に当たるのが、②「Please use me like a drug」なわけですが、また!!!主語が!!!!!自分じゃない!!!!!!!(ブチ切れ)
めちゃくちゃ悪いようにゼロくんのサビの心情をとらえると「別に~死んでも生きてもどっちでもよかったんですけど~ちょっと生きたいな~って気持ちになってきて~、でも生きるとなったら自分以外のところに理由が欲しいので~、僕のこと必要としてくれたりします?生きる理由も他責にしたいんで~」って感じじゃないですか、なんなんでしょうか(ひねくれすぎ)。

そして、「必要としてほしい」の発露として、③「Say you love me」がきますが、その対照になるのが、④「I Know I Love You」。
最初は、「僕→君の感情は明確だけど逆は分からなくて不安なのか~切ないな~」とか思っていたんですけど、ゼロくんの意思のなさにイライラし始めてからは(イライラしてたのか、、)KnowとSayの違いが気になるようになりました。
そう、I Knowであって、I Sayじゃないんですよ。ゼロくん、「君」に告白したか?さてはしてないな、、傷つきたくないからって向こうに先に告白させようとしてるな、、、なんなんだお前、、、、っていうのが最近の感想です(そうですか、、、)。
一方で、④「I Know I Love You」が、0X1におけるほとんど唯一のゼロくん主体のフレーズなんだよね、、それはそれで素直にとらえるとロマンチックだよね、、。他のこと(自分の生き死に含む)に対しては無頓着なのに、君への愛だけは主体なんだもんね、、、。

2.受動態における意思・責任

ところで、最近、「能動態・受動態」における意思についての文章(講義の文字起こし的な?)を以下の本で読みまして

す~~~っごくざっくり説明すると、昔の言語には、能動態・受動態に加えて、「意思」が介在しないですむ「中動態」という文法もあったのだけど、時代が進むにつれて、行動・現象が「誰の意思によるものか」を明確にして、責任の所在をはっきりさせる必要性がでてきたから、「中動態」の概念は消えていった、ということらしい。

つまり、受動態で語る、語られる、ということは「そこに意思はない(自分は他者の意思の投影先でしかない)」「よって責任を取る必要もない(責任は意思を持つ他者が取るべきもの)」ということを示すのですね。
TXTの楽曲に異様に受動態が多いのも、やはり楽曲が紡ぐ物語が「少年の成長」であって、少年=子ども・若者では責任を取りえない事象が世の中には多いということなのだと思います。よくも悪くも大人の庇護のもとにいる少年たちは「受動態」でしかものを語れないわけだ。

一方で、「自由には責任が伴う」ということも世の通説です。裏返すと、「責任が取れないのであれば自由はない」。これこそが、TXTが代弁してきた子ども・若者の悩み・苦しみかと思います。だから、943のキラーフレーズ(能動態)は「도망갈까(逃げようか?)」だし、0X1のゼロくんたちが囚われる「0の世界」からの逃亡を歌っているLO$ER=LOVERの歌詞は、0X1に比べて圧倒的に能動態が多いのではないかと思うのです。0X1では「내 손을 잡아줘(僕の手を握って)」だったのがL=Lでは「네 손을 잡은 내 손(君の手を握った僕の手」と、手を握る主体が「僕」になっていることが象徴的ですね。知らんけど、、、。
(すーーっごい余談ですけど、私の中高生時代の推しが、「その日の晩御飯を自分で決められるようになったとき、大人になったと感じた」って言ってたんですけど、私も大人になってなるほどなあ、と思うようになりました。自立して些細な自由を得ていくことが大人になるということなのですね)

0X1に関しても、ゼロくんに散々文句言ったけど、ゼロくんにはどうしようもない事情があるのかなあ、という気もします。というのも、「이 끝이 없던 어둠 속(この終わりのない闇の中)」、「뭐든 내 두 발끝에선 새까맣게 물들었었지(何もかも僕の足先から真っ黒に染まっていった)」等、なんだかつらい毎日を送っていそうなフレーズが多い。
もしかしたら、家庭環境が悪いとかではなくて、思春期ならではのこの世の全てが僕の敵!!!もう嫌だ!!!!!みたいな時期ってだけかもしれないけど、まあどんな理由であれ「つらい」という感情は本物なのだろうし、子どもである(経済的に自立していない・できない)ことからそこから逃げられないのは確かに悲劇なので情状酌量の余地あり、、、って感じ(?)

これはにわとりたまごみたいな話ですけれど、ゼロくん、「子どもである自分には自由はないのだから、意思・希望を持つのはやめよう」と思っているようにも見えるんですよね。死にたいではなく死んでも良かった、だし、天国に行きたいと言う前から天国にいけないと諦める。希望を持たず。諦めることで予防線を張って、自分を守り続けているのがゼロくんなのだな、、だんだんムカつきが同情に変わってきました、、、(単純?)

4.子どもは意思を持てるのか

じゃあですよ、経済的な自立が難しく、親等の大人の庇護下にいる子どもたちは、意思を持ってはいけないのか、という話になるわけです。
「庇護下における限定された自由」を与えられていて、それで子ども側も満足できる(保護者と子どものバランスが合っている)場合は、特段問題にならないと思うんですけど、そうじゃないパターンが問題(毒親とか、過保護とか、、、)で、0X1のゼロくんもこちらに当てはまるのではないかと思います。

自由・意思が与えられない子どもたちが取りうる行動パターンもいくつかあると思っていて
(1)グレる=責任を取ることを放棄する
→例えば、BTSの花様年華のテヒョンの落書き、RUNのMVで出てくるトンネルでの大騒ぎ(?)等、責任を取ることをめざさず、ただただ不満を発散させるパターン

(2)極端な行動に出て、保護者の庇護下からの脱出を試みる
→0X1のMVに大量に引用されている家出物の作品たちや、「命」で大人たちに対抗しようとする「木曜日の子ども(本)」等、自分の持ちうる全てのカードを使って、保護者に対抗するパターン。たいていの場合破滅に向かう(ダメじゃん)

(3)「意思」を放棄する
→0X1のゼロくんのパターン。全てを他人に委ね、自分で責任も取らないし、「何かをしたい」「なにかになりたい」という意思や希望を放棄して自分を守る

もちろん、ここで話をしたいのは(3)「意思」を放棄するパターンなんですけど、0X1のゼロくんについて考えているうちに、映画「いまを生きる」を思い出しました。

いわゆる名作映画なので内容をご存じの方も多いかと思いますが、ざっくりあらすじを書くとこんな感じ。

とある名門高校に新任教師が赴任して、詩を通じて人生の豊かさ、楽しさについて生徒たちに説き始める。それまで、厳格な親や先生の敷いたレールをたどって生きてきた生徒たちは、「自分の人生を自ら生きること」の大切さに気付き始める(自らの「意思」の存在への気づき)。
生徒のうちの一人は、自分の演劇への思いに気が付き、劇団に入り「真夏の夜の夢」の舞台に出演し、大成功。初めて「自分が生きていること」を実感する。ところが同日、劇団に入ったことが厳格な父にバレてしまい、勉強に専念するようにという意図から、学校も劇団も辞めさせられてしまう。自らの意思のない人生に絶望したその生徒は、自ら命を絶ってしまう。

つまりです、「いまを生きる」の生徒は、自らの「意思」を持った結果、「責任を取れないから意思のまま、自由に生きられない」ということにも気が付いて、命を絶つ選択をしてしまうわけです。イヤ、どうすりゃいいのよ、という話なんですよ。

これを0X1に当てはめてみると、「意思を持たず死んだように生きていくこと」「意思を持っていないことにも気が付かないように予防線を張っていくこと」は、「君」に出会う前の、全て受け身のゼロくんのように思います。
全て受け身の世界、それこそが0の世界なのでしょうか、、。
そんなゼロくんが、出会ってしまう「意思」こそが、「君」の存在なんだろうな~。「意思」なんか持ったってつらいだけと分かっていたのに、うっかり出会ってしまったからこそ、あの叫んでいるような、絞り出すような「I Know I Love You」になるんでしょうかね、、。責任を取らことができない中、意志を持ってしまうことの苦しみにうっすら気が付いているから、Sayではなく、Knowが精一杯なのでしょうか(頭の中で思うだけで、行動には移さないという落とし所)。
と思うと、「君」が誰であれ、何であれ、出会ったのことが喜びなのか、悲劇なのか、私にはわかりません。

5.「普遍的な穴」を乗り越えるには

さてさて、0X1=LOVESONGのMV冒頭には、小説マンホールの書評を引用して、こんな言葉が出てきます。

「成長期はある意味、万人の人生に置かれている普遍的な穴とも言える」

普遍的な穴とは何か。やっぱり、前述した、「意思の芽生え」と「意思を達成できない自分の無力感」との葛藤なのかと思います。
その穴の大きさ、深さは置かれた環境(保護者が与える限定的な自由と自分の意思とのバランス)によって変わるんだろうな。

ところで、「意思の芽生え」ですが、TXTのデビュー曲CROWNで描かれた「ツノが生える」という事象とも重なります(ツノとは、成長痛の比喩だとはっきり公式から発信されてますよね)

ずっと同じことを言っていて恐縮なんですが、TXTくんの物語は、成長痛を乗り越える過程なのだと思いますが、CROWNから始まった夢の章は現状バッドエンドですよね、世界を燃やして終わったので、、。
そう思うと、大きな、深い「普遍的な穴」に出会ってしまった少年たちがそれを乗り越える手段は、まだ示されていないように思います。

私自身、幸いなことにそんなに穴が大きかったタイプではないので、「意思」を持ってしまったけれど、自由が許されていない子供たちがどうするべきか、について、「大人になるまでなんとか我慢しな~~!!!」以上の回答がなく、無力~~!!って思っているのですが、
今後、TXTが楽曲を通して、何らかの答えや、答えじゃなくても慰めや救いを示してくれるのかなあ、と期待してしまっています。次の章も楽しみですね!!!

想像以上に結論出なくて、最後がめっちゃ雑で自分でもびっくりしてますが、以上が、私の現時点での0X1=LOVESONGの解釈でした~。いやゼロバイ面白いけど難しいな!!!

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