見出し画像

大島紬の袷こそ、数を持ってもいいのではないか

暑い暑いと嘆いていたあの日々は何処へやら、朝晩はむしろ寒いとすら思う今日この頃。
普段着物生活を送る上で着物に求める条件として、「自宅で水洗いできる」ことは多くの人が実感していると思う。その反面、お手頃価格で手に入るリサイクル着物には、正絹の袷が非常に多い。

着物生活を始めた頃は、そのようなお手頃価格の正絹の袷を数多く買っていた。しかし、先述した通り、「洗える」ことの必要性を実感し、その多くを手放して、木綿を中心とした普段着にシフトしてきた。
さらに言えば、「夏物」の重要性が一際大きく、襦袢も長着も両方集め続けてきたのがここ2年の動きだ。

そしてここにきて、「正絹の袷」を増やしても良いのではないか?という気持ちになってきている。

正絹の袷と言っても、私が普段着にしているのはもっぱら紬である。さらに言えば、大島紬が圧倒的に多い。
薄くて軽くて程よくハリがあるのに暖かく、圧倒的に着やすい。そして、正絹の光沢感がありながら、絣で柄付けをしているからか、派手になりすぎることもなく、洋服姿の多い街中でも浮きにくい気がするのだ(あくまでも個人の感想ではあるが)。

正絹の、しかも袷の着物の最大の欠点は、とにかく洗えないことだと思う。さらに言えば、木綿などよりもスレに弱い。特に大島紬は圧倒的にスレに弱い。お出かけで歩き回るだけで裾が切れてくる。掃除や洗濯をするような日常使いには向かない。

あと、これは余談だが、大島紬を単衣で仕立てるのは個人的にはあまりおすすめではない。歩いているだけで裾が擦り切れてしまうからだ。移動は車やタクシーで、ほとんど歩かない時にしか着ないのならば良いけれど、私のような一般庶民はそうもいかない。裾が痛んで咽び泣くか、それを恐れて箪笥の肥やしにしてしまうかのどちらかにしてしまう気がする。
その点、袷までにせずとも、裾回しだけでもつけておけば、裾の保護はできるし、一枚では薄すぎるので裏地の安心感は大きい。
もしくは、コートや羽織ならば、着物ほどダメージは少ないから、単衣にしても良いかもしれない。

長々と欠点を書き連ねてしまったが、それではなぜ普段着物生活に向かない大島紬の袷を増やしても良いような気になったのか。その一番の理由は、抗えない魅力に負けたから。

もうこの一言に尽きる。とにかく魅力的なのだ、大島は。薄くて光沢とハリがあって、柔らか物よりも圧倒的に着付けやすいのに、上品さもあって、でも半幅帯の矢の字結びさえ受け入れてしまえる懐の広さ。薄くて軽くて、袷に仕立てても裏地があることが気にならないくらいなのに、しっかり風を通さず防いでくれるから暖かい。とはいえ、薄いから割と着用できる期間も長い。少しおしゃれしたい時やちょっとしたお出かけ、なんなら家で一通り家事を終わらせた後にお茶を飲む時にでも、こういう着物に着替えるとなんだかものすごく幸福感を得られるのだ。
ちなみに私は、仕事に行く時のオフィスカジュアル的な位置付けでも重宝している。

ありがたいことに、現代では素晴らしい大島紬がリサイクルであり得ない低価格で手に入ってしまう。生地が薄いということは、畳んだ状態でも薄くなるということで、それはつまり省スペースで収納できるということでもある。
袷の着物は、季節的にも中にいろいろ着込んでいることが多く、汗汚れがつきにくい。何かをこぼしたとか、アクシデント的な汚れ以外で気になるのは、袖口と衿周り、あとは裾だろうか。気になるときにベンジンで拭いてお手入れをすれば、毎年丸洗いに出さなくたって、十分着続けられると思う。現に、私の手持ちの大島は、毎シーズン着たあとは箪笥に片付けて、虫干しもするかしないかくらいの管理であるが、気になる汚れは今のところ出ていない。

そして、私が大島紬が他の柔らか物よりも優れていると思う点として、多少の雨や水汚れも平気というのがある。ツルッとした生地だからそもそも汚れがつきにくいし、水がついたところで割と弾いてくれる。もしも水が染み込んだとしても、縮緬のように一部が縮んで大変なことになる、なんてことも起こらない。万が一裾に泥はねがついても、軽微なものならば、よく乾かした後にブラシで払い落としてしまえる。ガード加工なんてしなくても、手軽に扱える素材なのだ。こんなに素敵であったかくて使いやすい着物、なんぼあってもええですやん。

長々と書いてしまったわけですが、要するに大島紬買っちゃったよということでした。1年以上悩んだんだから良いよね。良いよね。。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?