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5年使った柳宗理のファイバーライン加工鉄フライパンを磨いて焼き入れし直した

はじめに

ひとつ前の記事では、図らずとも愛用している鉄フライパンへの愛を約2500文字の長文で綴ってしまったため、今回本題にするつもりだった焼き入れ直しの話を書く。

鉄フライパン再生の話なんて、今時ネット検索をすればいくらでも出てくるし、本職の料理人さんが動画で教えてくれたりもするから、今更この記事が何かの役に立つとは思っていない。
とはいえ、「柳宗理のファイバーライン加工鉄フライパン」というピンポイントな商品でそれを行なっている話は見当たらなかったので、今回はちょっと気合を入れて目次なんかつけちゃおうと思う。
情報収集に来ている方は、こんな与太話は飛ばして、目次から該当項目に飛んじゃってください。



ちなみに、今回私が手入れする「柳宗理のファイバーライン加工鉄フライパン」とは、

「鉄フライパンファイバーライン」に施されている表面加工です。

ファイバーライン加工はブルーテンパ材の表面に「ファイバー(繊維)状の凹凸」を浮き立たせ、そこへ表面保護のための黒色酸化皮膜、さらにその表面にはシリコン樹脂塗装を施した特殊加工です。食材とランダムな点で接触し、油なじみも良いのでこげつきやこびりつきを防ぎます。また、お使い始めの際は本体が油になじんでいないため金属タワシで擦ると表面の一部が白くなる場合がございますが、問題ありませんのでご使用後にうすく油を塗るお手入れを継続してご使用ください。

https://www.yanagi-support.jp/ja/faq.html
柳宗理公式サイトより

というもので、表面に細かな凹凸がある。

表面に黒いところと銀色のところがあるのが凹凸

そして、引用元にも書いてある通り、表面になんとか塗装だかがされているとかで、それがこびりにつきにくくしているらしい。
これを読むと、あまり表面をガリガリやったり、削るなんてもってのほかで、普通の鉄フライパンとは違った手入れが必要なのかもしれない気がしてくる。しかし、もう5年も使ってきていることだし、今までもかなり荒っぽい扱いをしてきて、ここまできたらもう普通の鉄フライパンと変わらんだろと思うので、同様の手入れをやってみた。

参考にしたサイト

「フライパン 再生」とかで検索するとたくさんの情報がヒットする。主に上記3つを参考にさせていただいた。特に、一番下のYouTube動画は、新品の鉄フライパンを用いての解説ではあるが、「鉄フライパンがこびり付かなくなる仕組み」について、その機序が分かりやすく説明されていたので、大いに参考になった。

使った道具


軍手と新聞紙も忘れずに
  • 金属へら(スクレーパー)←必須

  • 金属ブラシ

  • サンドペーパー(#60〜#240)

  • 酸素系漂白剤

  • 重曹

  • カセットコンロ

  • 軍手

  • 床に敷く新聞紙のような適当な紙など

フライパンの、特に外側に焦げついた汚れを落とすと、ものすごいことになる。作業は絶対に屋外で、尚且つ地面には後で捨てられる何かを敷くことを強くお勧めする。間違っても、キッチンのシンクで作業しようなどと思わない方が良い。
酸素系漂白剤や重曹はなくても良いと思う。
大体のものは100均で揃う。スクレーパーは、年月を重ねたこげ汚れを落とすのに必要不可欠だった。蓄積された汚れは、サンドペーパーだけでは到底落ちない。
サンドペーパーは、参考先では#100くらいからを使っていたが、粗い方がよく削れるので、私は#60から使用した。
IHの家や、ガスコンロにセンサーがついていて火力が弱まってしまうタイプだと焼き入れができないので、カセットコンロやバーナーが必要。


5年間一度も手入れらしい手入れをしないとこうなる


元のフライパンの写真(Amazonより)


作業中の画像しか残っていなかった

あろうことか、元のフライパンの写真を撮り忘れており、作業途中のもの、しかもInstagramのストーリーズにあげたものしか残っていなかった!
汚い写真で申し訳ないが、これが5年使ったフライパンの姿である。
カセットコンロでガンガン熱して、外側の汚れを焼き切ってからスクレーパーでこそげ落としているところだ。
内側は毎回金たわしで洗っていたから大して汚れていなかったが、外側がひどい。
長年の汚れが堆積し、熱などによって焼き締められ、削るとガリガリと剥がれ落ちる。まるで悪夢だ。
長年使っていて感覚が麻痺していたせいか、その積み重なったものが「汚れ」だとも認識していなかった。

表面の汚れや錆を落とす(主に外側)

そんなわけで、先ほども書いた通り、カセットコンロの強火でフライパンを炙り、汚れを焼き切る。表面の油汚れなどを完全に燃やして(炭化させて)、落としやすくするのだ。フライパンを傾けたりして、ふちまで直火を当てて焼く。汚れを焼くとかなり煙とにおいが発生するので、しっかりと換気が必要。もしくは、近所に迷惑にならない屋外で行うべし。かなり高温になるので、焼いた後はしばらく放置して冷めてから削ろう。
フライパンを触れるようになったら、スクレーパーを使って削っていく。ある程度したら、今度はサンドペーパーで。鍋肌の銀色が見えるまで全体を削らねばならない。
黒い汚れがかなり落ちるので、できるだけ広い場所に、後から包んで捨てられる紙やシートを敷いて、フライパンは地面に置いた状態で作業すると良い。ちなみに私は、新聞をとっていないので、使い古して処分する予定だったたとう紙(着物を包んでおく紙)を敷いた。かなり力を使うし、持久戦になる。どうすれば上手く力を込めて削れるか、己の身体の使い方を考えさせられた。ちなみに、翌日である今、主に上半身が筋肉痛である。


フライパンだと思っていたものが実は汚れだった

フライパンの裏側はずっと真っ黒だったので、それがフライパン本体だと思っていた。スクレーパーで削ると、表面が取れて、赤錆に似た色になる。さらにそこも削っていくと、なんと銀色になったのだ。今まで私がフライパンだと思っていたものは、長年蓄積された汚れだったのである。
これでは、最初からサンドペーパーを使っていては埒が開かないところだった。スクレーパーは必須アイテムである。
しかしこの作業、あまりにも骨が折れるので、途中で酸素系漂白剤につけ置きして、汚れを緩ませたりした。後から思い返すと、途中で焼く作業を再度やってもよかったかもしれない。
腕の筋トレだと思って、ただひたすら削り、サンドペーパーで擦った。

今回はここまで

色々やりながら、大体鍋肌が見えたので、今回はこの状態で妥協することにした。それでも、最初の状態と比べると全くの別物である。フライパンの質感の変わりように感動すら覚えた。
#240のサンドペーパーで磨き、さらに申し訳程度に重曹でも磨き、全体を洗剤で洗ってから、赤錆が出ないうちに焼き入れの作業に入る。

焼き入れ

おそらく、鉄フライパンを使う上で一番楽しく、感動的な作業ではないだろうか。
今回のように鉄フライパンを再生する時もだが、新しく買った時にもこの作業を行う。
フライパンを高温にすることで、表面を酸化させ、赤錆が出ないようにする作業だ。詳しい話は、上記に挙げた参考サイトに書いてあるのでここではしないが、ともかくこの「酸化皮膜」というのが玉虫色に輝いて美しいのだ。


焼いた鉄は玉虫色

この作業も、センサー付きのコンロではできないためカセットコンロを使った。
強火に当てていると、だんだんとフライパンの色が変わってくる。最初は一瞬赤錆を思わせるような赤褐色、次いでオレンジ、そして紫〜青へと変化していく。フライパンを傾けて、ふちまでしっかりと焼いて変色させよう。この作業がもう楽しくて仕方ないのだ。汚れを削る作業でかなり疲弊し、握力も持っていかれたが、その苦労も報われるというものだ。この様子はネットで探せばいくらでも写真や動画が出てくるが、ぜひ生で見て、体験してほしい。分かっていても、色が変わっていく様は美しい。

油でコーティングする

フライパンを青くなるまで焼いたら、最後に食用油でコーティングしていく。この作業で、「こびり付かない」鉄フライパンにしていくのだ。
よく、「油をなじませる」「染み込ませる」なんて表現がされるけれど、そこら辺の機序については、最初に挙げた参考YouTube動画をぜひ見てほしい。ざっくりいうと、フライパンの表面に、油絵具(フライパンなので食用油だが)を塗って乾かすことでコーティングするのだ。この膜は、ちょっとやそっとのことでは剥がれないし、焦げつきを防いでくれる。
「くっつかない鉄フライパンは少量の油で使えるし洗剤で洗える」と聞いていたが、フライパンの裏面のひどい汚れを落とした今なら心の底から納得できる。あんなに苦労して落とさなければならない皮膜なのだ。荒っぽい扱いをしたところで、そうそう落ちないだろう。


とにかく美しい

そんなわけで、YouTubeの指南にしたがって、ひまわり油を適量フライパンの両面に塗り、ガスで適度に熱した。薄く塗った油を確実に固化させ、それを重ねていくことで、油でしっかりとコーティングされたフライパンが完成する。
油が乾くまで時間はかかるが、それもそれで「育てている」感覚が楽しい。

フライパンを使うときには

これはフライパンをリセットする前から感じていたことなのだが、どうやら油や食材を投入する前にしっかりと空焚きすることが必要なようだ。目安としては、フライパンから煙が立つくらい。
そして、一度火を止めてから油を入れ、フライパンに回している間に温度を下げる。もっと丁寧な方は、濡れ布巾で冷やしたりするらしい。

正直、鉄フライパンを使い始めた当初から、「熱してから冷ます」ことは知っていた。しかし、どうせ冷ますなら最初からその温度に熱すればいいだけじゃん?温度上げてから冷ますより効率的じゃね?という素人考えで蔑ろにしていた。

しかし、この作業こそが最も大切なのだと今では思う。最初の加熱が足りないと、どんなにたくさん油を入れても焦げ付いてしまう。
かと言って、カンカンに熱したフライパンに食材を投入すると、上手く調理できない。やはり、一度温度を下げることが必要なのだ。
どうやらこの最初に熱する作業には、「吸着水を蒸発させる」役割があるらしい。詳しい話は、ぜひ先述したYouTube動画で見ていただきたい。

そんなわけで4000字を超えたので、この記事は一旦ここまでで。
フライパンは無事使えております!実際の調理する様子はまた後日。

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