調判定できるようになりたい!【第2回・長調、短調の判別】
☆前回の記事、たくさんの方に読んでいただけたようでとても嬉しいです!
しばらく毎週月曜に記事を投稿しようと思います。
一緒に楽典に詳しくなりましょう!
前回の記事では、調号をみて長短調一つずつ答えるところまで解説しました。
今回は、長調なのか、短調なのかを判別するところまでいきたいと思います!特に短調について、短音階の復習を取り上げています。
(以下、音程、音階の知識がある程度有る方向けに書いています。調名はドイツ語で表記しています。)
さぁ、
その前にちょっと復習。
調号を見て調名を答えられるようになったので、逆からもやってみましょう。調名をみて、調号をつける練習です。
mollの時は、まず短3度上の平行長調を出すのを忘れずに!!
♪♪やってみよう♪♪
次の調の調号を指定された譜表に書きなさい。(五線紙用意してね!)
①e moll(高音部譜表に)※高音部記号=ト音記号です。なので、ト音記号の譜表。
②Es dur(高音部譜表に)
③b moll(低音部譜表に)※ヘ音記号の譜表。
④H dur(低音部譜表に)
(答えは記事の最後)
【長調か?短調か?】
「この曲は何調ですか?」
と聞かれた時に、皆さんはどこを見て答えますか?
(シューマン ユーゲントアルバムより「あわれな孤児」;全音楽譜出版社)
まず、調号がついていないので、C durか a mollのどちらかですね。
では、長調なのか短調なのかを判別する方法をみていきましょう。
1.曲の最後の音を見る
(※注1)
この曲の最後の音を見ると、
ラとドの音で終わっています。
ほとんどの曲が、曲の最後は主和音で終わるため、この曲はラドミ(Am)が主和音のa mollということがわかります。
「ラとドだけでミはないじゃん!」と言われそうですが、選択肢がC durとa mollならば、ドミソで終わるか、ラドミで終わるか、のどちらかと考えますので、ラドだけだったら、ミが省略されたんだな、と考えるのが普通です。(第5音はよく省略されることがあります。)
このように、和音は完全形ではなく、省略されて出てくることがたーーくさんありますので、
アナリーゼする際は常に想像力を働かせていることが大事です!!(一番大事なことかも!)
さて、話を戻して、
この方法は簡単で早く判別できますが、曲によっては、主和音で終わらないものがあったり、
(※注2)
またパート譜などで一音しかなくて、となれば最後の音が主音だとも限りません。
そこで、次は別の面からも見てみます!
※注1
長い曲や、形式のある大規模な曲(例えばソナタや交響曲など)でタイトルに◯調と書いてあるようなものは、曲の最後の調とは限りません。第1楽章の調や、第1主題の調をその曲を代表する調として提示する場合が多いです。詳しくは違う機会に解説!
※注2
最後が主和音で終わらない曲の例
(シューマン 子どもの情景より 第12曲「眠る子供」)
最終段の調号は♯が一つでG durかe mollかな、と予想しますが、最後の和音はラドミ(Am)です。さすがシューマン、不思議ですね。
他に、ショパンのバラード2番もF durで始まりますが、最後は違う。(楽譜持ってる方、ぜひ確認を!何調で終わりますか?)
その他、短調で最後の和音だけ長三和音で終わるピカルディ終止というのもよくあります。
2.いつも臨時記号がついている音はあるか?
先ほどの曲(「あわれな孤児」)の臨時記号を見てみましょう。
ソにたくさん♯がついているのがわかりますか?
このように、ある特定の音がいつも半音上げられていたら、この音が短調の導音であることを疑いましょう!!
このような毎回半音上げられている音がなければ、長調の可能性が大です。
ところで、「導音」とは何でしょうか…?
ここで導音について少し復習しておきます。
まず短音階を3種類あげてみましょう。
・自然短音階
・和声短音階
・旋律短音階
それぞれの違い、言えますか?
早速a mollの音階で見てみましょう。
◎自然短音階
調号そのまま、変化する音のない短音階です。
a mollだと調号もありませんから、全て幹音でできています。
この音階をピアノで楽器で弾いてみたり、歌ってみたりしてみましょう。
第7音から主音にいくところ(ソ~ラ)が長2度。なんだか寂しいような、懐かしいような、独特な雰囲気がしませんか?
これは、エオリア旋法という教会旋法が残ったもので、バロック期以前から使われていましたが、バロック後期になると、いくつかの理由から、第7音を半音上げて導音にする必要が出てきました。
そこで誕生したのが、以下の2種の音階です。
◎和声短音階
第7音のソの音を半音あげて導音にしています。
「導音」というのは、主音に導く音の意で、主音から短2度下の音であることが条件です。よく7番目の音のことだと思っている人がいますが、自然短音階の第7音は導音とは言いません。導音がないから主音に必ず行かなくてはいけないエネルギーが薄く、どことなく浮遊しているような調性感の薄い雰囲気が漂っていたのですね。
バロック後期~古典ころ、和声学が確立されるようになると、導音があることが都合が良くなったため(この話題はいつか詳しく)
和声短音階が誕生しました。
ただ、半音高めたために第6音と導音の間が増2度離れてしまい、歌いにくい欠点がでてきました。(歌ってみましょう!いかがでしょうか?)
そこで欠点カバーのためにできたのが、次の旋律短音階です。
◎旋律短音階
第7音を半音上げるのと一緒に第6音も半音上げて、増音程を回避した短音階です。旋律が滑らかになり、少しは歌いやすくなりましたか?
上行するときは導音として半音高められた第7音でしたが、下行する時は主音にいく必要がないので、変化させず。よって第6音も下行の場合は変化しません。
先ほどの「あわれな孤児」の楽譜をもう一度見てみましょう。
a moll、♯ソが導音だとすれば、第6音も変化しているところがあるはず。見つかりましたか?
現在、短調の曲は旋律短音階ないし和声短音階を用いて書かれます。
よって、第7音が半音上がっているか(その前の音が第6音であれば、第6音も半音上がっている可能性が高い)調べることによって短調を判断する手がかりになるのです。
3.まとめ
以上のことから、曲の調を判断する時に見る・考えるポイントをまとめてみます。
①調号を見て、長短調それぞれの調の可能性を把握する。
②曲の最後の音を見る。①でわかった調のどちらかの主和音になっていたら、その調!(のはずだと仮定する)
③短調だろうと思う時は、導音を見つけてみる。第7音が半音上がっているところがたくさんあるか見る。
シンプルですが、この最後の「臨時記号を疑い深くチェックしていく」、というのが、転調したときの調判定の時に役立ってきますから、慣れてみましょう。
次回は、曲中で転調した時の調判定です!
♪♪やってみよう♪♪
ブルクミュラー 25の練習曲 全曲の調を判定してみましょう。
曲の途中は転調しているため、導音はみつかりにくいかもしれません。曲の最初と最後の部分で見るのがよいです。
最後の部分、D.C.で最初に戻る曲がいくつかありますから注意!
(答えは記事の最後。)
質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。
♪♪やってみよう♪♪の解答
・調名→調号を書いてみよう
・ブルクミュラー 25の練習曲 調判定
1番 C dur
2番 a moll
3番 G dur
4番 C dur
5番 F dur
6番 C dur
7番 G dur
8番 F dur
9番 C dur
10番 D dur
11番 C dur
12番 a moll
13番 C dur
14番 G dur
15番 c moll
16番 g moll
17番 F dur
18番 e moll
19番 A dur
20番 d moll
21番 G dur
22番 As dur
23番 Es dur
24番 G dur
25番 C dur
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