見出し画像

私は紛れもなく、今、世界が変わったと思った。

当日は、文句ないほどの快晴だった。

雲に邪魔される心配など1㎜もなく、彼らは堂々と輝いていた。寄り添って。



2020年12月22日の木星と土星の大接近を、私は自宅アパートの南の大窓から見つめていた。

肉眼でもはっきりと見える。重なりはしていないものの、2か月前に初めて見た彼らの距離からすれば、今日の位置関係は抱き合っているも同然だった。

あぁ今日から世界が変わるのだと、私も生まれ変わらなければいけないのだと、焼けつくようなヒリヒリした思いで胸が痛かった。

同時に、距離の不思議も感じていた。

スピリチュアル業界は木星と土星の大接近で沸いていたが、実際のところ木星と土星の距離というのは果てしないと形容できるほどの開きがある。

それが、見る位置を変えるだけで「大接近」に変わるのだ。それも抱き合っているかのように見えるほどの。

距離って何なんだと思った。

近くても遠く、遠くても一番近くにある輝き。

何かその思考自体がすでに風の時代を象徴しているようで、冷たい空気で顔を冷やし切った私はほとんど動かない頬のまま、ふっと笑った。


22日を過ぎたら世界が変わる。

しかしそれはもちろんはっきりと目に見える形で変化がわかるものではない。昨日と変わらぬ我が家、ルーティーンワーク。穏やかな日常。穏やかであるがゆえに、ともすれば負のスパイラルに陥らないとも限らない、ギリギリの綱渡りの日常。

気を抜くと「負」の側面が襲ってくるのは、私の中に潜む劣等感が、いつでも私を食い尽くそうと狙っているからだ。穏やかなのを幸いと、忍び足でやってくる。

私の背後にピタリとつく。私が気配に気づく。その瞬間、咆哮を上げ、振り向く間もなく襲い掛かる。

真正面から応戦する。もしくは逃げる。しかしいつも、応戦しては負け、逃げてはつかまる。

運よく罠に嵌め、檻に閉じ込めたとしても。

安心できる日はない。ヤツは、いつの間にかその檻を粉々に打ち砕き、再び私の背後に居る。

そのやり方ではダメなのだ。もう、そのやり方を変える時なのだ。


私は化け物を見た。

恐る恐る、見た。

じっと見た。

初めて、こんなにもしっかりと、見た。


ヤツは私の顔をしていた。


私は私に、傷つけられていた。

私は私を、傷つけていた。

私は私から逃げたのだし、

私は私を檻に閉じ込めていた。


何をしているんだろう?一体。

こんなにも不毛なことがあるだろうか。


なぜ私は否定するんだろう。拒否するんだろう。

思うとおりにいかない現実を。自分自身を。

私がとった行動、今回の場合では「中丸氏の有料ブログにお便りをだす」に対して「読まれたい」という望みがある。

望みを持つこと自体は問題ない。

それが現実化しないことに対して、「現実化するべきなのに、おかしい」という思考に陥ることを止めなければならない。というより、止めたい。

「違う現実を求める」ことはなぜ起こるのか。それは自分で自分を「満たされていない」と感じているから。

「足りない」ものを求めて、求めて、求めてばかりいるから。

それさえあれば完璧なのに!という思考に囚われている。

でも本当に?

それを手に入れさえすればあなたは幸せになれる?

「足りないのはそれだけ?」

足りないものは何?

いや、そもそも、

「本当に足りていないの?あなたは満たされていないの?」


目をつむると、まぶたの裏に木星と土星が浮かび上がった。

最接近しているだけに、いつもにも増して輝いていた。

奇跡だよな……200年に1度の日にこうやって雲一つない空に彼らを見られるなんて。

奇跡?

2020年2月28日?

いや、もっと前だ、もっと前に最大の奇跡があったはずだ。


”あの台風の日を”

そうだ。あの日……

2019年10月、関東を襲った超巨大台風。家が揺れ、停電になり、河川の氾濫警報が鳴り響き、持病のパニック発作が起こり地獄の中にいた私が震える手ですがるように見たYouTubeのひとつの動画。

なんでKAT-TUNだったのか。今ならわかる。

しかし当時はなぜかわからないまま、それでもトップにきていたひとつをクリックし、歌い踊る3人を見た。

あの瞬間に、私は地獄から上へ引き上げられたのだ。

それは『DANGER』という楽曲だった。

サビの振り付けの顔の前にかざす手。

中丸雄一氏のそのあまりにもきれいで魅力的な手に釘付けになった。

衝撃的だった。それがすべての始まりだった。

私はその手に、引き上げてもらったのだ。


そうだ、だからーー


いつだって、台風の日を思い出せ。そこには感謝しかないはずだ。


感謝しかないんだ、そもそも。

それ以外あるはずもないのに。

あの日あの瞬間が無ければ私は今ここにいない。

あの台風の日、救急搬送されずに済んだのは紛れもなくKAT-TUNの、中丸さんのおかげなのだ。

そうだ、そうなんだ。私は一番大切なことを忘れていた。


その時、対峙する化け物である自分の目の奥が揺れた気がした。

化け物の振り上げていた手がゆっくりとおろされた。

あのキリッと寒い天体観測の夜ではなかった。


私は紛れもなく、今、世界が変わったと思った。



続く。・・・・・かな?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?