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前鋸筋の解剖と創傷の処置とときどき評価

一昔前にこんな韻を踏んだ映画?小説?がありましたよね。
それとは打って変わってすごくごちゃごちゃした内容ですがご了承を・・・

前鋸筋の筋連結、介入方法について

前鋸筋は肩甲骨を外転、上方回旋させる重要な筋肉で臨床でも介入する事が多い筋だと思います。この前鋸筋ですが、上・中・下部線維に分かれており、停止や作用が大きく異なります。まずは前鋸筋の解剖から。

・前鋸筋上部線維
 起始:第1−2肋骨
 停止:肩甲骨上角
 作用:肩甲骨下方回旋
 筋連結:肩甲挙筋
・前鋸筋中部線維
 起始:第2−3肋骨
 停止:肩甲骨内側
 作用:肩甲骨外転
 筋連結:菱形筋
・前鋸筋下部線維
 起始:第3−9肋骨
 停止:肩甲骨下角
 作用:肩甲骨外転、上方回旋
 筋連結:大菱形筋、外腹斜筋

外腹斜筋と共同収縮させながら肩甲骨の外転・上方回旋を促す手技を見たことがありますが、こういった解剖が由縁なんですね、なるほど・・・
今度は臨床でどういった介入方法が前鋸筋に対して効果的なのかを見て行きます。

野球選手や高齢の方で良く見かける「円背」ですが、これは「肩甲骨外転」している状態です。前鋸筋の解剖からすると中部線維・下部線維が短縮している状態です。こういったマルアライメントは肩痛や投球動作にも影響してきます。
また、「円背」は前胸部のタイトネスも生じやすく、肩甲骨は前傾位となり、
胸郭や上肢のROM制限を生む可能性があります。
そこで前鋸筋への介入が必要になるわけですが、ここでポイントが2つほど。

①肩甲骨周囲は多数の筋があるので滑走を意識すべし!!

外転位や前傾位にある肩甲骨を動かす際は肩甲骨外側縁に手を当てて誘導することが多いと思います。その誘導する際に、他の筋との滑走を意識すると効果がかなり変わります。

肩甲骨下角レベルの前鋸筋:広背筋と滑走
肩甲骨外側縁中央1/2レベル:大円筋と滑走
肩甲骨外側縁近位1/3レベル:肩甲下筋と滑走

上記筋同士との滑走を意識しながら自動ないし他動的に肩甲骨の運動を行うことで劇的に肩甲骨の動きが変わります。

②胸郭の形を意識して動かすべし!!

胸郭って上から見ると動物の耳?が2つ繋がっているような形をしているので
肩甲骨を脊柱に近づけようと思ったらただ水平に動かすだけではなく、
脊柱の横突起に向かってやや斜めに動かすと良いのです。

この2つのポイントを意識して実際に同僚同士で治療をしてみたところ、
肩甲骨と胸郭の可動性(特に上部体幹の回旋)が顎外れるくらいに変わりました。
それが今日の昼の話です。タイムリー。

皮膚の創傷の処置のお話

そしてここでガラッと内容変わります。創傷(キズ)のことです。
まずは、創傷の種類についてです。全部で8種類、多いです。

①切創
②裂創
③割創
④挫創
⑤擦過創
⑥刺創
⑦咬創
⑧銃創

どの創傷に関しても基本的には消毒液で洗浄はせず、水か生理食塩水で洗浄します。皮膚が剥けてしうと取りたくなりますが、そのまま取らずに処置をします。
そして処置を行なう上で大切なことが保護と保湿です。

保護は清潔なガーゼやドレッシング材(優秀なガーゼみたいな)、ポリウレタンフィルムで行い、保湿はワセリンをガーゼやドレッシング材に塗布します。水疱の処置なども基本同様ですが切創、裂創などは少し対応が異なりまして、現場で処置する場合はテープによる簡易縫合を行います。

簡易縫合を行う場合は横方向→縦方向にテープを止めると良いそうです。
傷を横断するように貼ってから、並走するように貼る感じですね。

外傷・障害・予防に対して必要な評価

最後に「評価」の概要についてお話して行きます。

外傷・障害を持っている場合の評価

外傷・障害を有している時点で何らかの形で競技者のパフォーマンスの低下が現れてくると思います。それをいち早く察知し、正確な機能評価・問題点の抽出を行う必要があります。具体的な評価を挙げると・・・

・ROM
 結合組織、軟部組織、骨の中でどれが制限因子となっているか
・筋力
 筋力発揮に影響するのは筋断面積、筋の形状、運動単位、大脳の興奮水準
 ありますが、実際の評価はMMTを良く使いますね
・メカニカルストレス
 骨には引っ張り、圧縮、曲げ、剪断、ねじれの力が加わります。
 これにより関節内には圧縮、剪断、回旋のストレスが生じやすいです。
 筋や靭帯には伸張やねじれのストレスが加わります。
 これを評価するのは難しいかと思いますが、運動時の関節軸やアライメント
 から推察するしかないかなあとおもいます。
・アライメント
 動的Aテスト:片足立位で上前腸骨棘〜膝蓋骨の延長線が母趾からどのくらい
        離れているかでknee inの評価
 動的Tテスト:トレンデレンブルグ兆候の有無をチェック。

これで評価項目の全てではないですが代表的なものを記しました。
これらの機能の中から問題点を抽出してその問題点を解決していくことで
パフォーマンスが変わっていくわけですね。

このように問題点を抽出してそこからプログラムを立案する考え方を
POS(problem oriented system)、問題点指向型システムと言います。
この考え方は時系列に沿って綿密にプログラムを立てやすいといったメリットと
数値化される評価が重視され、目標達成の十分条件を見失う可能性があるデメリットを持ちます。

外傷・障害を持たない時の評価

怪我をしておらず、「予防」の観点から評価する時は
・外傷、障害の予防
・パフォーマンスの把握
を軸にして評価を行います。

効果的なプログラムの立案のために、まずは体力側面についての特異性の分析を行います。俗に言うフィジカルってやつですね。フィジカルの要素は大きく5つに分類されます。
・解剖、運動学的要素(姿勢、アライメント)
・生理学的要素(筋力、持久力)
・医学的要素(身体特性、発達の度合い)
・技術的要素
・その他(心理学的要素など)

例えば「ジャンプ力」というフィジカル要素に着目した時に、ただジャンプの練習を繰り返すのではなく、筋力や動的アライメント、ジャンプ時の技術をそれぞれ改善させていく方が「ジャンプ力」は向上します。
このように1つの動作も各要素に分解して解釈することが大切です。

実際にフィジカルテストを行う場合はラボテストフィールドテストに分けられます。ラボテストはその名の通り、研究所のような専用施設で行う評価のことで高価な器具を使用して専門的な人が評価をします。それに対してフィールドテストは測定条件や手順を統一化していれば場所を選ばず、誰でも評価が行えます。

こういった「予防」的な視点で行う評価は明確な問題が見つけにくく、POSが通用しにくい場合があります。そのためGOS(goal oriented system)、目標指向型システムが有効な場合があります。いわば、トレーニングのゴールを先に決めてそれに向かって頑張ろう!ってやつです。ただし、プログラムの優先順位を慎重に判断しないと目標達成の必要条件のクリアがなされない可能性があるので注意が必要です。

今日の記事の写真は東京タワーですが、この色って地方にある電波塔と一緒なんですよね。世間知らずな頃は電波塔=東京タワーだと思っていました。笑
いくつ東京タワーあるんだよ(笑)

それでは、また次回!


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