見出し画像

ワードローブの森の中から(13)「カラーキーパー(カラーステイ)」

 ここに掲載した写真は何かというと、左は「カラーキーパー」もしくは「カラーステイ」というもので、右のシャツはブルックス・ブラザーズの定番のボタンダウン・シャツです。
 さて、仕事やちよっとしたオフィシャルな場では、ブルックス・ブラザーズの綿100%の白シャツばかりの人生を歩んできました。基本はもちろんボタンダウンの白シャツですが、ジャケットによりボタンダウンではなく普通の衿のものを着用してきました。このボタンダウンについては第2話で綴っていますので、ぜひお読みください(https://note.com/righta/n/ne18135b4070c)。
 普通の衿の白シャツの場合はネクタイを締めるのが大前提で、ジャケットのタイプとネクタイに合わせて、衿の長さを変えます。ちなみに、普通の衿の白シャツを着ているのにネクタイを締めないのは、あまりにも怠惰に見えてしまいます。
 そして、この場合、とても大切なのが、衿元だと思っています。衿に皺がよっていたり、しっかり立っていないと、それだけでネクタイ姿がだらしなく見えます。白シャツにアイロンがけするときも、最後の最後に、この衿にしっかりプレスをかけ、アイロンがけを終えて畳むと、最後の作業として、その衿の形状(長い浅いや広い狭い等)にあったカラーキーパー(カラーステイとも呼ばれます)を差し込みます。
 ブルックス・ブラザーズで白シャツを買うと最初からカラーキーパーが衿に差し込まれていますが、洗濯をする時にはそれを取って洗濯するので、たまに紛失したり、経年劣化したりします。さらに、カラーキーパーを取るのを忘れてクリーニング店に出してしまうと、カラーキーパーを入れたまま洗われアイロンプレスされるので、ひどい時には、衿の中のカラーキーパーの形が衿に浮き出たり、少し溶けていたりします。
 ということで、替えになるカラーキーパーを探していたところ、私がL.A.在住時によく通ったブルックス・ブラザーズの店員さんから教えてもらったのが、写真にあるカラーキーパーです。長さ10センチほどの強化ガラスの筒に、長さが三種類入ったカラーキーパーが入っていて、値段も8ドル弱で販売されていました。それ以来、いくつかのカラーキーパー筒を購入し、いま手元には二つ残っています。
 春から晩秋にかけて気温の高い日々が続き、ネクタイを締めるのは10月から3月の半年ほどになり、そして、私が会社勤めをやめ自営となったので、カラーキーパーの出番はかなり無くなってきましたが、ジャケットを着てネクタイを締めるとなると、やはりカラーキーパーは目立たぬものの、とても大切なファッションの要となります。
 これまでの私の観察では、衿に興味がない人がとても多く、見た目だけですが、人生に疲れ覇気がないように見えます。「衿を正す」とはよく言ったものだと思います。
 日常生活の中で、何でもないものが、実はとても大切な「点」として息づいていることが多々あります。磨かれたコップ、取り替えられ清潔なキッチンの排水溝の網、埃のないPCのキーボード……。私のワードローブの森のなかで、カラーキーパーはその「点」になっているようです。 中嶋雷太

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?