調判定できるようになりたい!【第13回・借用和音⑤】

借用和音の最終回です!短調で見られる、ドリア、ピカルディ、ナポリを解説して、おおよそ借用和音は網羅できたのでまとめに入ります。
やっとここまできました!!

ドリアのⅣ度


短調のⅣ度の和音(短三和音)の第3音が半音上がり、長三和音になった形。表記は +Ⅳ。

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長音階や短音階が使われるようになる前の、教会旋法を使っていた時代の名残で、ドリア旋法(今の自然短音階の第6音が半音↑の音階)に由来します。

旋法から来ていますが、新しい音楽でも時々見られます。

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(Giordano:Andrea Chenier ;Ricordi)

オペラ《アンドレア・シェニエ》のジェラールのアリアですが、
マーキングしたところがドリア(A-Cis-E-G、で7の和音になってますね)

この和音のおかげで、短調だけども明るくも暗くもないような…不思議な印象かもしれません。
ドの♯を取って、ただのⅣにしたらどう感じるでしょうか?


ピカルディのⅢ度

短調の主和音(Ⅰ度)の第3音が半音上がり、長三和音になった形。
表記は、+Ⅰ。

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「ピカルディ終止」という言葉で覚えている人もいると思います。その名の通り、終止の時に使います。(最後の和音が長三和音だからといって、長調と判断しないように!)

短調の曲が、最後だけピカッと光りが差すような効果があります。(しかしピカッとするからそういう名前が付いたわけではありませんよ)

バロック時代くらいまでよく使われましたが、今ではあまり見かけません。

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(J.S. Bach: Matthaus passion; Peters)


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(J.S. Bach: Sinfonia no.13; Henle)




ナポリ


短調のⅡ度(減三和音)の根音が半音下がり長三和音になった形。
表記は、-Ⅱ or Ⅱに打消し斜線(下写真参照)

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18世紀頃にナポリ周辺で活躍した、イタリアのナポリ楽派と呼ばれる作曲家が好んで用いたことからこの名前が付いた、とされています。

そこで、ナポリ楽派の作曲家も含まれている「イタリア古典歌曲集」(全音楽譜出版社)の1巻の短調の曲を見てみました。
ナポリの和音、使われていますね!

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(A. Scarlatti: Sento nel core; 全音楽譜出版社)


ナポリは比較的使いやすく(使われやすく)、聴音や視唱課題にも多く登場するほか、和声でもわりと早い段階で勉強します。

というのも、ドッペルドミナントと同様、この和音もⅡ度の和音と同じ「第2ドミナント」として使えるからです!
(借用和音②「ドッペルドミナント」の記事参照)


お馴染みのハノンの音階のカデンツ↓
(◯で囲んだ部分です)

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Ⅱ₇の部分をドッペル〜やナポリに置き換えてみましょう。

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どのカデンツが好みですか??


♪♪やってみよう♪♪


ショパンのワルツNo.5より
赤で印をつけたところから、
①何調ですか?
②ナポリの和音が付く箇所が2か所あります。どこですか?
③ナポリの和音のところの臨時記号を取って演奏したらどんな印象を持ちますか?

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質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。


♪♪やってみよう♪♪ 解答
①a moll
②1段目4小節目、2段目6小節目(シに♭がついている小節)

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