調判定できるようになりたい!【第15回・入試問題対策】

今までの記事でまとめた知識を使って、音高・音大、また音楽系大学の入試問題にあるような調判定に挑戦してみましょう。
また、そういう問題への対策についても書いてみたいと思います。


♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

第7回の記事の冒頭で、調判定の得意な人と苦手な人について少し触れましたが、
もう一つ言うと、入試の調判定の問題が解けない、という人は、普段から調判定をしていないことも多く見受けられます。

「普段から~」というのは、
自分が演奏している楽譜、
興味のある楽譜など。

そういう身近にある曲の調性、また転調の様子を興味を持って知ろうとしていない人が多いように感じます。

とにかく周りの楽譜は全て練習問題になります!ので
どんどん調判定の練習に使うのをお勧めします。
(具体的には後ほど。)


調判定だけでなく、和声分析などアナリーゼ全般におけることですが、
「普段と違う」「これはどうやって分析するんだろう?」と突っかかったところが、魅力的で楽しいところなのです。(趣味悪いでしょうか)
ぜひ知識を使って、新しい発見をしていってくださいね。


入試問題のタイプを知る


入試問題で出る調判定は、学校によりタイプが違いますが、
大きく分けると以下の2種。

①曲中の転調を問われる問題。
②単旋律(または大譜表)の数小節の問題。調号がなく臨時記号で書かれている。


過去問から例を少しあげます
解答は記事の最後に載せておきますので、ぜひチャレンジ!

☆①のタイプ

例1)調号と、途中から付く臨時記号で転調を判断します。
自分で転調箇所を見つけなければいけない問題です。
わからない人は第14回の記事見てくださいね

画像1

(日本大学芸術学部 2013年度入試問題より ; 『音楽大学 短大・高校入試問題集 p.350』;音楽之友社)

例2)□のA~Eの部分の調を答えなさい、の問題。
調判定してほしい箇所があらかじめわかっているタイプ。
判定は、例1)と同じやり方でできます。

画像2

(桐朋学園大学2013年度入試問題より;同上資料)

この問題は、できる人は調判定だけでなく、ぜひ和声分析や非和声音分析にも挑戦してみてください。
短調の曲ですが最後に長三和音で終わっています。
何の和音でしょうかね
(第13回の記事に出てきます)


☆②のタイプ

どちらかというと、こういう旋律タイプの問題の方が難しく感じる人が多いと思います。

例3)

画像3

(東京学芸大学 2013年度入試問題より;同上資料)

まず、aの問題
ぱっと見た感じ、♭も♯も両方あるので、♭調で♯が導音の調を疑いますが、
どうでしょうか。
ファは5回出てきて、うち4回♯が付きます。
仮に♯ファを導音とするg mollと仮定して他の臨時記号がどうなっているのか見ていきましょう。

【ポイント】
・臨時記号がついた音は、その曲で何回出てきて、他では臨時記号がついてるのか、漏れなく全て確認する。
・半音で動いているところは、経過音か刺繍音で飾りとしてついた非和声音なので、臨時記号は無視する。
・ある特定の短調かも、と思ったら、第6音と第7音がどうなっているか確認する。上行で並んでいるときに半音上がっていないだろうか?(旋律短音階の上行形の変化音を見つける)

とにかく、これまでも何度か書きましたが、調判定の場合は一度答えが出たら、本当にその調だという証拠を集めるためにもう一度見直し、証明していく作業をしましょう。
問題を作る側からすると、これが決め手となって○調です、と説明できない問題は作りません。それを見抜いて欲しいのです。


次、bの問題

先ほどと同じように♭も♯も混在していますが、♯の付いているファもドも半音で動いて刺繍音、経過音だし、他に出てきたときには♯が付いていないので、一時的についた臨時記号でしょう。
♭の付いているシ、ミも、楽譜中のシとミをつぶさに確認してみてくださいね。


例4)調号なし問題、大譜表の場合もあります。
例3と同じやり方でできます。

画像4

(昭和音楽大学 2013年度入試問題より;同上資料)

この②のタイプの問題では、「曲の途中で切れている」ということを忘れずに。普段の曲のように、最後の音や和音は主音、主和音であるとは限りません。
4小節で切ってある課題が多いため、最後の小節は半終止だったり、
もしくはその直前にドミナントがきたりすることも多いです。
これも、わかってくると問題作成者の意図が見えてきて面白いです(やっぱり趣味悪いかしら)


調判定する力を鍛えるには

記事冒頭に書いたように、(今回だけでなくいつも言ってますが)
普段から身の回りにある曲は何調なんだろうと考えているだけで立派な練習、訓練になっていくので、まずそういう意識に変えること。

先ほどの①のような曲中の転調問題を解く対策としては、
私の一押しは、
コンコーネの分析です!50番でも25番でもいいです!

自分のブログにも以前どんなにオススメか書きました
こちら→https://ameblo.jp/musicarie/entry-12600133794.html

初心者でもわかりやすく転調が判定でき、
近親調だけでなく、もう少し遠い調までいくこともあり(古典ソナチネとかでやっているとどうしても近親調どまり、ありきたりな転調しかないので)
その後の和声分析、非和声音分析、形式にアナリーゼまで全てバランス良く使えます!
当然声楽テクニックの教本、そして視唱の本としても使える!
その他、弾き歌いや移調奏の練習にも!
一石五鳥くらいのお得さ!


②のような「受験らしい」問題は、
受験用の教本にはたくさん問題がついているので、それをやればいいのですが、
他に補助的にやるものとしてオススメは、
『調判定を中心とした楽典問題集 音大受験生のために』
(遠藤雅夫 著;全音楽譜出版社)
という教本がありますが、使いやすいです。

また、受験生であれば、
同じく受験科目の「聴音」でやった旋律課題が、実は調判定にも効果的!
聴音でとった旋律課題は、もう答えが「○調」と出ているので、
「○調」に本当になっているのか、もう一回確かめをするのです。

これは本当に効果的です!
だって、聴音も、調や和音が説明できないような旋律は作りませんから!


どんなものでも分析をする癖を!
一旦癖づけば、受験の問題も朝飯前になりますよ^^


質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。


解答 (ドイツ語で表記にします)
例1)(1)h moll → e moll → D dur   (2)B dur → Es dur
例2)g moll, c moll, As dur, b moll, Es dur
例3)a) g moll  b)Es dur
例4)f moll


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?