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貴方はもうダメ男から脱出できている 「恋愛依存症 苦しい恋から脱出できない人たち」伊東 明

「恋愛依存症 苦しい恋から抜け出せない人たち」伊東 明(実業之日本社)

若かりし頃(2000年初版)

 あれは学生の頃。学校の勉強が嫌いで大学に進学しなかったくせに、学校では学ばないような分野の本を読んで知ったかぶりをしていた私は、この「恋愛依存症」を読んで、ダメな相手ばかり好きになってしまう人(共依存)と、相手を不幸にしてしまうダメな人(回避依存)が惹かれ合う理由を理解した気になっていました。

 表面的に見える姿とは逆で、実は回避依存の方が「捨てられる」ことを恐れており、共依存の方が「親密になる」ことを恐れている。共依存の人は幸せになることを恐れ、自ら幸せを壊してしまう…。

 そんな内容に未熟だった私は衝撃を受け、その内容をかいつまんで同年代の友人たちに語っていくうちに、私が持っていた「恋愛依存症」は人から人へと回っていき、返ってこなくなりました。誰のところで止まったのかさえ分からなくなりました。

 内容に興味はあっても、本を最後まで読める人は少ないのだと思い知りました。しかし私と違って大学に通っていた彼らは、どうやって学校のレポートを書いていたのだろう……。

大人になった今(2015年改訂版)

 そこから20年ほど経った今。2000年に出版された「恋愛依存症」の改訂版が2015年に出ていたのをごく最近になって知り、電子書籍で読み返してみました。2000年出版時の書籍が手元に無いので具体的にどこがかははっきり言えないのですが、「毒親」やSNSに関する記述は加筆された部分だと見えました。

 20年ぶりに読み返してどう感じたか。…何だか、「共依存」の傾向が自分にあるような気がしてひどく動揺したのですが、こう言った人間の心理や行動パターンについての解説には、意識して見てみると何かしら当てはまるものは見つかるのです。わりと似通ったところはあるにしても、自分がそうだというわけではないのだと心を落ち着かせました。

 そして私たちももう、いい大人なのです。そこに書かれている実例には確かに、かつての自分や身近な人々の実体験に当てはまるようなものも少なくなかったのですが、この本の解説にあるように完全な方法ではないにしろ克服してきました。もう今さら繰り返すこともないでしょう。

 そう、まがりなりにも自力で(もちろん周りの人たちの助けも得ながら)乗り越えてきた私たちは、なにもこの本を読んで、過去の苦しさや置いてきたものへの罪悪感を思い出す必要は無いのです。

 あの頃の、何も知らないくせに知ったかぶりをしたがった自分は、したり顔でこの本を周りに勧めたりしていました。

 見栄を張る必要も無くなった今はもう、この本も過去も置いて行ってしまおう。そう思いました。