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自分の映画の枠を広げる。

映画ライターという肩書きで仕事をしているので、仕事関係の人とは「最近何観た?」「何が面白かった?」という映画話はもちろんしますし、仕事から離れた場所でも「いま上映している映画で何が面白いですか?」と聞かれることもあります。

1人でも多くの人に映画館で映画を観てほしい!と思っているので、できるだけその人が「面白い」と感じてもらえる映画をオススメしたい。なので「何が面白いですか?」と聞かれたときは、その人が過去に観た映画で好きな作品をいくつか挙げてもらい、そこから、いま上映している映画を選定。オススメした映画を観てくださって、次に会ったときに「あの映画、面白かったです!」と言ってもらえたときは、すごく嬉しいものです。

自分がどんな映画が好きなのかを知るには、好きなものだけでなく、苦手なものも経験して、これは好き、これは苦手、と感じることが大事だと思うんです。また、これは苦手だろうな……と思って観てみると、実はめちゃくちゃ面白いと思えたりすることだってある。たとえば、Netflixでは「○○○をご覧になった方へ」というオススメや、その作品と自分の「マッチ度は○○%」という表示が出て、とても便利ではあるのですが、ふと思ったんですよね。これを観たら次はこれって、それに沿うのもありですが、自分で「選ぶ」、自分で「探す」という楽しみを奪われているような気もするなぁなんて。

そこで最近は原点に戻って、仕事でもプライベートでも会った人に、「最近、何を観た?」と聞くようにして、それを試しに観てみる、ということをしています。ここでのポイントは「何が面白かった?」と聞くのではなく、「何を観た?」と聞くのがポイント。「面白かった?」と聞くと、自分は面白かったけど、相手も同じように面白いと思うかは分からない、だからぶなんなタイトルを挙げよう、という心理がはたらいてしまうのではないかと思うんです。いろんな映画を観たいとき、自分の枠を広げたいときは、「何を観た?」という聞き方がいいと思います。

それから、数日前に、ある監督の取材のなかでパトリス・ルコントの『髪結いの亭主』が出てきて、久々に、何十年ぶりかに、観ました。最初に観たのは二十代前半だったと思うのですが、その時と今と、感じ方がぜんぜん違ってびっくり。当時は、なぜこの映画がそれほど良いのか本当の意味では理解できていなかった。けれど今の年齢で、あらためて見てみると、あのラストも、マチルド(ヒロインの名前)が何を望んでいたのかも、分かるような気がして。それは自分のなかでの、ささやかだけれど豊かな発見でした。

それでは、また明日。

同じ内容になりますが、声のエッセイの配信もあります↓



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