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マイ・ライフ・サイエンス(15)「空気を読む」

 空気を読むといっても、周囲の人たちの共通項についてのお話ではなく。空気そのものとは何かを考えるという意味です。
 数日前、世田谷から湘南・片瀬海岸に引越しました。これまでは、日課として下北沢のカフェで朝カフェを楽しんでいたのですが、引越したここはビーチまで徒歩1分で、朝カフェは近くのコンビニで100円コーヒーを買って早朝のビーチで楽しむようになりました。ほぼ毎日、早朝のビーチで穏やかな海を眺めながら朝カフェしていると、世田谷とは異なる空気を感じ始めました。環境が変わり海が目の前ということもあり、心理的に空気が違うとしているのかなと最初は考えましたが、よくよく考えると空気の成分の違いではないかとふと考えつきました。空気の成分は約78%が窒素で約21%が酸素。残り1%は様々な微量の気体だと理科のお勉強で教えてもらったはずですが、その土地土地の風土で特徴があるに違いありません。山奥の木々が豊かな山間部では大気中の塵などがない新鮮な酸素が濃いでしょうし、このビーチではきっと塩化ナトリウムが大量に舞っているに違いありません。魚介類の死骸の炭素も大量でしょうし、砂は酸化アルミニウム、つまりルビーやサファイアの元が大量に舞っているはずです。
 一日の呼吸回数を30,000回とすると、一回の呼吸量を0.5リットルとして、一日あたり15,000リットルもの空気を私たちは吸っています。すると、年間約550万リットル、10年で5,500万リットル…80年生きたとして約4億4千万リットルもの量の呼吸をすることになります。
 こう考えると、窒素と酸素以外のわずか1%の成分の一部であっても、私たちはかなりの量のその他の物質(気体等)を肺に送り込んでいるわけですね。
 やがて、約60兆個もある私の細胞にも、こうした土地なりの空気成分がきっと何らかの影響をもたらすのではないかと思われます。
 さらに、空気の、季節による温度変化や流れ方も重要になるかもしれませんし、歴史の視点で考えると石炭を燃やし道をアスファルトに変化させた近代化以後と以前の空気の違いもまたあるかと思います。
 ここまでは、土地ごとの空気の成分の違いについて綴ってきましたが、空気から伝わる振動(波や自動車や紛争地の銃砲等)もまたそうした空気の違いを作っているのかもしれません。
 引っ越しをして典型的な街である東京・世田谷区から海辺の湘南・片瀬海岸の空気を吸うことになり、私の身体の細胞が日々微妙に変化を遂げるのかと思うと、新たな実験をしているようで、何故か楽しくなっています。中嶋雷太

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