小倉百人一首

急に涼しくなって身体がついてゆかず
朝方から熱があったのでちょっとおとなしくしていた
長い時間まとまっては眠れないので仰臥に退屈し
ふと思い立って、小倉百人一首を暗誦してみた

中学生の時には百首ぜんぶ言えたけど
ドロドロした恋の歌が多いなあと思っていた
「ちはやふる」ブームの時も静観していた
あらためてひとつずつ読み上げれば
奥行きや教養や素直な気持ちがそれぞれに込められて
なかなかに味わい深い

六十首は覚えていた
上の句のあたま五文字ですらっと出てきた
残りも下の句の頭三文字を見たら出てきた
頭の柔らかい時にひたすら覚えたことは
共感してなくても、忘れないものだなあ
そして現代の歌曲と同じように
恋愛は大きなエナジーで関心ごとであった
ひとの心根の変わらなさをしみじみ思った

業平にも西行にも清少納言にも
もっと好きな歌はあるけれど
四百年にわたって和歌をあつめるというのは
印刷物のない当時、たいへんなことだったなあ

自分は叙景の歌が叙情の歌よりも好きらしい
百人一首は恋のうたの次に秋のうたが多いらしい
秋めく夜半に独りごちた

⭐︎中坊のころ好きだった歌

君がため春の野に出でて若菜摘むわがころも手に雪は降りつつ
ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
いにしへの奈良の都の八重桜今日九重に匂いひぬるかな
月見れば千々に物こそ悲しけれ我が身ひとつの秋にはあらねど

⭐︎歳取って好きになった歌

風そよぐならの小川の夕暮れはみそぎぞ夏のしるしなりける
夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ
夕されば角田の稲葉おとづれて葦のまろ屋に秋風ぞ吹く
こころあてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花

⭐︎ずっと好きな歌

秋風にたなびく雲の絶え間よりもれいづる月の影のさやけさ
ほととぎす鳴きつるかたを眺むればただ有明の月ぞ残れる
村雨の露もまだ干ぬ真木の葉に霧たちのぼる秋の夕暮
人はいさ心も知らずふるさとは花も昔の香に匂ひける

うーむ。恋はどこへ行った。
まあいいか。

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