映画『ミナリ』を見る。率直によくわからなかった。素朴な覚書。

映画館で一度、宣伝を見ただけで行ったのですが。想像してたのと全く違う映画だった…以下、完全ネタバレですので、差し障りのある方はスルーでお願いします。

韓国移民がアメリカで苦労する話、なのは間違いないが、勝手にアメリカ人との葛藤や諍い、移民の苦悩がメーンの話だと思い込んでいた。
苦悩も間違いないんだけども、描写は、ほぼ主人公の家族に徹されている。白人コミュニティは、彼らにとって外部として描かれていて、むしろそこにリアリティがあるのかなって思った。

そしてもう一つの主題は、神様ーキリストの受難が、ここでも核としてある。主人公の「イさん」の農場を助けるポール。どこの誰かも一切説明されない。ただ一風変わった隣人としてだけ描かれるが、教条的なキリスト者で、日曜日には、十字架を背負って歩く。

彼の信心ー清めの水ーを受ける、韓国からやってきたおばあさん。
心臓疾患のある幼いデイビッドの代わりに病を引き受ける。原罪を被る役目に見える。

農場が火事になり、作物を置いてあった古屋が炎上する場面は、タルコフスキーの「サクリファイス」を思い出した。


おばあさんは全てを引き受け、農場はもう一度初めから始められる。

ミナリーおばあさんの植えた、水辺のセリだけが、命をつなげる。

イエスと原罪、贖罪と予言説、これが身体的な感覚としてわかんないと、キリスト映画は理解できないんで…わたしも結局わかりませんが。

韓国教会とアメリカの教会、白人と移民。ヒヨコの選別。
淡々とした描写や美しい映像と音楽に、素直に流され感動していい映画でもあるけれど、それ以上に複雑な、入り組んだ構成の映画なんかもしれないなあとも思いました。

ことさら一神教を身体的に理解しない日本人には、相当わかりずらいのではないか。あるいは、誤解してしまう映画。でもまあ全ての読書は誤読であるって言葉もあるくらいで。映画もまた、見た間際から見た人のものだから。

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