見出し画像

戦略とオペレーションに一貫性があることが重要

先週からMBA Essentials総合コース秋が始まりました。またnoteに講義内容を書いていきたいと思います。

2020年10月14日(水)のMBA Essentialsのレポートです。

今回は、内田 和成先生による、
「MBAイントロダクション秋~戦略とオペレーション~」
です。

内田先生に関しましては、下記を参照ください。
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6070

今回は、「あさひ自転車(株式会社あさひ)」を題材に、顧客・価値・競合・自社の強みの観点で、個人で考え、グループで議論し、全体で共有して、内田先生がまとめる、という流れで進んでいきました。春の内田先生の講義と同じ流れですね。

株式会社あさひについては下記を参照ください。

https://corporate.cb-asahi.co.jp/
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%95%E3%81%B2_(%E4%BC%81%E6%A5%AD)
--------------
会社を急成長させた理由として収益力に優れたプライベートブランド商品の開発が挙げられる。PB商品の割合は全体の50%と、他の小売業に比べかなり高い。いわゆる製造小売業であり、ユニクロ、ニトリと合わせ不況下の高収益企業として取り上げられることが多い。一般的に製造小売企業はOEMで他社に商品開発を委託していることが多いが、あさひのPBの多くは商品企画から開発、製造、品質管理まで自社で行っている。リーマンショックによる不況の中で利益を伸ばしている企業として多くのビジネス誌で取り上げられている。2009年9月にはフォーブスにアジアの注目中小企業200として選出された。
--------------

結論から言うと、あさひ自転車は、下記の戦略・戦術により、斜陽産業と言われる自転車業界において、高利益率を保っています。

- 少人数で店舗を回せる仕組み
- 顧客に店舗に足を運んでもらうことを重視
- バリューチェーンのリードタイムの短さ

一つずつ説明していきます。

● 少人数で店舗を回せる仕組み
あさひ自転車では、少人数で店舗を回すために、様々な効率化がなされています。

例えば、自転車の組み立ては本部でやってしまって、店舗では組み立て不要にしています。ただ、組み立てた状態で配送する、というのは非常に難しく、通常の運送会社では効率的な配送が出来ないため、自社で配送まで行なうことで可能にしています。また、店舗でも、よく使う工具は天井から吊り下げてすぐに使えるようにするなど、徹底的な作業効率化が行われています。また、人材に関して技術には相当拘っており、自転車の組み立てには絶対の自信を持っていると同時に、修理などの作業も早く正確に出来るように訓練されています。パンク修理であれば10分以内に出来るように育てている、とのことです。

さらに、店舗を少人数で回すために、社員一人が自転車の修理などの技術的な面から、接客・販売などに関するところまで色々なことが出来る多能工とし、さらに社員比率を上げることで、少ない人数で店舗を回せるようにしています。販売や修理には波があるので、それぞれに人を雇っていると、高コストになりやすい、という判断からです。普通に考えると、コスト削減のためにアルバイトを増やしたりするのですが、あさひ自転車はこのあたりの戦略も量販店などとは一線を画しています。

● 顧客に店舗に足を運んでもらうことを重視
あさひ自転車では、顧客を非常に重視しています。

例えば、自転車修理においては、何に幾らかかるのかが不明瞭なところが多く、躊躇してしまうのですが、あさひ自転車は全ての価格を明示し、明朗会計に努めています。また、390円で点検が出来るサンキュー点検を設けるなど、購入した自転車を大事にしてもらうと同時に、店舗に足を運んでもらう回数を増やす仕組みも作っています。

その他にも、常に店舗は綺麗に清掃しておいたり、自転車も常に見やすいようにディスプレイが整えられていたり、修理の際には待ち時間がないように効率化や作業優先度付けがなされていたり、修理の後には店舗を出るまでお見送りをされていたり、今までの入りにくい自転車屋のイメージを払拭して新しい自転車屋を作り上げています。

こうしてお客様と良い関係を構築することで、お客様の自転車に対する要望を得ることが出来、それをプライベートブランドの商品開発に活かしています。例えば、通常の自転車のカゴにはサッカーボールが入らないので、サッカーボールを持って自転車に乗る時には危なかったのですが、サッカーボールの入るカゴつきの自転車を開発したり、自転車を使うビジネスマン向けにズボンの裾が汚れにくい自転車を開発したり、といった形です。

● バリューチェーンのリードタイムの短さ
あさひ自転車では、商品開発・生産・物流・販売・アフターサービスまで一気通貫で自社で見ています(正確には、生産は中国の企業に委託していますが、管理はあさひ自転車が行なっています)。これらを一気通貫で見ることにより、お客様の要望を漏れなく商品開発に入れ込むことが可能になり、かつ、物流も効率化することで、全体のリードタイムを短くすることが出来ています。

通常、プライベートブランドというのは、売れれば利益率が高い反面、需要予測を間違うと在庫の山になる、というリスクを抱えています。なので、通常は牛乳など、必ず売れるものをプライベートブランド化するという戦略が取られます。
それに対して、あさひ自転車は、商品開発のリードタイムを短くすることにより、需要予測のブレを少なくし、商品バリエーションが多い中でもプライベートブランドを成り立たせています。簡単に言うと買うと分かっている人がいる中で、その人の気持ちが覚めないうちに商品を出してしまう、というイメージだと思います。

● まとめ
上記に書いた内容は、戦略に一貫性があり、どこから話をしてもその理由を説明できる、という特徴があります。例えば、

「お客様に店舗に足を運んでもらうために、待ち時間を減らしたいので効率化を推し進める」
「店舗を効率化させたいので、バリューチェーンを全部自社で見る」
「お客様の声を商品開発に活かしたいので、販売・アフターサービスに力を入れる」

などです。

このように一貫性がある、というのが重要、というのは春の講義でもお話しがありましたので、ここでも繋がっているのだと思います。

ちなみに、あさひ自転車は後発だったので、量販店などと差別化するために最初はアフターサービスなどに力を入れていき、そこでお客様の信頼を得て、お客様の要望を聞くことでプライベートブランドを立ち上げ、高利益率を生む、という風に進んでいった、という話がありました。最初はブリジストンなどのナショナルブランドしか売っていなかったものが、信頼を得ることで、プライベートブランドも売れるようになった、という流れですね。このあたりは、ユニクロも同じだと内田先生はおっしゃっていて、昔はユニクロは安い服の店だったのが、技術開発をして信頼を得て、今は安くないヒートテックなどの商品がどんどん売れる、という風になっている、とのことで、なるほどなぁ、と思いました。

内田先生、今回も学びの多い授業をどうもありがとうございました。

次回は2020年10月21日(水)「B2Bマーケティング」(今村 英明先生)です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?