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いきなり遠野物語 


目次 
1. 今回行くきっかけになった「岩間敬さん」について
2. 行くことを決めてから遠野に着くまで
3. 遠野で出会った人達
4.盛りだくさんの1日
   4-1高原の朝と馬達
   4-2遠野の雲海
   4-3柳田國男先生の抜け殻
   4-4グラスチューブを楽しむ
   4-5テラと仲間達
   4-6古民家の渡邉さんち
   4-7岩間さんの製材所
   4-8松日橋とTW
5. 帰宅の途に着く間に感じだこと


2022年10月22日の朝。
朝、起きてからのルーティン、SNSとメールのチェック。
その日の朝、目に入ったのは、岩間さんのFacebookの投稿でした。
投稿の内容は、先月フランス・パリのシャンゼリゼ通りを岩間さん達が、馬車、チャグチャグ馬コでパレードした様子がNHKニュースで放送されますという投稿でしたが、その前の投稿に遠野市で「馬フェス2022」があるというのが目につきました。
その投稿を見て『この機会に行っておくべきじゃないか?岩間さんが以前「遠野にもきてくださいね」と言ってたし、こんな機会でもないとなかなか行けないよな。』という想いが湧き上がり、もう心の中では行く事を決めていたのかもしれません。

NHKニュースの記事はこちらから
https://www.nhk.jp/p/ts/GV37P3QRV4/blog/bl/prAM3NPgLr/bp/pZ1n2Ao1W7/

1. 今回行くきっかけになった「岩間敬さん」について

岩間敬さんのプロフィール
岩手県遠野市生まれ。 関東で建築の専門学校で学んだのち、地元に戻りベテラン馬方に師事され馬について学ばれます。その後、乗用馬の繁殖・調教を行う会社に勤務しながら農林業に携わっていらっしゃいました。2010年「遠野馬搬振興会」を立ち上げ、2012年「岩手競馬・馬事文化賞」を受賞。2016年には「一般社団法人馬搬振興会」を設立されました。2020年「三馬力社」代表取締役に就任され、馬と人がともに働く機会の創出や、西アフリカでの馬耕指導をはじめ、畜力活用技術指導による国際貢献にも尽力。
イギリスのチャールズ皇太子(現国王)主催の馬搬技術コンテスト・シングル部門で、 日本人として初優勝し、当時のチャールズ皇太子にも直接面会されています。
欧州馬搬選手権シングル部門で7位入賞、ヨーロッパの馬搬業界ではかなりの有名人。(ヨーロッパで馬搬をされる方は貴族層の方々と聞いています)
先日もパリのシャンゼリゼ通りでパレードされたり、大使館でのレセプションにおいて、代表して挨拶をされて得意のジョークで場を和ませるほど度胸も座っています。
先日、京都で開催されたTEDにも登壇し、「馬耕(ばはん)を丁寧語にすると『おばはん』。京都の舞妓はんも歳を取れば『おばはん』ですね。」と、とんでもないジョークをTEDで披露する強者です。
けれど、本質は馬と人がともに暮らす重要性を多くの人に知ってもらう為に、様々な活動をされ、働く馬の活躍の機会を創出する活動や、西アフリカでの馬耕指導をはじめ、畜力活用技術指導による国際貢献にも尽力されてます。
岩間さんの紹介だけで随分長くなりました。
だけど、日本にこんなユニークで素晴らしい人はそうそういません。
ですので、詳しくご紹介させていただきました。


2. 行くことを決めてから遠野に着くまで

そんな岩間さんが広報していた「馬フェス2022」
イベント時間が10:00~14:00。移動時間を考えるとどんなに急いでも、イベント終了の14時に間に合わない。今回は諦めようと思ってました。

「馬フェス」当日10/22の朝、岩間さんのFB投稿に書き込みをしました。
「行きたかったけど、イベント終了には会いそうにない・・・」と。
岩間さんから「今日は15時頃までやってますので。 お待ちしても大丈夫ですよ」と返事が。えっ!もしかしたら間に合うかも!
調べてみると福岡発11:40→いわて花巻空港13:30着の飛行機があり、Googleマップで調べると、そこから車で1時間ほどで会場まで行くことができるようでした。ギリギリだけど、なんとかなると思い、急いで行きの飛行機のチケットを手配。そして、大急ぎで荷物をまとめて化粧をし、レンタカーを調べながら福岡空港に移動。
ところが、ここのところのGOTOの割引の為か、レンタカーが全く空いてない。けど、公共交通機関を使うと花巻空港から2時間かかるので、どうしてもレンタカーを借りなければならないのです。
以前、沖縄でもレンタカーがなくて、地元の車検の時に貸し出ししてるような車を借りたのを思い出し、花巻市内で車を貸してくれるところに電話。
ありました!空いてる車が!しかも、プラス料金で空港で受け渡ししてくれるということで、そのサービスをお願いしました。
これで、かなり時間短縮ができることになりました。
もし、レンタカーがない時は、こんな裏技も知っておくといいですよ。

福岡空港までの移動中に、岩手に着いてからのレンタカーは確保。
あとは、宿泊の手配。

空港は案の定、土曜日とあって大混雑。
早めに保安検査を通過して、搭乗までの間に宿を探しました。
土地勘が全くないので、とりあえず市役所近くを探すと良さげな宿があり、ネット予約は当日ということで受付がなく、電話で問い合わせするとラッキーなことに空いてました。
多分、週末なのでシングルのお部屋は空きがあったのだと思います。

これで、とりあえず遠野まで行き、泊まる手配は出来たのでひと安心。

乗る飛行機の機種はE170。座席数76席の小さめの飛行機。キャリーバッグを預けようか悩んだけど、時間短縮のために、一番前の座席をとって、機内に持ち込むことに。おかげで定刻13:30にいわて花巻空港についてから、レンタカーを借りて出発するまで10分しかかからず、13:40には花巻空港を出発する事ができました。
いざ!遠野「馬フェス」へ!

東北横断自動車道路は一車線の多い道路だけど、なにせ車が少なくてスムーズに運転でき、無事に14:40にイベント会場の遠野市松崎にある田んぼの真ん中に着く事ができました。

イベントはもう片付けにかかっていていましたが、まだ馬達もいて、岩間さんも発見。岩間さんは私に気がついてくれ、声をかけてくれました。

岩間さんの弟子の倉本さん 秋田からお手伝いに来てました


「おお!着いたんですね。いつまで遠野にいますか?」
「予定では明日は1日遠野にいようと思ってます。」
「それなら明日、たまたま1日なにも予定ないので、明日、馬に乗せてあげますよ。」と。
なんと・・・なんと私はラッキーなんだ。今日、岩間さんや馬達に逢えただけでいいと思っていたのに・・・。
その上、「今回、このイベントを企画された人達と打ち上げするので、18時にここに来てください。」とGoogleマップにピンを立ててくれました。
『わぁ〜、地元の方とお話しできる!』思いもよらぬお誘いに、これが旅の醍醐味だなぁと感じました。

馬フェスで活躍していたテラ

一旦予約したホテルにチャックインし、お誘いを受けた場所までの確認。
初めての土地なので、念入りにみていると、これは細く暗そうな道を行くように感じ、約束の時間より早めに出かけ、途中手土産を買い目的のお家へ。
真っ暗な田んぼの中の道を少しスピードを落としながら向かい、これ以上この闇の先に進みたくないと思うところに、目的のお家がありました。

3. 遠野で出会った人達
すでに打ち上げは佳境に。手作りのお漬物やお団子、饅頭などほっこりするお料理を囲んで、イベントの運営をされていた方々が大いに盛り上がっていました。写真の一升瓶がお酒に見せますが、なんと葡萄ジュース!お酒を呑む人がいないので、みんなお茶やジュース。

今回、この「馬フェス」をやりたいと言い出したのは、この藁葺き屋根の古民家に住む女性の渡邉さん。東京から10年前にお一人で移住され、今は白い馬2頭と大きな猫とこの大きな古民家に住んでいます。
どうして今回このイベントをやりたかったのかというと、遠野の子供達にもっと馬と暮らす素晴らしさを楽しく知り、笑顔が見たい。遠野の良さを馬を通じて知って欲しいという事でした。ここで感じたのは、やはり人は元々じぶんが持っているもの(ここでは地元、遠野の素晴らしさ)を「当たり前」過ぎてその良さを感じず、他所から来た人がいて、その良いところが定義されるんだなという事です。


渡邉さんの馬達

その渡邉さんにお世話になってこの秋に奥さんと娘さん3人家族5人移り住んできた三木さんご家族。去年、渡邉さんの古民家でしばらく住まわせてもらいながら、移住の為の家探しや諸々の準備をしたそうで、なんだか親戚のお家に来てるような関係性を感じました。お仕事はまだなんとかやってると言われていましたが、家族みんなでとっても幸せそう。初めての冬の寒さに少しビビっていると言われていたけど、それすらどこか楽しげに聞こえました。  

数年前まで、遠野に地域協力隊として3年従事し、そのまま遠野に移住し、今は木材の加工などの仕事をしている小関さん。彼はなんとなくいろんなつながりで仕事をしているとは言ってましたが、この遠野でしっかり根を下ろし多くの人に信頼を得ているように感じました。

この遠野が好きになってこうしていろんな人が移り住み定住している遠野の魅力は、他の街にない何かがあるんだろう・・・それを明日見つけてまわりたいと思った夜でした。

一升瓶は葡萄ジュース

4.盛りだくさんの1日
4-1高原の朝と馬達

昨日の打ち上げの帰りに、岩間さんから「明日は朝 5:45にホテルに迎えにいきます。」と言われ、その日は4時に起きて、昨日あまりチェックできなかったメールやSNSをチェックし、馬に乗りやすい格好で準備完了。ホテルの玄関に少し早めに行くと岩間さんはもう来てくれていて、早速馬達が放たれている高原へ。

馬達の姿は全く見えないほど広い場所に放たれている

街中から30分ほどで、馬を放牧している広々とした高原に到着。
広過ぎて、すぐには馬の姿は見えず、岩間さんが「お〜い!お〜い!」と呼びかけながら歩いていくと遠くから馬の足音、そして霧のかかった草原の向こうから駆けてくる馬の姿が見えてきました。そう、それくらい広い牧草の緑の絨毯の土地が広がっている場所で、馬達はのんびり暮らしているのです。

声をかけるが遠すぎてなかなか来ない


ここでは50頭くらいの馬がいて、岩間さんの馬は7頭。岩間さんの声に反応したのは、8頭。1頭だけよその馬が混じって寄って来て「おやつ」のご相伴に預かっていました。馬は人の声も聞き分けて、そして自分の飼い主しか「おやつ」をくれない事を知っているのです。けど、たまに「もしかしたら貰えるかも」とちょっとずうずうしく行けば美味しいものにありつけると考える馬がいるのは人間と同じだなと思いました。(笑)
「おやつ」の内容はとうもろこしや小麦などのようでした。この高原はほぼ緑におおわれて、牧草には事欠かないので、主食は新鮮な牧草です。

岩間さんの馬達と友達一頭

岩間さんの7頭の中に一頭に馬具を着けて、さっそく馬に乗らせてもらいました。以前、秋田で岩間さんの別の馬に乗せてもらったことがあり、その時は馬具なしでそのまま乗ったのですが、今回は広い高原という事で、馬具をつけての乗馬。たぶん、岩間さんの馬でなければ、初めて会う人をこんな広い場所で乗せるのは難しいのかもしれません。岩間さんと馬の信頼の深さと、岩間さんの調教の技術の高さで、全く不安なく乗馬する事ができました。

馬はとても賢い。岩間さんとの信頼も厚い

多くの馬の中に、自分も同じようにいる・・・その事がとても新鮮で特別で気持ちよくて・・・とても幸せな気持ちでした。

2回目の乗馬。最高に幸せ


岩間さんが「馬が一斉に走る姿、みせてあげますよ。」と言うと、馬の群れの後ろにまわり、着ていたオレンジの上着を高く空中に投げると、一斉に馬達が走り始めました。その姿と足音が高原の中に響、溶け合い、なんとも美しい。なかなか体験できない光景と体感を感じ、こうした体験ができるという事に生きている実感と喜びを感じました。

馬具を外し、高原を降りながら、岩間さんに馬の性格や人と一緒に働く馬について話を伺いました。
岩間さんによると、メスよるオスの方が単純で何を考えているかわかりやすという事と、やはり積極的で好奇心ある馬の方が人と一緒に働きやすいらしいです。なんに対しても臆病で怖がりな馬は、馬の群れの中でもリーダー格にはなれないし、人と働くのにも向いてない。人も馬も同じだな・・・。

朝靄が高原も濃くなってきて、お天気が悪いのかな?と思っていたら、「山の上は晴れていますよ。これは雲海の下にいるですよ。山の上に行って雲海をみますか?」というお誘いに二つ返事で行く事に決定。

 4-2遠野の雲海 
雲海が見渡せる山上までは馬達のいる高原から15分ほどの場所にある「高清水展望台」へ。
高清水展望台は遠野市の北西に位置する標高約770mの展望台です。
遠野市を一望できるスポットとして人気のようでした。その日も数名のカメラを設置して撮影している人にも会いました。
私はリアルに雲海を見るのが初めてて、確かに山上は快晴の青空で、下に雲が一面にかかり、街がすっぽり雲に隠れているのが不思議にも思える風景でした。
遠野では春や秋の朝が冷える早朝から8時くらいまでが雲海がみられるといわれました。
刻々とその表情を変える様子は、まるで生きているかのようで、雲海に包まれた街が少しずつ見え陽射しに光る街の様子は美しく幻想的な風景でした。
こんな微妙な光の具合や色の美しさは写真でも文章でも伝えるのが難しいので、遠野に行かれたら、ぜひ雲海を見に行ってください。

もっと広い範囲で雲海がみられます

 4-3柳田國男先生の抜け殻 

どうやら岩間さんは、今日1日私に付き合ってくれるようで、「次は、遠野物語を書いた柳田國男さんの住んでいた建物を見に行きましょう!」と車を走らせました。

空気が綺麗で青空が気持ちいい


東京から移築した建物、遠野市松崎町にある「柳田國男伝承館」
柳田國男伝承館とは、東京・世田谷区成城にあった旧柳田邸の半分を、國男ゆかりの遠野にそっくりそのまま移築したもので、義娘の冨美子さんが遠野に滞在の際、居住されていたらしいです。岩間さんは富美子さんとお会いした事があるらしく、とても上品で「エリザベス女王に似ている。」と言ってました。

今は閉鎖されていて中には入れないようになっている


そして、その建物の横に美しい紅葉の木があったのですが、柳田國男先生は紅葉の木が好きで「いつもこの木の上でみているよ」といわれたエピソードも富美子さんに聞いたことがあると岩間さんは言ってましたが、本当に綺麗でおおきな美しい紅葉の木でした。

紅葉

 4-4グラスチューブソリを楽しむ

前日おこなわれた「馬フェス」で子供達に大人気だったのが、馬の後ろに浮輪のような丈夫なチューぶをつけ、馬に引かせて牧草の草の上をソリのように滑らせて遊ぶ、岩間さんが考案した遊びです。
昨日は、フェスの終わりギリギリに到着して、すでに片付けに入っていたので、体験できなかったのですが、なんと・・・私だけの為に馬を田んぼの中の牧草地帯にトラックで運んで、その準備までして、体験をさせてもらいました。もう、申し訳ないくらいな気持ちでした。。。

テラにお願いしました


以前、秋田で冬に雪の上でこのチューブに乗って遊んだ事があるのですが、草の上では初めて!土の上の草の状態によってはゴツゴツするんのかなと、その違いにワクワクしながらチューブに乗って、いざ出発!朝の霧のおかげで、適度に草に水分がのっていて、最高の滑り心地!しかも草が擦れて緑の良い香りが風と共に香ってくるという贅沢で楽しい体験をさせていただきました。これは、本当に贅沢な遊びのなにものでもないといった感じでした。

めちゃめちゃ気持ちい〜

 4-5テラと仲間達

馬のグラスチューブソリ遊びを終え、テラを高原に戻しに行きました。
実は昨日は、今日のグラスチューブを引いてくれる為にテラは岩間さんのお家の横の馬の広場に居てくれたようで、馬の仲間がいる高原に戻って来たのは、2日ぶり(?)だったようです。
馬専用のトラックを降りると、テラは大きな声で「ヒヒ〜〜ン!」と声をあげました。岩間さんに尋ねると「馬は群れの生き物だから、仲間に帰ってきた合図をしているんですよ。」と。「わぁ〜すごいですね。」といっていると遠くから馬達の走ってくる足音が聞こえ。寺の声に応えるように「ヒヒ〜ン」と鳴き返しながら走ってくる馬の姿が見えてきました。
感動しました。ちゃんと、コミュニケーションをとって、テラの一声で、こんなにたくさんの馬達がまるで「おかえり〜!」と言っているかのように鳴き返しながら近寄ってくる姿。仲間を大切にしあっていて、テラはみんなに慕われているんだなと。群れで生きるとはこういうことだと。

動画でないのが残念 

4-6古民家の渡邉さんち

昨日、フェスの打ち上げの場にお邪魔した渡邉さんのお宅に、昨日のフェスが地元の新聞に載っていたので、その新聞を買ってお邪魔しました。

岩手新聞


今回の「馬フェス」。実は初めて実施したフェスだったらしく、それでも160名の人が集まったという事で、企画されたみなさんもとても喜んでらっしゃいました。何より、このフェスを「やりたい!」と言い出したのが、この渡邉さん。なので、岩間さんがぜひこの新聞を渡邉さんに届けてあげたいというのと、昼間にこの大きな古民家を見て欲しいというのがあったようでうす。

茅葺き屋根の立派な古民家

私も昨日は暗くてよくこの古民家の全体の姿を見られなかったし、ここは岩間さんがお世話して渡邉さんに紹介したところらしく、岩間さんお気に入りの古民家でもあるようでしたので、ぜひ見てみたいと言う気持ちもありました。

軒先も素敵


10年前に東京から遠野に移り住み、この大きな古民家で白い馬2頭と大きな猫と暮らしていらっしゃる。とても穏やかなそれでいて逞しい精神をもってらっしゃる女性。こんな生き方もあるんだと知る事ができただけでも学びになりました。

4-7岩間さんの製材所

「今度は製材所に行きますよ!そこには専用のカフェと専用の電話があるんですよ。」岩間さんはそう言って田んぼ道を走り出しました。言ってる意味が少しわからないけど、岩間さんお得意のジョークなのはわかっているので、なにがあるのか楽しみにしていると、電話ボックスとジュースの自動販売機がある一角に車を停め「ここです!」と。やっぱりカフェはこの自動販売機なんだと。(笑)

レールに木材を乗せてカットする


製材所は本格的で、昔は別の方が持ち主だったようですが、ご高齢になられて時々利用していた岩間さんにここを受け継いで欲しいとお願いされたらしく、今は岩間さんの持ち物。なかなか馬や製材所を持ってる人っていないです。けど、岩間さんは馬搬もやっているので、理解はできます。少し説明すると、馬搬とは、山から切り出した材木を山を荒らす事なく(無理に道を作ったりしない)馬の畜力で山から運び出す作業のことで、昔は馬搬でちゃんと切り出せる範囲に木を植え、切り出した木は1箇所に集まりようになっていて、そこから馬の力を借りて運び出し事を口伝で伝えられていたようです。しかし、それも途絶えそいるところが多く、岩間さんがそれを知り実際にやっている唯一の人になっています。

働く馬と働く岩間さん


そんな山を守る知識と、馬でしかできない能力を活かして行う木の切り出しを実際に岩間さんは行っていて、しかも製材所を持って、その木の加工までされていると言うわけです。すごすぎます。

あ、もう一つ付け加えると、岩間さんのご自宅のご近所には、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」にもご出演された事がある宮大工の菊池恭二さんのご自宅と作業場があり、その方がプロフェッショナルのインタビューを受けた時の足元にあった丸太は岩間さんが初めて馬搬で切り出した木材だった!とちょっと自慢げにお話してくれました。(笑)
岩間さんという人は、山の妖精(見た目は違うw)のような不思議な魅力と力を持つ人です。

 4-8松日橋とTW

陽も傾いてきて、1日に体験するにしては盛りだくさんすぎる内容で、そろそろ岩間さんも投票(この日は遠野市の市議会選挙の投票日)に行かないといけないだろうと思い「岩間さん、今日はたくさんありがとうございました。もうそろそろ選挙にも行かないと行けないだろうから。。。」と切り出すと「いやね。すぐ隣町に、木材をふんだんに使った役所があるから、そこまで行きましょう!」と。

昔使われていた水車小屋


行く途中に遠野物語に出てきた「姥捨山」や柳田國男に「遠野物語」を著すきっかけを与えた佐々木喜善の生家などをみながら隣町の住田町役場へ。

橋に埋められてる銘板のイラストが姥捨

30分ほど山道を走っていると、岩間さんが車を止め「流れ橋」といわれる「松日橋」を見せてくれました。この木製の「流れ橋」は、江戸時代の元禄図絵図にも描かれているほど古くから多くの住民の生活を支えて来た存在で、増水して流されても、その橋の木材は橋の形としては崩れるけれど、流されないようになっていて、またすぐに元に戻せるようになっている、とても素朴で面白い橋でした。自然に抵抗するのではなく、自然のままに流されるけど、すぐ直せるこの発想、好きです。

松日橋


そしてようやく住田町の木造の役場を見て、陽も暮れはじめたので帰る事に。帰る途中に行きの目にしたある車を見て帰ろうと岩間さんから提案が。どうやら木材を運ぶカッコいいトラックらしく、「この車、絶対写真撮ってSNSにあげた方がいい!」と強くススメられたので、ススメられるがままパチリ!確かに可愛いデザインと、パワーありそうなボディーでマニアには人気だろうと思いました。ちなみにこのTWは、いすゞ自動車が製造していた全輪駆動のトラックで、関係者の間では、日本林業史上最強のフォワーダ(林業用運搬車)と言われているらしく、岩間さんがわざわざ車を停めてまでこのトラックを見たがった理由が少しわかる気がしました。

確かにかっこいい

遠野市に戻ってきた頃には、あたりはすっかり暗くなっていました。

丸一日、遠野の素晴らしい場所、普通では体験できない馬達との時間、様々なお話しをしながらのドライブ。こんな貴重な体験とができた事に「有り難い」という言葉しか浮かばず「岩間さん、本当に1日ありがとうございました。」とお礼を言いホテルに戻りました。
遠野で2泊の夜、明日帰る為のチケットを購入し、岩間さんとの貴重な1日を振り返りながら、その日私はとても深い眠りにつけました。

5. 3日目、帰宅の途

朝、遠野市から花巻市に移動。
花巻市にある宮沢賢治記念館によってから花巻空港へ。

宮沢賢治記念館


帰りの飛行機も小さめの機材で、よく揺れました。そんな機内で考えたのは、この旅で多くのことを学べたのは、ひとえに岩間さんがおもてなしをしてくださったおかげで、あり得ないほど有り難いことだということでした。

いわて花巻空港


岩間さんの概念に「お金のルールには乗らない。」というものがあります。
馬に携わるようになったのも、「人がお金をたくさん持ったらやりたいことってなんだろう?』と考えたそうです。そうした時に「おいしい食べ物を安心して食べる」という事だったそうです。だったら、自分で美味しいお米を作る。美味しいお米を美味しく炊くために自分で炭をつくる。炭をつくるために自分で木を切り出してつくる。山を荒さずに木を切り出しためには馬がいる。 
このように逆算していって必要なもの、技術をつけていったようなのです。なので、そもそも頭の中では既にお金持ちになっているので、そんなラッドレースに参加する気はないようなのです。(笑)
こんな考え方をしている人に私は初めてあったので、岩間さんの思考の仕方が面白くてたまりませんでした。そして、変な気負いや無理がなく、生きるのにいい具合に「力が抜けている」のです。
自分にない考え方ややり方を実行できている人に出会うと、ものすごく多くの学びがあります。
今回の岩間さんとの時間や体験は、私にとても多くの刺激と学びを与えてくれました。

帰る日にレンタカーの後ろに忘れてた馬具を返しに行きました

岩間さん、本当にありがとうございました。
私は岩間さんという人と知り合え、こうしてこれからも交流し続けられることがとても嬉しいです。
もっと多くの人に、岩間さんの活動を知ってもらい、日本の馬搬・馬耕の重要性を知ってもらいたいです。
そして、岩間さん以外にも、この素晴らしい技術の伝統が途絶える事のないように心から願っています。
また遠野に行きたい。

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