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ブルーオーシャン戦略は競争戦略をやり切っていることが前提

2020年10月28日(水)のMBA Essentialsのレポートです。

今回は、池上 重輔先生による、
「市場創造」
です。

池上先生に関しては、下記を参照ください。
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6035

今回の講義で重要だと思ったのは、下記の点です。

- ブルーオーシャンは見つけ出すものではなく、主体的に作り出すもの
- ブルーオーシャンも時間と共にレッドオーシャン化する
- ノンカスタマーから新しい需要を得ることが重要
- レッドオーシャンの判断は競争戦略をやり切っていることが前提

一つ一つ説明していきます。

〇 ブルーオーシャンは見つけ出すものではなく、主体的に作り出すもの

ブルーオーシャンに行くことを、「ブルーオーシャン・シフト(BOS)」と言います。本も出ています(https://www.amazon.co.jp/dp/4478100357)。

BOSとは、

「"広大な需要"を主体的かつシステマチックに創造する戦略理論」

です。

"広大な需要"なので、小さなブルーオーシャンというのはないですし、"システマチック"なので、天才がいないといけない、ということもないです。
また、"創造する"と書かれている通り、ブルーオーシャンは発見するものではなく主体的に創り出すものです。また、今までの競争戦略とは異なる考え方になるため、主体的に頭を切り替えて臨む必要があります(パラダイムシフト)。

また、ブルーオーシャンや市場創造というと、既存の業界を破壊しなければいけないイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。講義では、任天堂のWiiが例として挙げられていましたが、Wiiは既存の業界を破壊したわけではなく、顧客体験の軸を変えることで他社と差別化して成功した例となっています。

〇 ブルーオーシャンも時間と共にレッドオーシャン化する

ブルーオーシャンで一つ押さえておかなければいけないことは、一度ブルーオーシャンを創造したとしても、それは時間と共にレッドオーシャン化してくる、ということです。ここを認識して、事業ポートフォリオを組んでいく必要があります。事業ポートフォリオを組むに当たっては「PMSマップ」が紹介されていました。

ブルー・オーシャン戦略には事業ポートフォリオ管理が欠かせない
https://www.dhbr.net/articles/-/3479

この記事にも書かれていますが、授業でもAppleのPMSマップが紹介されており、Appleも常にブルーオーシャンで戦っているわけではなく、事業ポートフォリオを組んで、レッドオーシャン化してくるところで新たな事業を入れてポートフォリオをうまく組んでいることが分かります。

〇 ノンカスタマーから新しい需要を得ることが重要

ブルーオーシャンを考える上で重要なのは、ノンカスタマー(=意思を持って選んでいない人達)です。これは、ニューカスタマー(=認知していない人)とは異なります。ニューカスタマーは、通常のマーケティングのSTPやPromotionなどを行なうことで取り入れることが出来るため、こちらはブルーオーシャン戦略とは異なります。

ノンカスタマーは3つの領域に分けることが出来ます。

第1層: "soon to be" (逃げ出しそうな層)
第2層: "refused" (使わない意思決定をした層)
第3層: "unexplored" (そもそも検討をしていない層)

これらの層に対して、なぜ逃げ出すのか、なぜ使わないのか、なぜ検討にも値しないのか、というところを分析していきます。そして共通点を導き出します。そして、その共通の課題を解決することで、新しい需要を得ることが出来、ブルーオーシャンを創り出すことが出来るようになります。ポイントとしては、ノンカスタマーは既存の市場調査では分からないので、カスタマー・ノンカスタマーに直接・密着して現場観察をしていく必要があることです。そして、こういった場合には、一次情報が非常に重要となるので、意思決定者が直接現場観察をすることも重要です。

〇 レッドオーシャンの判断は競争戦略をやり切っていることが前提

ブルーオーシャン戦略を行なう際には、現状を知る必要があります。そのためには、戦略キャンバスというものを使って、戦略の現状を明らかにします。

戦略キャンバスについては下記のサイトなどを参照ください。
https://www.kikakulabo.com/tpl-strategy-c/

戦略キャンバスは、横軸にファクター(業界で重要視されている要素)を、縦軸にそれぞれのファクターにかけているコストを示し、それを他社や他社平均と自社を比べていきます。これが自社と他社で同じようなカーブを描くと、レッドオーシャンに入っている、ということになります。要は、他社と同じ領域にコストをかけていると、いつまでたっても競争から抜け出すことが出来ない、ということです。それに対して、他社とは違うファクターにコストをかけることで、他社とは違う土俵で戦うことが可能となり、ブルーオーシャン戦略を持てる可能性がある、ということです。

なお、戦略キャンバスで他社と違うカーブになった場合に、それがブルーオーシャンになっているのかの判断基準は業績で、

業績が良い: ブルーオーシャンで戦えている
業績が悪い: ピントを外している

という風に判断できる、とのことでした。

講義では、実際に戦略キャンバスを書いてみたのですが、戦略キャンバスがうまく書けない(ファクターが何か分からない、コストをどのくらいかけているかが分からない)、という状況が発生しました。それは何を意味しているのか、というと、業界分析や他社分析が出来ていない、すなわち、(昔からある)競争戦略をやり切っていない、ということが言えます。これは、競争戦略の中でも、まだまだやれることがある可能性を示唆しています。その場合は、その業界がレッドオーシャンであると判断するのは時期尚早で、競争戦略による打ち手はないのか、というのを考えていくのがまず最初にやるべきことです。

ブルーオーシャン戦略の講義の中で、ブルーオーシャン戦略を取るべきでない時の話が出てくるのが非常に刺激的で、実践的な内容だと思いました。

〇 まとめ
ブルーオーシャン戦略について学ぶのは初めてだったので、考え方やフレームワークなどのほぼ全てが新しく、非常に学びの多い授業でした。池上先生、どうもありがとうございました。

なお、講義では、その他にもバリュー・イノベーションやバイヤー・ユーティリティマップ、6つのパスやERRCグリッドなど、ブルーオーシャン戦略で出てくる様々な考え方やフレームワークも学ぶことが出来ました。このあたりをより知りたい方は、下記の本などを読んで頂ければ良いと思います。

「ブルーオーシャン戦略」
https://www.amazon.co.jp/dp/4478065136

「ブルー・オーシャン・シフト」
https://www.amazon.co.jp/dp/4478100357

次回は2020年11月4日(水)「バリューチェーンとビジネスモデル」(菅野 寛先生)です。

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