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【日記】「最高な姿勢」を見つけたい

毎日毎日文章を書いていると、なんだか身体中が痛くなってくる気がする。わたしはそこそこタイピングが速く、周りに煙たがられるくらいエンターキーを力強く押すから、昨日は右手の小指から肘までがずっと痛かった。

シップをして一晩寝たらかなり良くなったのだけれど、昨日と打って変わって今日は肩こりが酷い。シャワーを浴びた後に薬箱から取り出したシップは、肩甲骨のあたりで今もくちゃくちゃになったまま張り付いている。

たぶん、本来肌に触れるべき面積の2/3くらいしかわたしの肌にはくっついていないんじゃないかと思う。それでもないよりはましだから良いのだけれど。

そういえば、首の筋か神経かをおかしくしたのも、去年のちょうどこのくらいの時期だったように思う。

起きた瞬間にピキッという音を聞き、「寝違えたのだろう」と思った。みるみるうちに痛みは広がって、とても最寄り駅まで歩いていくのは無理そうだ。アプリでタクシーを呼んで、家に横付けしてもらった。

乗ったはいいが、そのタクシーの運転はなかなかに乱暴で、これなら絶対に歩いて駅まで来た方が楽だったと思うほど。「金をかけて痛みを強化してしまった……」と悔し涙を飲みながら通勤した。

痛み止めを飲みながらだましだまし勤務していたけれど、お昼ごろに限界を感じてシップを買いにいくことにした。

当時の渋谷のオフィスの近くにはドラッグストアがなかったから、シップを買うためには駅を超えて道玄坂まで行くしかなかった。長いこと渋谷に通勤していたが、あの日ほど渋谷周辺の坂道を恨んだことはない。歩道橋で階段を見上げるのにも一苦労だったのだ。

やっとの思いでドラッグストアについた。すると、シップが並んでいるのは商品棚の一番下だった。勘弁してくれ、と思った。

シップを必要としている人なんて、首か腰か、なんらか痛みを感じている人だろう。そのときのわたしの首の上下可動域の狭さはシルバニアファミリーの人形にさえ匹敵していた。それなのに、首をぐいっと下に向けて、一番下の棚に手を伸ばすなんて、できるはずもなかろう。

恥を忍んで店員さんを呼んだ。そうしたら「シップならこちらにもあって……」と、カウンターに呼ばれた。どうやら商品棚に並んでいるシップはややマイルドなもので、カウンターには痛み止めの作用のあるちょっと強めのものもあるようだった。

「じゃあ、こっちで……」

息も絶え絶えにそういうと、店員さんは話し始めた。

「これだとSサイズなのでちょっと小さくて、手首とか肩だったら向いてるんですけど、もしも痛みがあるのが背中の広い範囲だとしたらこのシップよりも先ほどご覧になっていただいた――」

「これで、いいです……」

結局わたしはその日、会社を早退して病院に行くことになった。16時からの夕方の診療に駆け込んで(実際はかなりゆっくり歩いていたので「歩きこんで」になる)、ちょっと黄ばんだ壁を見つめながら十数分、ひたすらに機械に首を引っ張られつづけた。

自分が首を真上に吊り上げられている姿を想像すると、かなり笑えた。同じ部屋で静かに、同じように首をつられている人は何人もいたけれど、笑っているのは私だけだった。

あれから1年経って首の痛みはすっかりなくなったけれど、この調子だとまたあの「ヤバい」やつがくるんだろうなと思う。早く、自分にとってのTHE BESTな姿勢を見つけたい。

椅子だけはちょっといいやつにしたものの、キーボードとかデスクとかモニターとか、変数は限りなくある。最高の姿勢を見つけるまでどうか持ちこたえてくれ、とわが身にお願いする。特に、首。頼む。お前だけは生き残ってくれ。なんでって、あの小さな部屋でまた首をつられてクスクス笑ってしまうのは、あまりにもいたたまれない気持ちになるからだよ。

(執筆時間:15分)

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