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ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(21):「新しいウェットスーツ」

 小学校に入学し新しい教科書をもらったときや入学式用の新しい服や筆記具を買ってもらったときの感激は今でも忘れられません。なんでも、人生の岐路のようなタイミングで心待ちにした新しいモノを手にすると、心がワクワクするものです。
 今朝、午前8時過ぎのこと。爆睡していると、玄関でピンポーンと鳴り響き、慌てて起き上がるや玄関モニターを確認すると、宅配便の方が大きな箱を抱えておられました。ドアを開け荷物を受け取りそそくさと箱を開けると、注文していた今夏用のウェットスーツ(オニール)が梱包されていました。
 わがままな私は、「朝早くに、まったく!」と失礼にも思っていましたが、新しいウェットスーツを手に取るや、眠たさなど吹き飛んでいて気分は爽快になっていました。人間とは卑しいものです。
 一年落ちでバーゲン品だったけれど、見た目で格好つける気はさらさらなく、波とただただ戯れたい私にとってはこのバーゲン品で充分なのです。
 先日購入したリップカールのショートスリーブのウェットスーツと並べて書棚に架けると、我が書斎には梅雨を飛び越し真夏の雰囲気が漂いはじめました。書棚に転がしてあるセックスワックスのココナッツの香りも手伝って、PC仕事をしていても落ち着きを失った私は気分が上がり続けています。
 「波とただただ戯れたい」私は、とっても静かに波打ち際までスーッと波に乗るのが好きで、オリンピック競技のサーフィンの世界とはまったく別物のサーフィンです。私には何人かのサーフィンの師匠がいますが、鵠沼に住んでいるその一人、NT氏から、昔老いたサーファーがいて、物静かに波に乗り波打ち際まで丁寧に波に乗られていたという話を聴いたことがあります。その話を聴いたとき、「はぁ、良いなぁ」と心深く感嘆しつつ、酔いも手伝いながらその情景を思い描いていました。
 そして、気づけば私も若造ではなくなっていて、そのとき思い描いた老いたサーファーを目指せる年齢になっていました。
 ウェットスーツのゴムの香りやセックスワックスのココナッツの香りが漂う書斎で、夏が来るのを待ち遠しい私は、まるで小学校に入学する前の子供のようです。
 目の前の湘南・片瀬海岸の海水温も20度を超えてきたので、そろそろ出番だなと、ワクワクする梅雨入り前の日々なのです。中嶋雷太

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