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ワードローブの森の中から(37)「風俗史のなかのマスク」

 2020年3月18日、薬局には開店前から行列ができ、マスクが即完売となっていました。いわゆる新型コロ●の第1波で、人々は戦々恐々とし、ある種の社会的混乱の渦に揉まれていたようです。スーパーに行くと、納豆とヨーグルトの棚が空っぽになり驚いたのも記憶に新しいところです。人心の恐怖を煽ることで、マスクを徹底させようという政府やマスメディア、そしてそれに踊らされたSNS利用者の発言で、社会不安は一気に拡大したようです。まるで、怖がれば、新型コロ●・ウィルスがいなくなるような錯覚さえあったような気がしています。
 個人的には、マスクが無ければ自分で作れば良いと、手芸店のユザワヤに行き、端切れ布を買って10数枚、自分の好みのマスクを作りましたが、テレビでは医療用のマスクが一番良いなどと強く主張するものだから、人は益々恐怖の渦のなかに落ちて入ったと思います。納豆やヨーグルトが新型コロ●に有効だとも伝えていたのですが、何年も前から食習慣として摂っていたなら有効でしょうが、昨日今日、いますぐ食に取り入れてもどうだろうかと、頭をかしげていました。きっとまともに考える余裕がなかったのでしょう。
 個人的な感想ばかりですが、2023年2月のいまになっても、細菌とウィルスの違いさえ、多くの方が理解していないのではと、思っています。
 さて、マスクです。
 新型コロナ●が世界パンデミックになるまでは、マスクは白色と考えていました。韓流ブーム以降、韓国で使われていた黒色のマスクもちらほらと街中で見られましたが、黒色のマスクで口を覆うことにかなりの抵抗感があり、わざわざ黒色のマスクをすることはありませんでした。風俗価値とは頑強なものです。
 ところが、外でマスクをすることが求められるようになり、品薄になると、手作りマスクで色々な柄の端切れ布を使って作り始め、色や柄はなんでも良いじゃないかと、私のマスク感は見事に変わっていきました。虎柄のマスク(タイガーマスク)を作ったのは、シャレ過ぎでしたが。やがて、マスク製造業者が様々な形状や色や柄のマスクを売り出し始め、私のマスク感はさらに変わりました。
 現在は不織布の立体的なマスクを使っており、五色を揃えて、その日の服装に合わせてマスクを選び楽しんでいます。ほぼ、ファッションの一つとしてマスクが定着した感があります。
 新型コロ●禍が収束しても、この3年ほどで変わったマスク感はしっかり定着し、インフルエンザの季節になれば、色々なマスクを楽しむと思います。
 疾病が風俗を大きく変えるという経験、そして人心が理性的な判断を捨てて混乱をきたすという経験もまた、新型コロ●がもたらした象徴的なものだったはずです。良し悪しを横に置き、この経験ができたことは、風俗史に興味があるわたしとしては、貴重でした。
 こうして、私のワードローブには、常時、様々なマスクがストックされるようになったわけです。中嶋雷太
 

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