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ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(22):「ビーサンの道は恋愛なのだ」

 いま持っているビーサンの数を数えると15足ありました。数十年の私の人生をつむじ風のように過ぎ去っていったビーサンを数えれば、100足は下らないだろうと確信しています。その多くが、残念ながら私の足には合わず、私の下駄箱から去っていった数です。鼻緒が擦れて痛くなったり、足底が硬すぎて豆ができたり…等々、店頭で試し履きをし「これならば」と購入し、履き始めは良いのですが、しばらく経つとビーサンとの相性が分かってくるもので、失恋のようでもあり、ビーサンとの出逢いと別れは世の中を知らない若造が片思いする恋愛と同じなのかもしれません。
 ところが、苦節数十年、私のビーサン恋愛観はふくよかに育ち目が肥えたせいか、ほぼほぼ納得できるビーサンが三種類現れました。念願の愛が成就したような、心晴れ晴れとした気分です。
 一つはadidasの底が柔らかなもの。数年前の梅雨明け前に下田へ行ったときビーサンを忘れたのを思い出し、下田駅近くの東急ストア一階に入っている靴屋さんでバーゲンセールだったのを急遽購入したのですが、それがなんとピタリと合いました。それ以来何年も履き続け今やかなりくたばりましたが、燻し銀の老兵のようなビーサンとなりました。
 次は、葉山や逗子に何店舗かある、げんべい商店のビーサンです。カチッと作られているビーサンですが、中敷きというか本底というか、底の色と鼻緒の色の組み合わせが色々あり、ビジュアル的に楽しめます。履き心地はカチッとしていて、浜辺遊びでは大満足の一品です。ビーサンにも色々ありますが、このげんべいのビーサンは昭和のゴム草履の臭いが残っています。
 そして、いま一番お気に入りなのが沖縄の島ぞうりです。沖縄には何度も旅行しているので私の視界には島ぞうりの姿が視界に入っていたはずです。島ぞうりという言葉も含めてなんとなく見覚えはありましたが、手にすることもなく時が過ぎ去っていました。そんなある日のこと、ZOZOTOWNをあれこれ流し見していると、島ぞうりがポンと現れました。ビーサンで検索していたのかもしれません。デザインはとてもシンプルで、底と鼻緒の色の組み合わせも色々あり、さらに価格もリーズナブルだったので試しに購入したところ、島ぞうりにのめり込みました。
 オリオンビールの公式サイトによれば…「亜熱帯の沖縄地方では、昔からヤシやアダンの葉などで編まれた草履(ぞうり)が日常的な履き物でした。時が流れ、戦後~1950年代頃になると、がれきなどから足を守るため、廃棄された米軍車両のタイヤを再利用し、ゴム製の草履を製造するようになり、1960年代頃には沖縄県内での流通が盛んになりました。これが島ぞうりの原型といわれています(諸説あり)。」とされていて、「一般的なビーチサンダルと大きな違いはありませんが、島ぞうりは鼻緒と底が同色で、足の裏が当たる面が白色のものが多いようです。昔は赤・青・黄色が定番色でしたが、近年では、オレンジ・ピンク・紫など色どりも豊かになり、プリントや彫刻デザインを施したオリジナリティーのある島ぞうりも登場。お土産や贈り物としても人気が高まっています。」さらに「島ぞうりの大きなポイントはその履き心地にあります。厚めでクッション性があり、鼻緒の部分が当たる足の親指と人差し指の間が痛くなりにくいといわれていて、履き心地の良さに驚く観光客も多いようです。」とのことでした。
 島ぞうりを巡る戦後史はとても興味深く、「米軍車両のタイヤを再利用し、ゴム製の草履を製造」していた頃の沖縄の資料をいつの日か調べたいと思っています。そこにはきっと沖縄の人たちの汗や涙があるはずです。
 この島ぞうりですが神戸の長田町で作られていたようですが、私が持っている島ぞうりは沖縄月星株式会社のもので、原産はインドネシアとのことです。中嶋雷太

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