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こんなときだから〜自粛警察に送る一冊:伊坂幸太郎「ルックスライク(短編集「アイネクライネナハトムジーク」所収

理不尽なクレームや言いがかりをする人に対して、真正面から批判したり是正を促しても埒が明かない。
かえって怒りを増すだけ。

そんな時に有効かもしれないひとつの方法が この短編に描かれていました。 

名付けて『この子がどなたの娘かご存知ですか』作戦。

ファミレスで、注文が違うじゃないか!とアルバイトの女性にねちねちと文句をいう高齢男性がいた。

その様子を見かねた、ある男子大学生が『この子がどなたの娘かご存知ですか』作戦を仕掛ける。

「あのぉ」
「こちらの方がどなたの娘さんかご存知の上で、そういう風に言ってらっしゃるんですか?」

「あの人の娘さんにそんな風に強く言うなんて、命知らずだな、と思いまして」 「誰の娘かも知らずに,怒っているのだとしたら、あなたがちょっと心配になっちゃいまして、誰が見ているか分かりませんし」

「あたしも関わりたくないので、ここで退散しますけれど、あの、お嬢さん、わたしのことはお父さんには言わないでくださいね」


この短編「ルックスライク」にはこんなセリフも出てきます。

「正義とかそういうものって曖昧で、危ないものなんだから」
「自分が正しい、と思い始めてきたら、自分を心配しろ、って」
「相手の間違いを正すときこそ、言葉を選べ、って」


なんで俺だけが…

なんでお前が…

みんな我慢しているのに…

多くが<団結>という名のもとにひとつの方向に向かっていこうとしている時の正義って、

なんだか厄介。

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