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第5回TDセミナー①:関係者間の力関係にどう対処するのか

共創に関する理解を深める勉強会「TDセミナー」の第5回目が8月26日に開催されました。今回は、対象地域における関係者間の力関係と研究者の役割をテーマとして、関連論文の要約の発表と参加者全員での議論を行いました。(第1回~第4回の内容については、また後日noteにアップします。新しいものを新しいうちに、ご報告したいので。)

セミナーの前半は、関係者間の力関係(power relations)の問題に関して、

Turnhout, E., Metze, T., Wyborn, C., Klenk, N., & Louder, E. (2020). The politics of co-production: participation, power, and transformation

の論文を読み、議論しました。 

TD研究は、社会的課題に関して、問題を書ける住民等と研究者が一緒に取り組むことを特徴としています。こういった社会的課題では、しばしば、身分や立場が「弱い」または「少数派」である人たちが含まれます。

その際、多くのTD研究プロジェクトでは、異なるステークホルダー間の関係を変え、マイノリティグループをエンパワーメントすることを試みます。しかし、これを達成するのは容易ではありません。今回取り上げたTurnhout等の論文では、その理由として以下の3点をあげています。

第一に、多くのTDプロジェクトは、参加者間の不平等な力関係に十分な注意を払わず、参加者の大多数が同意する解決策(コンセンサス)を見つけようとすることに重点を置きすぎている。しかし、これでは少数派の声が十分に反映されず、かえって力を奪われたように感じてしまうことがある。そのため、TDの研究者は力関係にもっと注意を払い、人々が自由に意見を述べ、異なるグループの意見やニーズが認識され、尊重されるようなプロジェクト環境を提供することが重要である。

第二に、TDは他の参加型アプローチからもっと学ぶことができる。アクションリサーチや参加型手法など、他の参加型プロジェクトでもステークホルダーのエンパワーメントは注目されているが、こうしたプロジェクトで使われている有用なヒントや方法は、TDの研究者には使われていないことが多い。

最後に、小規模なプロジェクトが多いため、プロジェクトの外に対して与える影響は限定的である。研究者は、プロジェクトがより多くの人々に影響を与えるにはどうしたらよいのか、または、新しいアプローチや解決策を実装するにはどうしたらよいのか、ということをもっと考えるべきである。

論文の概要の発表のあと、セミナーでは、ZoomアプリのPollyとMiroのを使って参加者の意見を聞きました。TDプロジェクトはステークホルダーをエンパワーするべきだという点は誰もが同意しており、それを実現するためのさまざまなヒントや方法を共有しました。下の写真は、MIROのアクティビティで参加者が共有した例の一部です。ワークショップ、インタビュー、フィールド訪問など、さまざまなステークホルダーのニーズを理解するために、幅広い活動を行うことが重要だという意見が多く寄せられました。また、異なるグループ間で信頼関係を築くためには、飲み会や食事会のような非公式な活動も有効であるという意見がありました。

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セミナー後半については、次に続きます。(準備ができたらUPします。)

第5回TDセミナー②:プロジェクトにおける研究者の役割(Role of researchers)

知の共創プロジェクト主催の「TDセミナー」の説明はこちらです↓↓↓


今回の記事は、知の共創プロジェクト推進員のR.K.が執筆し、
同プロジェクトリーダーのY.O.が翻訳・編集しました。