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ありのままを貫いた結果がこのありさまや

「ありのまま」の独身者と「ネズミ男」の既婚者

 映画「アナと雪の女王」が大ヒットして、街中どこに行っても有線放送であの曲が流れていた頃のお話です。

 映画上映が終わって、既にDVDが出回る頃になっても、僕の同僚達の中で「アナと雪の女王」を観たという人はいませんでした。僕も観ていません。

「一応、中学の修学旅行でディズニーランドに行ったことはあるけど。今はええ歳して夢の国って、何か敬遠するわ。」

「第一、俺ら『ありのまま』を貫いた結果、このありさまやないかい。」

「その通り。夢の国といったところで結局は、商業としてのエンターテイメントなわけで。」

「ストップ!そこまでや!」

 数少ない既婚者の同僚が遮りました。

「お前ら、そんなひねくれたことばかり言うな。ええ歳して、とか言ってるけどな、自分から女性を夢の国に誘って、ネズミの耳着けて思いきりはしゃぐくらいはやらんかい。せやないとモテへんで。」

「ほんまか…!?そんな男、キモくないか?」

「俺はそれで今の妻とうまくいったよ。」

「えっ、お前、ネコ耳着けたんかい!想像するとキツいな。」

「想像すな!それとネコやなくてネズミや!夢の国の中ではそれでエエねん!むしろそれがお作法ちゅうやつや!」

関西人はユニバやろ

 ネズミの耳を着けるのが「お作法」かどうかの是非はともかく、我々は彼を見習って、一度、ディズニーの映画をちゃんと観てみようとしました。

 女性たちと同じものを観て、同じように感動し共感する。大切なことですね。そう思うのですが…。

 観ている途中で眠ってしまいました。エンドロールのあの曲で目覚めた。

 翌週。

「ありのままで、のやつは俺もリタイアしたけど、『ベイマックス』はなかなか面白かった。」

「うん、あれは僕も観たけど。ヒーローアクションとして観られる分、いかにもディズニーって感じはせんかったかも。」

「あと『ミニオンズ』のシリーズは純粋におもろかったから全作品観たわ。」

「あれはディズニーやなくてユニバーサルやないか。」

「おう、そうか。って言うか、夢の国は東京(正確には千葉)やけど、ユニバは大阪にあるやん。俺らは関西人としてユニバでエエやんけ!」

「おう、それが関西人としての誇りや!」

「まあ、な…。お前ら、彼女を誘ってユニバに行けるよう、頑張ってな。」

 既婚者の同僚はため息まじりに、そう言って締めくくりました。