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お母さんの被災事情
今日は被災されているお母さんの家の土壁が落ちそうだということで
壁を補修してきた。
その地区は川の近くで地盤が緩く、ほとんどの家が赤紙判定(応急危険度判
定でいつ倒壊してもおかしく無い貼り紙)がされている地区だった。
お母さんの家はその中では被害は少ない方だった。
それでも2階の床が斜めになっていたり、柱は曲がっていたりする。
被災してすぐはお母さんも避難所で暮らすことに。
けれど、お母さんに待っていたのは安心できる暮らしではなかった。
避難所には、家が潰れてしまい帰る家がない人たちでいっぱいに。
お母さんに向けられたのは、同情ではなく嫉妬や妬みだった。
「あなたは家があるのにどうして物資をもらってるの?」
「あなたは家が無事でしょ?ここにいる必要ないでしょ?」
お母さんはそこにいることをやめ、床が斜めになっている
自分の家に戻ることを決意した。
悔しかっただろう。お母さんも変わらない被災者の一人なのに。
それから今日まで、お母さんは自分自身で壁にコーキングを
埋めて隙間を隠したり、ずれてしまった木を直したりしている。
この半年間、一人で。
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こんなにも来れる日が遅れてしまって、本当にごめん。
そう想いながら一緒に割れてしまった壁にベニア板を張る。
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一日がかりでようやく壁一面のベニヤ板が張り終わり、
お母さんのほころんだ笑顔と
「もうこれで、あの日を思い出さなくて済む。」の一言が
僕の心の中にしかっりと焼きつく音が聴こえた。
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