パレスチナ問題 その33:ハマスを壊滅させてよい?

【概要】

NHKでも普通に「イスラエル軍はハマスの壊滅を目指している」と報道しています(参考)。しかし、実は「ハマスを壊滅させてよいのか?」という点についての議論はしっかりなされていません。問題提起してみます。

【ハマスとは】

①ハマスは民兵です。「通常は仕事をしていて、時々仕事を休んで軍事訓練を受けている」というイメージです。この投稿はこちら

②各国政府も各種報道機関も「イスラエル軍はハマスの壊滅を目指している」と平気で口にしています。しかし、ハマスは民兵なのだからハマスが壊滅するということはガザが壊滅することです。

実は認めてはイケナイ行動なのですが、世界中がこの問題を気にしていません。これはイスラエルのプロパガンダが浸透しているからです。

【極悪非道の圧政者?】

①ハマスは戦闘の際にガザの民間人を守ろうとしません。こういう戦法を採用するところを利用して、イスラエルは「ハマスは極悪非道の圧政者」というイメージを定着させようとします。この投稿はこちら

②実際には「ガザでイスラエル軍と戦う」と決めた時点で民間人の保護は放棄せざるを得ません。

こういう戦いを選択するまでにハマスを追い込んでしまったことに問題があります。

③それほどに占領/封鎖/入植が絶望的だったということです。暴力/収奪/抑圧が日常的に繰り広げられていたようです。事実上の緩慢なジェノサイドだったと言えるでしょう。この投稿はこちら

④ガザ市民はハマスの戦いを支持しているそうです。つまりガザ市民は当事者として「占領/封鎖/入植が続いていたら全滅させられていた」と判断していることになります。投稿はこちら

⑤実際にイスラエルはガザを全滅させるやり方をしています。長年続いた占領/封鎖/入植はこういう接し方だったということです。投稿はこちら

⑥イスラエル市民がガザへの入り口で支援物資の搬入を阻止しています。何たる醜悪。政府/軍/国民が「全滅させる」という意志を共有しています。この投稿はこちら

⑦「ガザ市民は非暴力抵抗を選べばよかった」という指摘に対する反論です。

非暴力抵抗を試みたけれど射殺されて終わったし、国際社会はイスラエルを処罰しなかった。これがガザ市民/ハマスにとっての実態でしょう。

2023.10.07のハマスの決起を呼んだのは国際社会の無理解です。国際社会が反省する必要があります。つまり反省すべきは我々であり、このnoteを読んでいるあなたです。この投稿はこちら

⑧因みにですが、イスラエルのプロパガンダに引っ掛かった人は「ハマスはイスラエルの殲滅を目指している」と主張しますが、これは嘘です。ハマスが目指しているのは占領の終結です。この投稿はこちら

【プロパガンダの影響】

①こちらはドイツ大使館の投稿です。「ハマスが武器を置けば戦争が終わる」と主張しています。イスラエルが主張する「ハマスを壊滅させる」という主張を認めています。投稿はこちら

イスラエルが相手を全滅させるやり方をしているのを知りながら「武装放棄して投降しろ」と主張しています。事実上のジェノサイドの容認です。

②日米欧はそろって「イスラエルがハマスを攻撃することは自衛権の範囲内である」という姿勢を見せています。実はこれが間違いです。記事はこちら

③アメリカ政府も日本政府も入植が不法行為であることは認めています。であるならば長年続いた占領も不法行為であることになります。

不法占領ならばハマスには抵抗権があります。ハマスによる10.07の軍事行動のうち軍人に対する行動は抵抗権の範囲内です。民間人に対する行動は戦争犯罪です。

ハマスは「国際刑事裁判所からの逮捕状があれば出頭する」と表明しているそうです。ならばイスラエルは軍事行動を起こす必要がありません。イスラエルは国際刑事裁判所に訴えればよかったわけです。この投稿はこちら

④イスラエル軍の軍事行動により民間人に壊滅的な被害が出ています。これは明確に戦争犯罪です。

ではハマス軍事部門に対するイスラエル軍の攻撃はどうでしょうか。法的正当性があるのでしょうか。実はかなり怪しいです。特にハマスが「国際刑事裁判所からの逮捕状があれば出頭する」と表明したあとの軍事力行使は法的正当性が無いと思います。

イスラエルは「ハマスの壊滅を目指す」と平気で口にしていますし、誰も異を唱えません。しかし実は認めてはイケナイ主張です。

【プロパガンダの発信源①:チャック・シューマー】

①アメリカのユダヤ系政治家であるチャック・シューマー氏の演説を見てみましょう。要約としてこちらのnoteを参考にしてください。

②シューマーがハマスについてどういうイメージで語っているか、ピックアップします。

<ピックアップ>
・ハマスが10月7日にやったことは想像を超える残忍なものだった。

・この紛争の複雑さを理由に、パレスチナ民間人はハマスの罪のために苦しむ資格はない。

・イスラエルには自国を守る基本的な権利があるが、この戦争の当初から述べてきたように、その権利をどのように行使するかが重要である。

・ハマス兵士たちが罪のないガザ人を人間の盾として利用していることは十分に文書化されている。

・ハマスの指導者たちの多くはガザの貧困と不幸から遠く離れた場所で贅沢な生活を送っている。

・ハマスがイスラエルを挑発するために10月7日に攻撃を開始したこと、ハマスがそれに続くガザでの民間人の犠牲を求めたこと、そしてハマスがイスラエル人とアラブ人の双方が互いに睨み合うことを望んでいた

・ハマスはイスラエルの破壊を目的としており、過去数十年にわたり、あらゆる場面で平和への希望を台無しにしてきました。オスロで始まったばかりの和平プロセスを狂わせるために、無実のイスラエル人に対する自爆テロという悪質な作戦を開始したのはハマスだった。

・20年近くにわたってガザを抑圧的で非民主的な統治下に置いてきたのもハマスだ。

・イスラエル人とパレスチナ人の間の溝を埋めようとした勇敢なガザ人たちを標的にしたのはハマスだ。

・即時発効する恒久的な停戦は、ハマスが再結集し、イスラエル民間人に対するさらなる攻撃を開始することを可能にするだけだ。

・ハマスに有意義な権力を残すいかなる提案も、私とほとんどすべてのイスラエル人にとって受け入れられない。

③シューマーは「ハマスは無茶苦茶な悪者であり、ガザ市民の敵でもある。これを壊滅させなければイスラエルの安全を保てない。」と主張しています。

世界中でこのプロパガンダが浸透しているため、イスラエルが「ハマスを壊滅させる」と言っても誰も異を唱えない状況が発生しています。世界が騙されている間にイスラエルはガザを全滅させる攻撃を継続しています。

【プロパガンダの発信源②:飯山あかり】

①2023年11月30日に発行されたNewsweekの記事を見てみましょう(こちら)。

<ピックアップ>
・イスラエルの軍事作戦はハマスのインフラ破壊とハマスに拉致された約240人の人質奪還を目的としている

・ハマスの指導者トップ3であるイスマイル・ハニヤ、ハリド・マシャル、マウサ・モハメド・アブ・マルズークはそろってカタールで優雅に暮らしている。

・対ハマス抗議デモが発生すると、1000人近くの参加者を殴打したり、拘束したりした。このようにガザ住民を暴力で苦しめているのもハマスだ。

・パレスチナ人の病人や子供を「人間の盾」として利用

・ハマスが残存する限り、パレスチナの人々は利用され、搾取され、死に追いやられる。

②2021年05月17日に発行された記事を見てみましょう(こちら)。

<ピックアップ>
・イスラエルを武力攻撃しているのはハマスというイスラム過激派テロ組織であり、一般のパレスチナ人ではない。

・ガザ地区を武力で実効支配するハマスは、ガザの人々のための国際的な支援物資や資金を収奪してテロのインフラを作ったり、幹部が贅沢な暮らしをしたりしていることもよく知られている。

・パレスチナ人のために戦うどころかパレスチナ人を人間の盾として利用し、彼らのための支援を横取りするいわば「貧困ビジネス」で財をなしているのがハマスだ。

・一方ハマスは、武力攻撃によりイスラエルという国家を消滅させることを目標に掲げている。

・イスラエルは900万人の国民を抱える歴とした国家であり、当然、国民と国土を守る自衛権を有している。

【プロパガンダの発信源③:シンベト元長官】

①シンベトという諜報機関の元長官のインタビュー動画です。イスラエルのプロパガンダを喋っています。自分で自分を洗脳しているのでしょうね。投稿はこちら

<ピックアップ>
・ハマスとは共存できない
・オスロ合意が壊れたのはパレスチナ人の問題
・ハマスはイスラエルの存続を認めていない
・パレスチナ人をハマスから離反させることが重要

【まとめ】

「ハマスは極悪非道のテロ組織であり、イスラエルの殲滅を目指しており、ガザ市民の敵でもある。これを壊滅させないとイスラエルは安全を確保できない」という主張は実は嘘であり、イスラエルのプロパガンダです。

軍事行動は必要ありませんし、正当性もありません。捕虜交換に応じて、国際刑事裁判所に10.07の軍事行動の責任者を訴えればよい話です。そして今まで繰り返してきた戦争犯罪を清算し、占領を解除して入植地を返還すれば終わる話です。

イスラエルは民間人の被害を考慮しない軍事力行使を続けながら「ハマス殲滅を目指す」と主張しています。これはガザ市民の抵抗権/自衛権/生存権の否定です。しかし日本政府は「イスラエルの大義を支持する」などと口走り、報道機関はこれを問題視しません。

国民が問題を認識し、声を挙げる必要があります。

【補足1:ハマスの声明】

こちらのnoteでハマス側の声明が説明されています。ハマスが何を主張しているか、ほとんどの日本人が知りません。偏向報道の悪影響です。

②私としては、以下の特徴を指摘したいと思います。
 ・10.07の軍事行動の目的は占領からの脱却であること
 ・オスロ合意が反故にされていること
 ・占領/封鎖の犯罪性を指摘している
 ・帰還権を主張している
 ・国際社会のダブルスタンダードを指摘している
 ・不法占領に対する抵抗権を主張していること

イスラム国と異なり、国際法を意識して発言/行動していることを理解するべきであると思います。

【補足2:ハマスの行動に対する理解ある評価】

①ジュディス・バトラー氏のコメント(こちら)。

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