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穴に向かって叫ぶ心のデトックス

80代後半男性の奥様

廃用症候群 (過去に腰部脊柱管狭窄症)
介護度2→変更予定
入浴目的のためにデイサービスを週2回で組んだが本人は拒否。
ご自身を取り巻く環境にご不幸事があったらしく、以降生活は衰退。
いわゆる老衰に近い状態が続き、おトイレにも1人で行けないくらい弱る。

奥様が旦那さんを立たせようとするが、自身も腰椎圧迫骨折を患う。

奥様「・・・話を聞いてもらってスッとしました。」


なんの解決にも至っていないが、奥様としてはスッとされたご様子でした。
そんなお話。


旦那さんは自主的にベッドから起き上がることはなく、リハビリタイムにしぶしぶ動かれる。来室日によっては少し小ボケた返答あり。
30年前の仕事の話を現在進行系の形でしてみたり、すぐに帰れる!帰ります!とベッドの上で寝っ転がったまま宣言してみたり、自宅で使っているポータブルトイレの使用をそっちのけでオムツの中で排便してみたり。

リハビリの時間が終わり、奥様をこそっと呼んでお話しタイム。
退院に向けての思いを聞いてみました。


入院前はおつかいに出た隙にトイレに移ろうとして床に倒れそうになっていたこともあって、ハラハラが止まらない。「デイサービスみたいなもん行くか!」と、何かのプライドが邪魔して行こうとしない。結局、訪問看護のときに身体を拭いてもらっていた。
元気にはなってほしいけど、中途半端に立たれるくらいならベッドのままで居てくれた方が心は安心。でも弱ってしまったら介護負担は増えてしまうし。

奥様の言葉の中に、理想と避けられない現実がいったりきたり、
できるだけ聞きに徹しては居ましたが、相当悩んでおられました。

施設に任せたら?という言葉もご友人や知人、またニュースでも見た。
でも実際にこの場に来たら良心が痛む。自分でも姥(おじい?)捨て山じゃないって思ってはいるけど、やっぱりそれは心が拒否する。

最終的には何も話が進展したわけではなかったものの、
奥様は最後に「先生にこんな話を聞いてもらえるとは思わなかった。ありがとうございます。少し気分が晴れました。」
と、少しにこやかなに家路につかれました。

男の私としたら、ついつい解決策を模索し、解決策を「提案」したくなってしまいますが、どうやら奥様には自分の胸のうちをぶちまける「穴」が必要だったようです。

・・・自分がよけいなアドバイスする「穴」でなくてよかった(汗)
と、胸をなでおろしたあの日の夕方。


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