パレスチナ問題 その32:アメリカのユダヤ系政治家の発言

【概要】

チャック・シューマーというユダヤ系アメリカ人政治家(民主党)の発言が注目されています。ちょっと見てみましょう。投稿はこちら

【立ち位置】

<発言①>
私は自分のためだけでなく、多くの主流派のユダヤ系アメリカ人のために話します。ユダヤ人たちは、サイレントマジョリティであり、その解釈の難しい考え方というのは、ガザ戦争をめぐるこの国の議論でうまく表現されてこなかったのです。

<コメント①>
この演説でシューマーは二国家解決の推進を主張しています。この意見がユダヤ系アメリカ人のサイレント・マジョリティなのだそうです。

逆に言えば、イスラエルに爆弾を供給するようにバイデンを突き上げた政治家達はノイジー・マイノリティだったことになります。

【イスラエル・プロパガンダ】

当然ながら、イスラエル支持者としてのプロパガンダを口にします。停戦を促し二国家解決を支持するユダヤ系アメリカ人政治家の世界観を見る上で参考になると思います。

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<発言①>
イスラエルはパレスチナとの共存を目指している

<コメント①>
ハマスの幹部が歩み寄りを見せるたびにイスラエルはその幹部を暗殺してきました。今までの経緯を振り返るならば、和平を拒んできたのはイスラエルです。

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<発言②>
二千年祈り、待ち続けたユダヤ人の祖国、、、云々

<コメント②>
欧州に暮らしていたユダヤ人の祖先がパレスチナを離れた経緯は不明です。暴力的に土地を奪う行為やパレスチナ人を差別する政策は正当化されません。

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<発言③>
ハマスが10月7日にやったことは想像を超える残忍なものだった、、、云々

<コメント③>
イスラエルは過度にハマスの残虐性を強調するプロパガンダを拡散させました。シューマーもこのプロパガンダを口にしています。

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<発言④>
ガザで多くの民間人の命が失われたことを知り、私の心は張り裂けそうです、、、トーラーが私たちに教えているように、すべての人間の命は貴重であり、イスラエル人であろうとパレスチナ人であろうと、失われた罪のない命はすべて、聖書が言うように「世界全体を破壊する」悲劇です・・・

<コメント④>
この人がどこまで本気で言っているのか、私には判断できません。

今回の出来事に直面して「暴力を止めるべき」と主張したユダヤ人は大勢います。東京でのデモにもユダヤ人は参加していました。

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<発言⑤>
イスラエルには自国を守る基本的な権利があるが、、、、云々

<コメント⑤>
イスラエルは「自衛権がある」と主張しており日本政府も支持していますが、自明ではありません。

個人的には「不法占領状態を解除して入植地を返還した上で人質の解放を求めるべきでしょう。それでもハマスが人質の解放に応じなかったら攻撃してよかった。」と考えています。

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<発言⑥>
ハマスが民間人を人間の盾として、、、云々

<コメント⑥>
イスラエルの軍事力行使の被害の責任をハマスに押し付けるプロパガンダです。状況から言えば「意図的に民間人を狙った」と判断するべきです。

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<発言⑦>
ハマスがそれに続くガザでの民間人の犠牲を求めたこと、そしてハマスがイスラエル人とアラブ人の双方が互いに睨み合うことを望んでいたこと

<コメント⑦>
ハマスがガザ市民の犠牲を考慮しない戦い方をするのは事実ですが、それでもガザ市民はハマスを支持します。占領解除を勝ち取らなければ未来が無いからです。それだけ占領/封鎖が絶望的であったということです。

シューマーの発言はイスラエルによる占領の違法性を誤魔化すためのプロパガンダです。

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<発言⑧>
イスラエルにユダヤ人の祖国があるということは、20世紀に考えられたものではありません。

<コメント⑧>
いつ頃言い出したのでしょうね。私はよく知りません。

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<発言⓽>
ハマスはイスラエルの破壊を目的としており、、、云々。

<コメント⓽>
ハマスは1967年の国境線の内側の占領解除を闘争の目的としています。

シューマーの発言は「ハマスを全滅させる必要がある」と思わせるためのプロパガンダです。このプロパガンダが「ハマスの根絶まで戦闘を続けてよい」との誤解を生み、ジェノサイドへの発展を支えました。

実際にはハマスはガザ市民に支持された民兵集団です。「ハマスを根絶してよい」という主張はガザ市民の自衛権/生存権を否定するジェノサイド思想です。

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<発言⑩>
オスロで始まったばかりの和平プロセスを狂わせるために、無実のイスラエル人に対する自爆テロという悪質な作戦を開始したのはハマスだった。

<コメント⑩>
オスロ合意は隠ぺいして入植を進めるための罠です。

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<発言⑪>
イスラエル人とパレスチナ人の間の溝を埋めようとした勇敢なガザ人たちを標的にしたのはハマスだ。

<コメント⑪>
「イスラエルは平和を望んでいた。争いの継続を望んだのはハマスだ。」と見せるためのプロパガンダです。

実際には封鎖/占領/入植自体が暴力的/非人間的であり、緩慢なジェノサイドでした。

偽りの和平に応じたファタハの支配下において、パレスチナ人は絶望的な抑圧を強いられています。ハマスは占領と戦う姿勢を示しています。

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<発言⑫>
即時発効する恒久的な停戦は、ハマスが再結集し、イスラエル民間人に対するさらなる攻撃を開始することを可能にするだけだ。。

<コメント⑫>
ハマスを「対話不可能な狂信者」に見せるプロパガンダである。

イスラエルがハマスを根絶するまで軍事力を行使することを容認するなら、ガザは全滅するでしょう。

【一国家解決の拒否】

<発言①>
この統合国家は政治的に極端な方向転換をし、ユダヤ系イスラエル人を危険にさらす可能性がある。

<コメント①>
イスラエルとパレスチナを統合して一つの国にした場合、ユダヤ人が少数派になるので将来迫害される可能性が残る、、、という話のようです。

【民族浄化完遂への牽制】

<発言①>
イスラエルによって支配される単一国家は、確実な戦争を永久に保証し、その将来が危険にさらされるほどの世界のユダヤ人コミュニティのさらなる孤立を保証するということである。

<コメント①>
民族浄化をやり切ってしまえば、イスラエルに対する評価はナチスと同等なものとなります。サイレント・マジョリティのユダヤ系アメリカ人は国際世論の動向に注意を払っています。日本で「Stop Genocide」の声を挙げることには意味があります。

【シューマーの問題意識】

二国家解決を進めるために、シューマーは4つの問題点を克服することを提案しています。

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<発言①>
ハマスに有意義な権力を残すいかなる提案も、私とほとんどすべてのイスラエル人にとって受け入れられない。

<コメント①>
ハマスに対する責任転嫁でしょう。イスラエルとパレスチナの間に和平が成立しなかったのは、ハマスが狂信的な暴力集団であったからではありません。イスラエルが入植地を返還してパレスチナを国家承認すればよかっただけの話です。

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<発言②>
平和に対する2番目の大きな障害は、政府や社会に過激な右翼イスラエル人がいることです。この急進主義の最悪の例は、ベザレル・スモトリヒ財務大臣とイタマール・ベン・グヴィル国家安全保障省大臣である。・・・スモトリヒ大臣とベン・グヴィル大臣は、パレスチナ人全員を完全に殺害したいとは言っていないかもしれないが、パレスチナ人を故郷から追放し、イスラエル人入植者と置き換えたいという願望があるのは明らかだ。これも忌まわしいことだ。この二人が権力の座にある限り、平和の達成は不可能ではないにしても、困難になるだろう。

<コメント②>
過激な右翼イスラエル人の主張はジェノサイド思想です。

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<発言③>
和平に対する3番目の大きな障害は、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領であり、彼は狭い政治的利益に囚われており、ヨルダン川西岸とガザの両方に不利益をもたらしている。・・・パレスチナ自治政府は依然として腐敗しており、殉教者支払い制度を通じて不安定を煽り続けている。パレスチナ人は、アッバス氏が最初に政権を握ったときと比べて、繁栄も安全も自由もなくなった。その結果、アッバス大統領はパレスチナ国民の信頼を失った。・・・将来に和平の希望があるためには、アッバス首相が辞任し、ユダヤ国家との和平達成に向けて努力する新世代のパレスチナ指導者が後任を務める必要がある。

<コメント③>
ファタハはイスラエルの傀儡だそうですね。

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<発言④>
和平への4番目の大きな障害はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相であり、ネタニヤフ首相はスモトリヒ大臣やベン・グヴィル大臣などの過激派やヨルダン川西岸の入植者の要求に度々屈してきた。・・・ガザ地区での民間人の犠牲者を容認するあまり、世界中でイスラエルへの支持を歴史的低水準に押し上げている。イスラエルはのけ者になれば生き残れません。・・・暴力の連鎖を断ち切り、世界舞台でイスラエルの信頼を守り、二国家解決に向けて努力するためにやるべきことをネタニヤフ首相が行うことを期待する人はいない。

<コメント④>
ネタニヤフは二国家解決を進める気はないですし、ガザの民間人の犠牲を考慮していません。ネタニヤフ政権は倒すべきです。

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<発言④>
和平への4番目の大きな障害はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相であり、ネタニヤフ首相はスモトリヒ大臣やベン・グヴィル大臣などの過激派やヨルダン川西岸の入植者の要求に度々屈してきた。・・・ガザ地区での民間人の犠牲者を容認するあまり、世界中でイスラエルへの支持を歴史的低水準に押し上げている。イスラエルはのけ者になれば生き残れません。・・・暴力の連鎖を断ち切り、世界舞台でイスラエルの信頼を守り、二国家解決に向けて努力するためにやるべきことをネタニヤフ首相が行うことを期待する人はいない。

<コメント④>
シューマーは二国家解決を支持しており、二国家解決を推進しないイスラエルの政治家へ退場を促しています。そして国際世論の動向に注意を向けています。日本でデモをすることには意味があります。

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【シューマーの提案】

<発言①>
サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダン、その他のアラブ主流諸国のような中東の大国は、パレスチナ人に対して計り知れない権力と影響力を持つことができる。米国と協力して、テロと暴力を拒否する新たな非武装化パレスチナ国家を支援するために、影響力、資金、外交を責任を持って展開しなければならない。

<コメント①>
シューマーのイメージする将来像は非武装化パレスチナ国家なのですね。イスラエル軍による占領を解除して国連軍が駐留するようなイメージですかね。

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<発言②>
非常に多くのイスラエル人が政府のビジョンと方向性に自信を失っているこの重大な局面において、私は新たな選挙がイスラエルの将来について健全でオープンな意思決定プロセスを可能にする唯一の方法であると信じています。

<コメント②>
イスラエル国民に対して「選挙を行ってネタニヤフを退陣させろ」と主張しています。

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