調判定できるようになりたい!【第7回・非和声音②】

「非和声音」の2回目です。
前回解説しなかった残りの非和声音の中から「倚音」と「掛留音」について取り上げたいと思います。(やっぱり3回に分けることにしました…残り3つの非和声音は次回に。)

♪♪♪♪♪

非和声音を考えるときには、まずはどんな和音が付いているのか必ず読み取らなければいけません。
個人的に、このプロセスを踏んで(しかもたくさん経験して)、和音に対して敏感になることが後の調判定、アナリーゼをする際に役立っていくと考えています。

少し話が脱線しますが、
今まで、調判定の苦手な人の多くが、和音を考えることも苦手だ、というのを目の当たりにしてきました。

調判定が得意な人は、だいたい頭の中で音が鳴り、さらには旋律を見れば感覚的に和音まで鳴る人です。そういう人は、楽譜から、この音に臨時記号がついているから、とか、こういう場合だから固有音だとか、そんな難しいことは考えず、譜面を見れば頭の中の音再生によりわかる。

でも、そうでない人が調判定をできるようになりたい!となれば、(ざっくりと、でなくちゃんと細かい部分まで)
結局和声の知識を蓄えていくことにたどり着くしかないのです。

和音の機能や進行ももちろん知っているとスムーズですが、そうでなくても理解しやすく、知っていると演奏にも活きてくること間違いなしの「非和声音」の勉強、もうしばらく頑張りましょう!

前置き長くなりましたm(__)mm(__)m

 

【倚音】appoggiatura

ある和声音の2度上or下の音に現れる。その後、後続の和声音に解決する。※1

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倚音(イオン、と読みます。)も、よく見かける非和声音の一つです。
基本は強拍に現れ、和音とぶつかったその音は旋律をとても表情豊かなものにしてくれます

倚音に少し重みを出し、その後の解決音で収める、というのを無意識にやりたくなりませんか?
前回の記事で取り上げた経過音や刺繍音のように弱拍に現れるものとは違い、かなり存在感のある音です。

倚音はイタリア語でappoggiatura(アッポッジャトゥーラ)と言います。
あれ、どこかで聞いたことあるかも!と思う人もいるかもしれません。
そう、「前打音」のこともappoggiaturaと言います。(特に長前打音を指します)※2

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(Mozart: klaviersonate kv 331 ~トルコ行進曲;Henle)

前打音は、非和声音としての倚音のように必ずしも後続音の2度上or下にあるわけではありませんが、「寄りかかる音」という意味では共通しています。

それから、こういうタイプのappoggiaturaを思い浮かべた人もいるかもしれません。

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(Mozart: Le Nozze di Figaro ; Bärenreiter vocal score p.454)

声楽の曲、例えばmozartのオペラのレチタティーヴォなどでフレーズの最後が同音で2つ続いた場合、最後から2番目の音を2度上(場合によってはも2度下も)に変えて歌うのを経験したことはありませんか?
これも「倚音」です。歌唱時のアクセントを表すために慣習的にこのように倚音にして歌います。この場合からも、倚音というのはそこにストレスがかかり、強調される働きがあることがわかります。

倚音が出てきたら、目立つチャンス!です。表情をつけて演奏しましょう。


※1 和声学上の不安定、また緊張した状況から安定、弛緩することを解決すると言う。
例えば、ドミナント→トニック、導音→主音、非和声音→和声音、不協和音→協和音など
上の※の場合だと、倚音→和声音に吸収されたところのこと

※2 長前打音は、斜線のない小音符で書かれる前打音。小音符の音を拍頭にして演奏する。
短前打音は、斜線のついた小音符で書かれる前打音で、拍より前に出して演奏する。これをイタリア語でacciaccaturaアッチャッカトゥーラと言い、appoggiaturaと区別されることもある。


【掛留音】suspension

ある和声音が、次の違う和音になっても引き延ばされて非和声音になったもの。その後、2度上or下の後続の和声音に解決する。

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掛留音は、案外簡単に見つけることができます!
まず、①基本的にタイがつくこと。
②そのタイがなければ倚音になること!

がポイントです。

倚音のように突然現れるのではないのと、ピアノのように音が減衰していく楽器だとそこまで印象が強くない音かもしれませんが、掛留されてぶつかった音を最後までよーく聴くのが大事だと思います。今、こうやって書いている私も、タイの後の掛留音、ちゃんと聴けてないかも、と反省しています。

見つけたら、楽譜通りに奏するのと、タイを取って倚音として奏するのとどんな違いがあるかぜひ実際に演奏して確かめてみましょう。


今日はここまで!続きはまた来週~

♪♪やってみよう♪♪

次の譜例の非和声音はどこにありますか?

譜例1)
ヒント・倚音も刺繍音も経過音もあります。

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譜例2)
掛留音多し!

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非和声音分析ですが、
参考までに解答例として私の分析を下に載せておきます。

倚音→イ
掛留音→ケ
経過音→カ
刺繍音→シ
(まだ出てきていませんが、逸音→ツ)

「もしくは」と書いてあるところは、どちらの非和声音かによって、演奏も変わってきそう。分析は必ずこれが正解というものがないので、センスに委ねられるところもあります。

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質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。

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