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【和敬清寂】心の基本姿勢として

部活というと、すぐに卓球部を思い出す私は、茶道部に在籍していたことを忘れていることが多い。
あるMVをみて、心をわしづかみにされ、そして思い出した。

茶の道で学んだ大切な言葉たちを。

裏千家だった。
茶道には多数の流派があって、大きな三大流派は千利休の息子たちが作った、武者小路千家、表千家、裏千家が有名どころ。
それぞれで道具や作法が異なる。お茶のたて方、座り方やおじぎの仕方、袱紗の色に至るまで個性がある。
でも、心構えは同じ。

茶道というと敷居が高い、と言われることもあるが、もともと武士の遊びだったお茶を、千利休が庶民へ広めたものが茶道であって、決して堅苦しいものではない。

茶室へ入る「にじり口」といわれる小さな入口は、武士が刀を持って入れないように、身分に関係なく誰もが頭を下げて入るように、と作られたもの。皆、平等に互いを敬い お茶をいただく時間。

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私自身も、遠く無縁の世界だと思っていた茶の道。
突然大きくカーブをきり歩みを進めた看護学校で、それと出逢った。

週1回、学校に華道と茶道の先生が来ていた。「どちらかひとつは参加してみるといいよ」と先輩に勧められ、週に1度だしやってもいいかな、と素直に思い入部した。

花より団子だったので、茶道部。
決め手はそんな軽いノリだったけれど。

その日に食べる和菓子を1年生が買いに行く。自分たちが食べたいものを選んでよかったので、わいわい言いながら、部活が始まる前に買い物へ行くのが、ふっと気の緩む楽しい時間だった。店にある和菓子、全種類制覇しよう、なんて言って、花より団子を満喫していた。

それでも、お点前も作法もきちんと教わり、簡単に着付けも覚えた。
もうすっかり忘れてしまっているのが残念だけれど。

学校祭では、お着物を着て来場したお客様へお茶をたてた。初めて着た着物のせいか上品な大人になった気がして、ちょっぴり背伸びしたすまし顔で、みんなと写真に収まっている。



裏千家での薄茶は泡をたてる。
この泡のたて方も何度も練習したっけ。

この泡泡感がいい。ビジュアルも気に入っているし、泡をふわっとたてることで味がまろやかになる。
初めてこの泡立つ抹茶をいただくとき、苦いのだとばかり思っていて、恐る恐る口にした。「うわ、美味し」と思わず大きな声で言ってしまって、私は先生に笑われたのだ。
最初に出会ったのが裏千家でよかったなと思う。
ここで抹茶が好きになったから、今は泡のない抹茶も飲める。

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お点前を覚えるのはもちろんだが、それは表現のひとつであって、茶道で大切なのは「心」。

茶道の教えの中で、いくつかの言葉がある。
一期一会、が有名だろうか。

たとえば
「重きを軽く、軽きを重く」
重いものはさも軽いように扱い、軽いものはさも重いように扱う。そうすることで道具を扱うバランスが生まれ、美しい所作に繋がっていく。
立ち振舞いはもちろん、道具の持ち方、指先の動きまで気を配ることで、相手を思い気持ちよく過ごしていただく。

そして
「和敬清寂」
この心構えが茶道の基本姿勢だと学んだ。

和敬清寂とは、茶道の心得を示す標語で、意味は、主人と賓客がお互いの心を和らげて謹み敬い、茶室の備品や茶会の雰囲気を清浄にすることという意である。       ~Wikipediaより引用~


ひとつひとつの文字に意味がこめられている。
和:互いに心を開き和やかに
敬:人はもちろん道具をも敬う心
清:目に見えるものも心の中も清らかに
寂:静寂 落ち着いた心 動じない心

今年のオリンピック誘致を勝ち取ったときの言葉でもある、日本の「おもてなし」。まさに、互いにもてなすこと、の大切さを表している。
日本人としての慎み深さを持ち、お点前をする側(ホスト)もお茶をいただく側(ゲスト)も互いを尊重し気遣うことで、和やかな空間づくりをすること。
これは、どんな場にも あてはまるのではないだろうか。

全ての人、物、事を尊重する気持ちが和をつくるという精神。

茶道とは、日本人が日々襟を正して丁寧に過ごしてきた心なのだと、それが他人への配慮にも繋がっていくのだと、先人の言葉を通して教えられた。

だからこそ、厳格な静けさと安らぎの中で、お茶をたてる時間は自分と向き合う時間でもあった。


茶道は「和」。
お茶をたてる、という所作の中で、美しき日本の心への扉を開いていく。それを週に1度繰り返し、確かに「和敬清寂」を刻んだあの時間。

続けていないと着付けやお点前の細かなことは忘れてしまう。でも大切な精神は、こうして深く残り、いつでも思い出すことができるものなのだ。

今あらためて「和敬清寂」の心を胸に留めておきたい。

🎹

思い出させてくれたきっかけのMV。
ぜひ観てほしい。
ロスにある表千家の茶室にて。
jazzと「和」の組み合わせ。
「indoorVoices」の音楽から滲み出る「和、敬、清、寂」


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