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ワードローブの森の中から(34)「モコモコのフリース」

 ユニクロの商品を初めて買ったのは、1990年代初頭。私が東京・国立市に住んでいたころです。日野市の方に安くて面白いお店があるよという噂を聞き訪れると、市場価格よりも安く、そしてデザインもシンプルで機能的に良さそうな商品が並ぶお店で、一目で気に入り、月に一度は訪れてはあれこれ買っていました。やがて、ユニクロは誰もが知るファスト・ファッション・チェーンとなりましたが、なんと言っても、モコモコのフリースが店頭に並んだ時は、思わずオーと叫びました。
 そして、この10年ほどは、冬場になると、各種メーカーもモコモコフリースを展開し始めたので、モコモコフリース文化が一気に華開き、色やデザインも多様になり、あれこれ買い揃えてきました。
 写真は、数年前の真冬2月の津軽鉄道に乗る私で、この時ほどモコモコフリースの良さを感じたことはありませんでした。モコモコじゃないフリースと比べ、モコモコ部分で体温が保たれるので、この上からダウン・コートを着れば、防寒は完璧です。
 モコモコにするためには、フリース地の加工技術がなければ難しいのだと分かりつつも、何故これまでなかったのかとも思いました。さらに、防寒研究上、こうしたモコモコしたものこそ身体の熱を内側に保てるのだという考えが、何故一般的ではなかったのかと不思議になりました。確か、イヌイットの防寒着は、カリブーの毛を内側にして仕立てるという話を聞いたことがあります。何百年何千年ものイヌイットの衣服の「知」に、2000年代に入ってようやく気づいたのかもしれませんね。アホですね。とはいえ、たまにモコモコフリースの内側はそんなにモコモコしていないので、上からダウンコートが必要ですが。
 あと、モコモコフリースの良さは、まさにモコモコしているところで、モコモコしているものを身につけると、心が和みます。まるで、モコモコ猫になった気分になります。
 さて、東京では、最高気温が10度を切らないとモコモコフリースは暑く、昼間はダウンコートの前をはだけて着ることがしばしばあります。ま、寒いよりは温かい方が良いので、冬の必需品には変わりませんが。
 実直に、しっかり知らないことを知ろうとすることから、始めたいですね。中嶋雷太

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