和音に強くなる!⑥ 【九の和音】
和音に強くなる!の記事の最終回です。
これまで、三和音と七の和音を取り上げてきました。これだけでもおおよそ和声構造がわかりますが、最後にもう一歩進んで「九の和音」まで見てみましょう。
九の和音(五和音)
今までと同じように3度ずつ音を積み重ね、第9音まで重なっている和音を九の和音と言います。
5つ音が重なるので、五和音と呼ばれることもあります。
もちろん、この調子で十一の和音(11th)とか十三の和音(13th)とかもありますが、古いクラシック音楽ではあまり使いません。
属九(Ⅴ₉)の和音、減七
クラシック、特に古典期以降に良く見られる九の和音は、属音上にある「属九の和音」(Ⅴ₉)がほとんどです。
これは、ⅤやⅤ₇と同じようにドミナントとして使うことが出来ます。
(ドミナントについては、和音の機能の記事に解説があります→ https://note.com/rie_matsui/n/n6e883c6df9ac
属和音がⅤやⅤ₇の時は、長短調共通した音になっていましたが、
属九になると長調、短調と違う構成音になり、(第9音が半音違う)
印象もだいぶ違います。
特に、短調のⅤ₉は、この独特な翳りが何とも魅力的!
特に古典の音楽で「ここぞ!」と言うときに効果的に使われます。
根音を省略して使われる場合も多く、
そうなると上4つの音で減七の和音になります。
(根音省略の場合は、ローマ数字の右上から左下へ斜線を引きます。上写真参照。「こんしょう」と略して呼んだりします)
この減七の暗く、衝撃的な音の響きを効果的に使っている例を見てみましょう。私の減七イチオシの作曲家はモーツァルトです!
例1 すみれ
野原に咲く一本のスミレが主役の歌。
スミレはやってきた少女に恋をして、この方に摘み取られたい…と願うが、
なんとこの少女はスミレに気づかず踏んづけてしまいます!!
最後はそれでもスミレは幸せだった、と終わりますが…
なんとショッキングな歌!
(Mozart: Das Veilchen; Peters)
スミレが少女に恋をして、悩んでいるところ。
今までの長調から突然短調になり、Ⅴ₉の和音がスミレの苦悩をよく表しています。
ここ、踏まれたところ。
衝撃的過ぎます( ゚Д゚)
例2 ルイーズが不実な恋人の手紙を焼いたとき
これはすごいタイトルです(^^;
前奏に増6の和音があることでよく取り上げられる曲ですが、これはまたいつか解説するとして、、
(Mozart: Als Luise die Brife ihres ungetreuen Liebhabers verbrannte; Peters)
”不実な恋人の手紙を焼く”曲なので、最初から怒り狂っています。
「滅び去れ geht zu Grunde」のところ、Ⅴ₉が使われていますが、
やはりこれがⅤ₉でなくてⅤ₇だったら(G-H-D-F)ここまで迫力はないかなぁと思います。
モーツァルトのピアノソナタも見てみましょう。
例3 ピアノソナタ KV545 第二楽章
この2楽章は4部分からなっており、G:→ D:→ g:→ G:
第3部分の短調の部分がそれまでと比べて劇的です。それまでは穏やかで、メロディーは滑らか、和音もⅤ₇までしか出てきませんが、第3部分にはメロディーの動きも大きく跳躍するところが出てきて、和音も初めてⅤ₉が出てきます。
(Mozart: Klaviersonate KV545; Henle)
このようになっていることに気づくと、ここが曲のヤマかな、とか第3部分のこの部分は他と違うように表現してみよう、というアイディアが湧いてくるかもしれません。
何かこういうショッキングな和音が出てきたら、もしかしたら属九、また根音省略で減七の和音になっているかもしれません。
探してみてくださいね。
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#音楽理論
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