【質問にお答えします】短調のⅢって増三和音じゃないの?

久しぶりの記事です!

日々のレッスンの中で、またお問い合わせをいただく際などにちょくちょく質問を受けるのですが、それらの回答をきちんと言語化しておきたいなと急に思い立ち、(アイディアが降ってきて笑)こちらnoteで【質問にお答えします】コーナーを作ることにしました〜

しばらくネタが尽きるか、面倒くさくなるまで書いてみようと思うので、この際、楽典・音楽理論、ソルフェージュ関連の質問がありましたらドシドシお寄せくださいませ。


今日はちょっと専門的な話になりますが、
最近のレッスンの時に出た質問から。


短調のⅢ度って…

レッスンでコード弾き歌いをしている生徒さん、
まず歌う前にコードを弾きながら、和音度数も言ってもらっているのですが、
ある箇所になって「あれ、これは何ですか?」と。

(「コード・ネーム付新曲視唱」音楽之友社;p.45)


「Ⅲじゃダメですよね?短調のⅢ度は増三和音って習ったけど、これは長三和音になってるし。」

(「楽典 理論と実習」音楽之友社;p.145)


たーしーかーにー

よく皆さんが使っている黄色い楽典の本(「楽典 理論と実習」音楽之友社)では
音階上の和音を作る所で、
短調の場合は「和声短音階を用いる」となっているので、音階の第7音が含まれるはそれぞれ音階第7音(ⅶ)を半音上げて導音にしていました。(上写真参照)
そのためⅢは増三和音で表記されていたのですが、

例えば「総合和声」(音楽之友社)の和音の音度の表記を見てみると、導音(ⅶ↑)にはなっておらずⅢは長三和音になっています。


(「総合和声」音楽之友社;p.18)



結論から言うと、
短調のⅢは長三和音なのも
ⅶを半音上げて増三和音なのも
どっちも有りなのですが、

長三和音と増三和音とそれぞれどんな時に使うのだろう、というのをこれをキッカケに考えてみました。


短調で長三和音のⅢが出てくる時

そもそも、なのですが
和声を勉強する時、
特に課題を実施する時、
最初の頃に「ⅢもⅦも使いません」と教わることが多いと思います
例えばBassに第ⅲ音があったら、それはⅢではなくⅠの第1転回形にする。
(C durでバスがミの音だったら、それはミソシではなく、ドミソの1転に設定する)

そんなこともあり、曲を分析していて急にⅢが出てくると間違ってるんじゃないかと不安になる方がよくいらっしゃいますが、そんな存在感の薄いⅢもたまには登場します。


Ⅲが出てくるのはどういう時か。
私は次の2つのパターンが一番多いかな、と感じています。

①Ⅲ度調に転調している
②反復進行


実際に見てみましょう

①Ⅲ度調に転調している場合


特によく見かけるのは、Ⅲの前にⅢ度調のⅤがあってⅢ度調のD-Tが出来ているパターン。


(「総合和声」音楽之友社;p.314)


短調のⅢ度調は、平行長調になるので転調もしやすい!


②反復進行の場合

(「総合和声」音楽之友社;p.302)

反復進行の時は、T、D、Sの和音機能は無くなり、ただ和音が整然と同じパターンで繰り返されます。なので、これもⅶを半音上げて導音にする必要もなく長三和音で使います。



短調で増三和音のⅢが出てくる時

和声短音階で考えた場合、
すなわちⅶを半音上げて導音にする時に、Ⅲが増三和音になります。

導音にする…ということは、
次には主音が来ますから、Ⅲをドミナントとして扱う場合、とも言えます。

そういえば、楽典の本にも「Ⅲは使われ方によってドミナントになる」と書いてありましたね。


(「楽典 理論と実習」音楽之友社;p.147)


短調でそんな風に使われる時ってあるのかなぁと思い浮かべてみましたが、私は今現在思いつきませんでした^^;
もし見つけたらご報告します…

↑と書いていたのですが
とうとう見つけました!!(2023.11.8追記)

シューベルトのピアノソナタ第21番 D.960の第1楽章です。こんな名曲に隠れていました!
ここは導音を含んで増三和音となったⅢの他、長三和音のⅢも出てきて、短、長、増と揺れ動いています。

ちょっと見つけて興奮してしまいました笑

他に、noteを読んで下さった方からの情報で、
これまたシューベルトの合唱曲にも増三和音のⅢが使われているらしいです
そちらは少し前に追記しました。↓下にありますのでお読みください。

……

以下、また最初に書いた記事に戻ります。
時系列めちゃくちゃになってしまいすみません

……


(「総合和声」音楽之友社;p.456)


総合和声には、ⅶ↑のⅢからⅠの連結の見本が載っていました。
こちらの本では短調固有のⅢと区別するために、Ⅲの左上に第5音上方変位の印(上写真参照)を付けてありました。

増三和音というのは、クラシック音楽ではほとんど経過和音などの偶然和音として出てくるので、
分析の時に和声記号を書くほどのことでもなく、自分は今までそんなに気にも止めたことないのが現実です(´∀`)


ただ!
そんな中でもⅢが増三和音として役に立つのは、
音大入試の問題で、

(「東京音楽大学入学試験問題集」平成20年度一般入学者選抜試験問題より)


↑このような問題が出てきた場合は、
いつも和声短音階で考えなさい、となっているため、増三和音が出てきたら短調のⅢしかないため、答えが一発で出る!

ということくらいでしょうか…


※追記!(2023/5/8)
先日、こちらの記事を読んでくださった方から、短調の増三和音の実曲例が載っているページを教えていただきました↓
ひよこのるる様、情報ありがとうございます!


シューベルトの“Der Altas”という曲の冒頭の譜例の所に増三和音のⅢが出てきます。
この曲は知りませんでしたが、この前奏の不気味なコード進行がなんとも魅力的でこの先もどんな曲なのか知りたくなってしまいました。増三和音のⅢ、いい効果出てますね!


まとめ

今回、私は生徒さんから突っ込まれて初めてⅢ度について真面目に考えることとなりました。

確かに楽典の本には、
Ⅲは使われ方によってTにもDにもなり得るみたいなことが書いてあり(「楽典 理論と実習」音楽之友社;p.147)
どんな時にそうなるのか、もっと深く考えるべきだったなぁと反省したのでした。

(ちなみに、Tの時は、Ⅰ度7の根音省略なんだと考える)


あと、Ⅲは使いません、っていうのも無闇に言ってはいけないなぁと笑
そういうのも、何故そうなのか、本質をわかって、きちんと説明できて(こうやって言語化して)その上で教えないと。と私自身の戒めにもなりました。

質問してくださった生徒さんには感謝です^ ^


次記事はいつになるかわかりませんが、
「リズムが苦手」に関する記事を書いてみようかなと思っています。リズム関係の質問もとても多いです。


質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?