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さようなら。ファイターズと札幌ドームへ。長い長い思い出話をしてみようーその3 ーその人の名は、武田勝ー

 2007年、パリーグ連覇をなし遂げるファイターズ。金村暁からダルビッシュ有へ、エースの移譲が主たるドラマで、「プロ野球のスター」と言える選手は、だからダルビッシュしかいなかった。でもそれで十分だった。
 
 前年のチームから、宝塚で言うたら星組と月組のトップスターが両方抜けたようにして新庄剛志と小笠原道大が抜け、 ファイターズは、優勝候補には上がってなかったらしい。
(その1にも書いたが)主力選手は、前年から居残っている、むしろ成長著しい森本稀哲と田中賢介、小谷野栄一、俄然星組トップスターの座についた稲葉篤紀、4番はセギノール。ショートに君臨する金子誠。ホームランを打てる捕手高橋信二。ダルの恋人鶴岡慎也。シーズンオフに解雇され、推定年棒2000万円で出戻ってきた坪井智哉…。

 ヒルマン監督による指揮は6年目。メジャーリーグからやってきた白人監督の「日本野球」も円熟味を帯びていたーのではないかと今なら思えるけど、当時は、僅差のゲームを凌いで勝っていく、いわゆるところの「スモールベースボール」に痺れていた。
 4対3で勝つゲームが多くて、金子さんが「4点とるともういいやと思っちゃう」なんて嘘かほんとか知らないが、ほんとな気がする発言もあった。(この年ではなかったかもしれないけど、賢介が「打たなくても勝てる」と言って実際、打点なしで得点して勝った試合もあった)

ーファイターズの伝統とされる守り勝つ野球ー。「ニヤニヤ二遊間」(注3)とあだ名された金子誠と田中賢介のコンビは、この年に固まったし、稲葉篤紀と森本稀哲、外野の守備ってこんなに面白いんだって初めて知った。隙のない外野守備は前年までセンターを守った新庄剛志の遺産らしかった。

 毎日、毎試合見ていれば、選手の顔も特徴も覚えてしまう。そもそもオタク体質で、さらに天邪鬼な傾向があるので、大スターへと駆け上がるダルビッシュも、稲葉ジャンプの稲葉さんも、もちろん応援はするけれど、特に好きとか嫌いとか、さしたる関心は持たなかった。

 興味関心を持ったのは、ベンチにいる選手、また二十歳だった陽仲寿(のちの陽岱鋼)ショートでたまに出場しては、大暴投やエラーをしてしょんぼりしながら下がっていく。逆に試合終盤にサードやショートに「守備固め」として出ていく飯山祐志。代走でサバンナのキリンのごとく駆け抜ける、紺田敏正…といった選手をだんだん好きになっていったのだったが。

 ある時、ふと(もしかしたら、あたしは、この人がすごく好きかもしれない)と感ずる。
 
 マウンドに上がる姿は、気配薄く、いささかぼんやりした空気を纏い、背もあまり高くなく、全体的に華奢で「小さい」印象の。でも投げ始めると、ピタリピタリとストライクを決め、さささささっと抑えてしまう。

 小さい体に、少し曲がったままの左腕。2006年、27歳でプロ入り。そののち2016年の引退まで実に82勝を挙げる。
 
その名は、武田勝。

通算成績は、こちらのリンクをご参照ください。

リンクを貼れる当時の写真があった!😀 トップの写真にも拝借しました。

 W武田で、武田久とセットの取材も多かった、若い頃の武田勝。通称「勝さん」は(「セクシーコマンドー外伝すごいよマサルさん!」て少年ジャンプのマンガにも由来している…よね?)当初は、真面目キャラ、人見知りキャラで売っていたが、だんだん素性がバレていく過程はまた別の話として。

このシーズン、35試合に登板、中継ぎから先発、何でも屋として投げ続ける。8勝を上げ、8ホールド、完投1、防御率は2点台、144イニング投げて四球はなんと17個(平均すると8.5回に1個しか出さない計算)暴投に至ってはゼロ0(10年間の成績でも5回しか出していない。)

大エースへの道を華やかに歩むダルビッシュの影に、ひっそりと咲いた小さな花…のように見えるけど、実はすごいよ勝さん!は、リーグ優勝に大きく貢献する立役者であり、そして、当時でいえば「萌え」今で言えば「推し」の一番頭になる。

大好き勝さん! 
萌えのある世界は、推しのいる世界は、つまりファイターズは、また強い輝きを放ち、わたしを虜にしていくのであった。


いつ終わるかは誰もしらない 続く

注3 ニヤニヤ二遊間
金子誠は、21年間の現役時代、最も多く二遊間を組んだ相手が田中賢介だった。「野球やっている時もニヤニヤしながら、情報交換していた」様子からファンの間で「ニヤニヤ二遊間」と呼ばれるようになった。(北海道新聞記事より引用抜粋)
ー諸説あると思いますので、より詳しい方は教えてください😀

(文中敬称略)



 

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