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プレ・プロダクション・ノオト(11)

今回は、脚本まわりの話。これまで出会った映画の先生は数限りない。もちろん実際に出会ってはおらずテレビや本を通じての先生……例えば淀川長治さんや蓮實重彦さんなども数多くいる。体験的な脚本論を教えてくれた素敵な先生は、「狼たちの午後」の脚本でアカデミー賞を受賞し、後日アカデミー協会会長になられた故フランク・ピアソンさんだった。(写真中央/右隣はガニス元会長)十数年前、東京の新丸ビルで開催したアカデミー賞衣装展の為来日してもらい、東京浅草や京都祇園で彼の話を食い入るように楽しみ聴かせてもらった。しかし、お互いよく呑んだ。それは、まるで夢を見るように膨よかなものだった。脚本の技術的な書き方ではなく、良い映画を作るために脚本(家)が為すべきことと言えば良いだろうか。「狼たちの午後」の撮影現場でのアル・パチーノとの演技論の話、特に目の演技の話も面白かった。そして、あれから十数年たち、N.Y.シネマトグラフィー賞で、私が最優秀脚本家賞(『Kay』で鯨岡監督と共同脚本)を受賞するとは思いもしなかった。日本語ではなく英語訳した脚本の評価は、本当に驚きだった。今は亡きピアソンさんに報告できないのは残念だが、彼から学んだ「劇的な発話」とは何かを、今でもお守りのように握り締めている。
中嶋雷太 https://note.com/righta

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