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悲しきガストロノームの夢想(42)「カレー!カレー!カレー!カレー!」

 カレーライスが好きなのは人間としては至極当然なことで、わざわざカレーライスについて語るのは、いささか恥ずかしくも感じる今日この頃です。語ると言っても、本当は美味いか不味いか怪しいお店の話をキャーキャーと語る気もなく、かと言って「お母さんが作ってくれたカレーライスが一番だ」という感傷に浸りたいがゆえの思い出語りも、なんだかなぁと思っています。
 とは言え、カレーライスが好きです。私が子供の頃に母が作ってくれたカレーライスは、いわゆるお母さんカレーというやつで、今から考えると、いつも腹を空かしていた餓鬼でしたから、味覚というよりもガツガツ食べることが先行していたはずです。あのカレーの香りがさらに食欲をそそるわけですがら、餓鬼だった私はガツガツと胃袋を打ち震わせながら、カレーライスという食べ物に興奮していたはずです。。味については、まぁまぁだったはずで、お母さんカレーについては、感傷に浸りたいとき用に取っておきます。
 さて、数十年生きていて、「これは美味い!」と思った最初のカレーは、東京麹町のインド料理店アジャンタのキーマ・カレーでした。20歳後半の頃、私の職場が千代田区一番町にあり、月に数回はアジャンタでランチを楽しんでいました。当時は日本テレビが真ん前にあり、テレビ業界の方々の姿も多かったかと思います。キーマ・カレーにテーブルに置かれているアチャール(激辛の玉葱の漬物)をお皿ご飯の上に乗せ、サイドにはラッサム・スープ(ニンニクと赤唐辛子が効いた南インドの激辛スープ)。このスタイルの食に出会ったとき、私は美味を発見した喜びに打ち震えました。
 その頃住んでいたのが国立市で、休日にカレーが食べたくなると、駅前近くの路地にあるロージナ茶房でザイカレーを楽しんでいました。激辛のカレーですが、心地良い酸味が食欲中枢を刺激してくれる一品です。注文すれば数分後に出てくるのも嬉しい限りで、近くにある一橋大学の学生の為なのかご飯も大盛りになっているのが嬉しいカレーです。
 ロサンゼルス駐在から帰国し下北沢近くに引越して出会ったのがSAMAのカレーでした。本店は北海道札幌にあるスープカレーのお店ですが、ココナッツ・スープで食べるシーフード・カレーを一度食べ、私は虜になりました。数年前に火事で閉店していたのが昨年秋に別店舗で再開となるや、いそいそと出かけたのは言うまでもありません。
 築地のカレー屋さん「一体感」に初めて行ったのは、劇団新感線の『薔薇とサムライ2』の観劇後でした。新橋演舞場で観劇し、ぶらりぶらりと築地場外で何か食べようと足を運んでいたときに、「一体感」というカレー屋さんが土鍋ご飯を一人一人に炊いて提供してくれるのを知り、駆け込むように入店しました。カレーの話を綴っていますが、外食で重要なのは、ご飯の炊き方であるのは言うまでもありません。これについては一冊の本になるぐらい語りたいので、ここでは収めておきますが、「一体感」ではお米の種類を選び注文するや、一人一人に土鍋でご飯を炊いてくれます。そして、もちろんカレーも辛口で美味しく頂きました。
 まだまだ語り足りないのですが、今回はあと一つ、CoCo壱番屋のシーフード・カレーを上げさせて頂きます。チェーン店ですが、味がブレないところがなんと言っても高評価に値します。オーナー変われど、この路線を走り続けて欲しいと願うばかりです。もちろん、ご飯もちゃんと炊けています。
 最後になりますが、たまにカレーが嫌いという方がいらっしゃいます。カレーではなく、カレーの要素について質問すると、辛いからではなく、ウコンの香りが嫌いでもなく、ご飯に何かを混ぜて食べるのも嫌いではないというのが、大半の回答です。恐らく、心理的な何かがカレー嫌いにさせているのではないかと想像しています。中嶋雷太

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