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②フォルケホイスコーレの起源

フォルケホイスコーレのことを知るには、起源のお話が参考になります。

●民主化の波を創り出したフォルケホイスコーレ

フォルケホイスコーレの起源は1844年。
デンマークの成熟した民主主義の起源は1848年なのです。

デンマークでは、17世紀後半から絶対王政による支配が続いていました。人口の85%を占めていた農民階級は抑圧され、政治参与も認められていませんでした。1834年に農民の政治参与が初めて認められ、農民階級の自由と平等を求める農民革命が起こり、民主化運動がデンマーク全土で繰り広げられることとなります。そして、1848年、首都コペンハーゲンに集まった1万5千人の市民が王宮に向けてデモ行進を行い、他のヨーロッパ諸国で暴動や襲撃が起こる中、デンマークの絶対王政は平和的に終わりを告げました。こうして、デンマークでは農民階級の台頭による下からの民主化が成し遂げられました。

社会が変わる時代の節目に、大きな役割を果たしたのがフォルケホイスコーレだったんですね。民主化する流れの中で、これまで教育を受けてこなかった農民に、「民主主義とは何か」「合議制で決めるとはどういうことか」を伝え、育てる役割がありました。

その立役者になったのが、グルントヴィです。

●グルントヴィとは

ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ(Nikolaj Frederik Severin Grundtvig)は、デンマークにおける成人教育において重要な役割を担った人です。北欧神話の学者であり、また神学者でもあり、詩人、そして教育思想家でした。彼は、フォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)という16歳半また17歳半以上の人々が学習する、学習機関を構想していきました。その背景には、前述した絶対王政からの脱却、健全な民主主義で統治する世の中になるよう、人々を教育する必要性があったんですね。

●グルントヴィの思想

私が読んだ本の中から、グルントヴィの思想を読み解くと
「生きた言葉」
「人生の啓蒙」
「国民啓蒙」
「信頼関係のある対話」
「知性の重視」
こんな言葉が出てきます。


グルントヴィは、

・「人間が実際に話す言葉」や「生活に根差した言葉」を大切にした。
・人生の真理は人生や生活そのものからし学ぶ事ができないとしていた。
・暮らす文化を大切にしていた。
・信頼をベースとした対話が視野を広げた社会を創造すると考えた。
・出身地域や階級も様々な人々が出会い共に生活をし、自国の歴史、国の現状を学ぶ。

寄宿舎制で・・とか、今の日本では少し縁遠い文化もありますが、

生きた言葉で「生きる」を考え、国民として社会とのかかわりを学び、
文化を大事に、そして自分自身もまた文化を創造する地域人となり、
信頼をベースとした対話と知性から未来を創造していく。

●いま、VUCAの時代をむかえている日本

これまでも、日本に住んでいる人たちの価値観は徐々に変わってきていました。VUCAの時代に入り、様々なものが急速に変わっている。そんな中で、子どもたちには不登校の問題が多発し、充実感を感じられない社会人が多くなっています。社会システムがあきらかに合わなくなってしまったように感じています。これから、何かが変わってくるであろう、時代の変化の兆しを感じている中で、フォルケホイスコーレが誕生した時期のデンマークのように、対話を通じた生きた言葉で、自分と向き合い表現する。そして未来に向けて動いていくことができる学び舎が欲しい。そう思うようになっていきました。北欧の教育を取り入れた、フォルケホイスコーレのような学び舎を、宮城に作ろう。そう思うようになっていきました。

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