第10回Twitter文学賞

下北沢B&Bでの発表会が中止になり(残念)、
YouTubeのLIVE配信で視聴した
第十回Twitter文学賞。
国内文学、海外文学、前年に出版されたもののなかから各一点だけ、投票できる読者賞。

今回、私の投票作品はふたつとも第一位!
海外部門
ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」(岸本佐知子訳)
国内部門
佐藤亜紀「黄金列車」

昨年はここ十年でもっともガイブンを読めた年だった。本屋にいる時よりも。

ルシア・ベルリンは、一昨年、岸本佐知子さんがイベントでその数編を朗読してくれたのがきっかけで、刊行を心待ちにした一冊。驚愕の素晴らしさだった。文章をこんなふうに書けるなんて!ずるい!唸るくらいにカッコいい!そして体験に基づくと思われる小編たちから立ち上がるルシアの人生の壮絶さよ。
表紙の肖像写真がまた素敵なんだ。
今は亡き作家がこんなふうに掘り起こされて出版される奇跡と僥倖。小説読みでよかったという歓びが身体じゅうに駆け巡った。
樹木と人の織りなす壮大なポリフォニックな大作、リチャード・パワーズ「オーバーストーリー」と最後までさんざん迷ってルシアに一票を投じ、「私の中の武田百合子脈がユグドラシル脈を僅かに凌駕して投票」とTweetしたのでした。

その「オーバーストーリー」、
そして
テッド・チャン「息吹」、
劉慈欣「三体」、
ジョージ・ソーンダーズ「十二月の十日」、
エリック・マコーマック「雲」…
濃醇な読書体験をくれた素晴らしい本たちが続々とランクインしていた。

ほかにもスチュアート・ダイベッグ「路地裏の子供たち」、スティーブン・ミルハウザー「私たち異者は」、デニス・ジョンソン「海の乙女の惜しみなさ」、モーシン・ハミッド「西への出口」、レティシア・コロンバニ「三つ編み」、ケン・リュウ「生まれ変わり」、ウィリアム・ギャディス「カーペンターズ・ゴシック」、ソラーリ・デラニヤガラ「波」…
アラームをかけないと電車を乗り過ごしてしまうような小説たちを貪り読んだ一年だったのだ。
うう、昨年の私、なんて幸せだったんだろう。

惜しいのは韓国文学まで手が回らなかったことで、ランクインしている「外は夏」や「回復する人間」はこれから読む。あと、ケアリーの「おちび」ベルクマン「トリック」もこれから!という愉しみがある。

そして、いつもあまり単行本で買わない日本の小説は、選択肢があまりにも少なかったけれど、良書に巡り合えている。
「吸血鬼」「スウィングしなけりゃ意味がない」の佐藤亜紀がまたもや凄い一作、「黄金列車」!
説明するのがイヤってくらい、この史実に基づいたフィクションは胸に迫る。何層にもかさなる物語。交互に語られる過去と現在。流されるしかなくてもそこにしっかりと軌跡を残すそれぞれの人生が、体温と誠実さでもって見事に描き切られる。私はゾルナイ、私はアヴァル、私はトルナイ、私はミンゴヴィッツ、そして私はバログ…物語の中で私はそこに居て、生きていた。そして最後にしめされる、微かなひと筋の希望。
なんという物語の力だろう。

Twitter文学賞は引き継いでくださる人があらわれてまた続くという。
この賞のおかげで出会えた本は多い。

個々の本について書きたいことは無限にあるので、少しずつ、書きとめておきたいと思う。
そして、その小説に出会えた歓びと推しっぷりを、錚々たる目利きたちが惜しみなく披露してくれるこの賞に、本当に感謝している。

配信は5時間に及んだけれど、最初はコーヒー、後半はビールをお供に堪能した午後でありました。
ああ、幸せ。ゾクゾクと幸せ。
ブック ブレス ミー、である。


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