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映画「ICHI」を観て

盲目の主人公をどう描くのか

作品アイデアを考える中で、
目が見えなくなったら、すごく感情が動くなぁと思い
目が見えなくなる主人公のアイデアを出したところ

先生が紹介してくれた作品のひとつが
綾瀬はるかさん主演の「ICHI」でした。

作品アイデアを提出するとき、
盲目の主人公だと描写が難しいよ、等々
苦言を呈されるだろうか…等々思いながら出したのですが

さすが歴代の文学作品。
落語にも映画にも、盲目の主人公の作品は
すでに数多くあったのでした。

よくよく考えれば
座頭市の主人公、勝新太郎さんをモデルにしたワンピースのキャラクターだっているし、いくらでも表現の仕方はあるのだなぁと

そもそも、ないのなら作ればいいじゃないというのが
作品の世界だったと、
こんなところからも学ばせてもらう日々です。

というわけで、盲目の主人公と主人公を取り巻くドラマをどのように描いているのか、それを観たくて「ICHI」を鑑賞しました。

座頭市シリーズの女性主人公版

座頭市シリーズとは

『座頭市』(ざとういち)は、兇状持ちで盲目の侠客である座頭の市が、諸国を旅しながら驚異的な抜刀術で悪人と対峙する、アクション時代劇。

Wikipediaより

映画がヒットしてなんと26シリーズも展開されてきたようです。
「ICHI」はその中でも唯一の女主人公バージョンの座頭市。
中村獅童や大沢たかお、窪塚洋介といった大物俳優たちが共演しております。

女主人公ならではの悲劇

座頭市シリーズを全部見たわけではないのでちょっと比較しづらいのですが、勝新太郎さんが演じる座頭市は全体的に割と陽気な雰囲気が漂っているのですが

この「ICHI」は非常に悲劇性が強く表現されています。
当時の女性の立場の弱さに加えて盲目という生きづらさ
そして自分のせいではないのに仲間から排除されてしまったやるせなさ

自分を育ててくれた唯一の居場所である父親代わりの恩人を探して
たった一人、芸で身を立てているという状況…

つ、つらい…つらすぎる…っ

たしかに、陽気な女性主人公っていうのは…時代劇には合わないのかもしれませんが・・・・にしてもつらい・・・
(そういう意味ではとても昭和~平成的な感じなのかもしれません)


死生観

愛する人の死

当作品では多くの人が死にます。
主人公ICHIがやっと心を開き安心した人さえも…

主要な登場人物は、市、藤平トウマ、万鬼、トラジ。
その中でもさらにメインを張るのが
市と藤平トウマ、万鬼(悪役)なのですが

この3人の共通点は「不遇な事故により居場所を追放された」こと。
追放され、居場所を求め訪ねる市。
追放され、精進する旅に出ているトウマ。
追放され、奪う側に回った万鬼。

たどる道は違えど、何か通ずるものを感じ合うこの3人。
出会いが絡み合って絡み合って、最後、
市を守るために剣を抜くトウマ VS 市を自分のものにしたい万鬼

そして…
最後に二人とも命を落としていくのです…


死ぬことで浄化される

日本の死生観なのでしょうか。
それともアジア特有の死生観なのかもしれませんが

死ぬことで解放される
死に方によってメッセージを強く伝える

そんな雰囲気を作品から感じ取りました。

第二次世界大戦の特攻隊もある意味そうですよね…
のちの世に生きる者たちに、「遺志を継いでよき国を作ってくれ」と
そんなメッセージを遺して飛び立っていきました。

海外作品だと
悪役が罰を受けて死ぬ。みたいな描写っぽいのが多いかな~と思いました。
あ、あとは、キリストのように、今まで導いてきた人が死ぬ、というのも多い印象があります。

しせい‐かん ‥クヮン【死生観】
〘名〙 生きることと死ぬことについて、判断や行為の指針となるべき考え方。生と死に対する見方。

精選版 日本国語大辞典

愛する人の死を受けて、主人公の市は
「光が見えるようになった」
歩き出します。

死というものをどう捉え、表現していくかを
考えさせられました。


キャラクター論

つい最近ネーム講座で学んだキャラクター論。
それに照らし合わせてみたところ。

ちゃんと、
それぞれのキャラクターがバランスよく配置されている印象でした。
ひょえ~~よくできてるものだなぁと感嘆しました。

感想

観ている最中は、
あぁ…こんな悲劇…耐えられない…
っていうかこんなの描けん…しくしく

と、寒々した心地だったのですが

こうやってアウトプットをしてみると
やはり新たな気付きがありますね!
主役3人の共通点などは、改めて整理していなければ気付いていませんでした。

他の座頭市シリーズが割と陽気だったのも少し救われたかな…
全部こんな悲劇的だったらちょっと耐えられない。。

私が描くとしたら
もうちっと陽気なライトな感じで描きたいかなぁ
生きててよかった!感を感じてもらえるような作品を作りたいですね。

まだまだ修行中ですが…💦


というわけで今回はここまで!
お読みくださり、ありがとうございました!


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