なれそめ

すーさんとは、前の彼氏に浮気されて別れてボロッボロだった時に出会った。
いきつけの雑貨屋さんに遊びに行っていた時、オーナーのMさんがその時ちょうどMさんの旦那さんがMさんの子供を連れて会社の後輩(すーさん)と動物園に行っているから紹介していい?と唐突に言ってきたのがきっかけだった。
初めて見たすーさんはお肌がツルッツルで、まだ学生さんに見えた。それもそのはず、すーさんは新卒でまだ会社員になって1年も経っていなかった。
そのあと、すーさんと何度かデートをしたが、それまで年上としか付き合ったことがなかった私はどうしてもすーさんを恋愛対象として見れなかった。
感情もあまり表に出すタイプではなくて、声もすこぶる小さかった。
ただ、とてつもなく優しかった。
その優しさにいつしか私はどんどん包まれていった。
「好き」と言われたときにちょっとだけときめいたことと、これから声を大きくすることを約束して付き合うことになった。
それからすーさんは(たぶん私も)みるみる…ではなくゆっくりと明るくなっていったように思う。
人生で1番傷ついてカッチカチの氷のようになった私の心をすーさんは少しずつ、その優しさで溶かしていってくれた。
そして、結婚して子供が生まれ、共に成長し、子供たちと一緒になって遊ぶようになりすーさんの声は爆音に変わっていった。
できればその爆音と、出会った頃の蚊の鳴くような声の中間の音量をお願いしたいのだが、小さい声よりも大きい声のほうが、それがたとえ爆音であってもまだましなのから仕方がない。
私の約束を律儀に守ってくれるところがすーさんらしい。
ちなみに結婚するときに約束してもらったトイレ掃除もすーさんは毎週ていねいにしてくれる。
すーさんを好きなきもちは毎年更新している。
本当に結婚してよかったと思わせてくれるすーさんは偉大だ。

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