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股関節外転機能の改善に最適なトレーニングとは?

股関節の運動機能障害は様々な筋骨格系障害に関連しています。
例を挙げると,膝蓋大腿関節障害、ACL障害、腸脛靱帯炎、腰痛、股関節障害など,股関節だけでなく腰,膝といった隣接する関節に負担を与えます。

このように股関節障害と下肢障害の関連性に基づいて、股関節筋強化のリハビリテーションの注目が高まっています。

では股関節といってもどの筋肉にフォーカスして筋力強化を行なっていけば良いのでしょうか?

いくつかの報告では膝蓋大腿痛のある患者は、機能的作業の際に、股関節外転、外旋、伸展に有意な弱さがあり、それに関連して内旋、膝外転が増加することが報告されています

まとめると,外転筋が大事なのは言うまでもないですが,内旋を抑制し、外旋を強化する必要があるということになります。

よって,

・大臀筋;伸展,外旋作用(上部繊維は外転作用を持つ)
・中臀筋;外転作用
この2つの筋のパフォーマンスを向上させることは,体重を支える活動中の過度の内転,内旋を制御するために推奨されています

・大腿筋膜張筋(TFL);外転,内旋作用
TFLは内旋を伴い、腸脛靱帯を介して膝蓋骨を外側へ移動させる作用があります。いわゆるknee-inの状態に大きく関与します。

また,

膝蓋大腿障害:股関節内旋と膝蓋骨外側変位に関与
股関節OA:TFLと比較した大臀筋の萎縮に関与

といった報告があることから,TFLはできるだけ抑制し,中殿筋,大臀筋にアプローチすることが重要と言えます

そこで,この論文の紹介です。

参考文献;
Which Exercises Target the Gluteal Muscles While Minimizing Activation of the Tensor Fascia Lata? Electromyographic Assessment Using Fine-Wire Electrodes.
David M. Selkowitz
JOSPT Cases.Published Online:February 1, 2013Volume43Issue2Pages54-64

目的

TFLを抑制し、大臀筋、中臀筋の活動を促進するトレーニングを明らかにすること

方法

20人の健常者で11種類の異なる運動を実施。筋電図を用いて、中臀筋、大臀筋、大腿筋膜張筋の活動を記録し、TFLの活動を最小限に抑えながら臀筋を動員する最適な運動を特定した

結果

クラムシェルエクササイズ、サイドステップ、片脚ブリッジ、QKF(四つ這い肢位,膝屈曲位での股関節伸展)→TFLに対する大臀筋,中殿筋の活動が大きいので推奨される

フォワードランジ、側臥位での股関節外転運動,STEPーUP(段差昇降)、
HIP HIKE エクササイズ→お勧めしない

※詳しい運動方法は論文内の写真をご参照ください

いかがでしょうか?
個人的には,
外転筋トレーニングとして一般的に使用される側臥位での足上げ運動や,ランジ動作は,TFLでの代償運動を起こしやすいのであまり推奨できないということが非常に面白い結果でした.
これからは側臥位でのクラムシェルエクササイズやサイドステップを患者さんの指導に多用していき検証していきたいと思います.

アスリートや健常者のように,総合的に外転筋を鍛えるなら問題はないですが,動作中にknee-inが観察されるような症例では,TFLを含む外転筋強化は、逆効果になる可能性があるということを念頭においた方がよさそうですね.

またこの論文ではクラムシェルやサイドステップの際にチューブを使用していますが,チューブによる抵抗なしでも同等の効果が得られると考えてよいかと思うので、その都度、患者さんに合わせて調整するといいですね.

以上,外転トレーニングに関してでした.ではまた.

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